浮体式洋上風力発電と日本とデンマークの技術協力

2023年11月12日

再生可能エネルギーの普及が世界的な課題となる中、海に浮かべた風車で発電する浮体式洋上風力発電が注目されています。この技術は、深い海域でも設置できるため、風況が良く発電効率が高いというメリットがあります。また、景観や騒音などの環境問題も少なく、気候変動対策にも貢献できます。

しかし、浮体式洋上風力発電にはまだ多くの課題があります。設置や保守のコストが高いことや、浮体を制御する高度な技術が必要なことなどです。そこで、日本政府とデンマーク政府は、この技術のコスト低減や大量生産化を図り、世界市場での標準化を目指すために、技術協力の枠組みを立ち上げることで合意しました。

日本とデンマークは、浮体式洋上風力発電において互いに補完的な技術を持っています。デンマークは洋上風力発電の先進国であり、高性能な風車や運営ノウハウを持っています。日本は浮体式に欠かせない造船技術を持っています。両国の技術の組み合わせで競争力を高めることができます。

本記事では、浮体式洋上風力発電の現状と課題、日本とデンマークの技術協力の内容と展望、市場規模や成長見通し、投資するメリットやリスクなどについて解説します。

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日本の浮体式洋上風力発電の現状と課題

日本では四方を海に囲まれており、浮体式洋上風力発電に適した海域が豊富です。政府は2030年に1000万キロワット、40年までに3000万〜4500万キロワットの導入を目指しています。これは原子力発電所約30基分に相当します。

日本ではすでにいくつかの先行事例があります。2013年から福島県沖で実証実験が行われており、2020年には2基の風車が商業運転を開始しました。また、北海道苫小牧市沖では2022年から3基の風車が稼働する予定です。

政府も浮体式洋上風力発電の普及を支援しています。2021年4月からは固定価格買取制度（FIT）で20年間の優遇価格（36円/キロワット時）が適用されるようになりました。また、2022年度からは特別措置法に基づく海域利用計画の策定が始まります。これにより、海域の使用権や環境影響評価などの手続きが簡素化されます。

しかし、浮体式洋上風力発電にはまだ多くの課題があります。最大の課題はコストです。浮体式洋上風力発電の発電コストは約30円/キロワット時と推定されています。これは陸上風力発電（約10円/キロワット時）や太陽光発電（約13円/キロワット時）と比べて高いです。コストを下げるためには、風車の大型化や浮体の標準化、設置や保守の効率化などの技術開発が必要です。

また、浮体式洋上風力発電には技術的な課題もあります。浮体を安定させるためには、海流や波浪、風力などの複雑な力学を考慮する必要があります。また、浮体と風車との接続部分や係留システムなどの強度や耐久性も重要です。さらに、海水や塩分などの腐食や生物付着などの影響も考慮しなければなりません。

デンマークの洋上風力発電の実績とノウハウ

デンマークは洋上風力発電の先進国であり、世界最大の洋上風力発電所を持っています。デンマークは1991年に世界初の洋上風力発電所を建設しました。その後も積極的に洋上風力発電を拡大しており、2020年末時点で導入量は18.8ギガワットに達しています。これは全発電量の約10%を占めています。

デンマークでは、風車メーカーや運営企業などの主要プレーヤーが多数存在しています。特に、ベスタスやシーメンス・ガメサなどの風車メーカーは世界的なシェアを持っています。また、オルステッドやコペンハーゲン・インフラストラクチャー・パートナーズなどの運営企業も多くのプロジェクトを手掛けています。

デンマークでは、洋上風力発電が経済的な効果ももたらしています。2020年には、洋上風力発電関連の輸出額が約1.5兆円に達しました。また、洋上風力発電関連の雇用者数も約3.3万人に上りました。さらに、洋上風力発電はCO2排出量の削減にも貢献しており、デンマーク政府は2050年までに温室効果ガス排出量を70%削減する目標を掲げています。

日本とデンマークの技術協力の内容と展望

日本政府とデンマーク政府は、2023年10月24日に浮体式洋上風力発電に関する技術協力の枠組みの立ち上げで合意しました。この枠組みは、両国の産学官が共同で調査や研究開発を行うことで、浮体式洋上風力発電のコスト低減や大量生産化を図り、世界市場での標準化を目指すことを目的としています。

具体的な取り組みとしては、以下のようなものが予定されています。

浮体式洋上風力発電の設計や評価に関する共通基準やガイドラインの策定
浮体式洋上風力発電の設置や保守に関するベストプラクティスやツールの開発
浮体式洋上風力発電の安全性や信頼性に関するデータベースやシミュレーターの構築
浮体式洋上風力発電の環境影響や社会受容性に関する調査や啓発活動

日本からは、大手電力会社（東京電力、中部電力、九州電力など）や造船会社（三菱重工、日立造船、IHIなど）、大学（東京大学、東北大学、北海道大学など）などが参加予定です。デンマークからは、風車メーカー（ベスタス、シーメンス・ガメサなど）、運営企業（オルステッド、コペンハーゲン・インフラストラクチャー・パートナーズなど）、研究機関（デンマーク技術大学、デンマーク風力エネルギー協会など）などが参加予定です。

この技術協力は、日本とデンマークにとって有益なものとなるでしょう。日本は浮体式洋上風力発電に適した海域が多くありますが、コストや技術的な課題があります。デンマークは洋上風力発電において高い実績とノウハウを持っていますが、遠浅の海域が減少しています。両国が互いに補完的な技術を持ち寄ることで、浮体式洋上風力発電の普及を促進することができます。

また、この技術協力は、世界的なエネルギー転換にも寄与するものとなるでしょう。浮体式洋上風力発電は再生可能エネルギーの中でも高いポテンシャルを持っています。しかし、まだ普及率が低く、標準化や規模化が進んでいません。日本とデンマークが先導的な役割を果たすことで、他の国々にも浮体式洋上風力発電の導入を促すことができます。これにより、気候変動対策や持続可能な社会の実現に貢献することができます。

浮体式洋上風力発電の市場規模や成長見通し

浮体式洋上風力発電は、まだ新しい技術であり、市場規模や成長見通しには不確実性があります。しかし、いくつかの調査や予測によると、浮体式洋上風力発電は今後急速に拡大する可能性が高いと言われています。

例えば、国際エネルギー機関（IEA）は、2020年の浮体式洋上風力発電の導入量は1.7万キロワットだったが、2030年には1090万キロワットに急拡大すると予測しています。これは約64倍の増加です。また、2050年には1.3ギガワットに達すると見込んでいます。これは全世界の洋上風力発電の約10%を占めることになります。

欧米では遠浅の海域が減少しており、浮体式洋上風力発電の技術開発を急いでいます。英国は30年までに5ギガワット、米国は35年までに15ギガワットの導入目標を示しています。また、フランスやノルウェーなどでも実証プロジェクトが進められています。

アジアでは日本だけでなく、韓国や台湾などでも浮体式洋上風力発電に関心が高まっています。韓国は30年までに12ギガワット、台湾は25年までに5.5ギガワットの導入目標を掲げています。また、中国やインドなどでも浮体式洋上風力発電の可能性を探っています。

浮体式洋上風力発電に投資するメリットやリスク

浮体式洋上風力発電に投資するメリットやリスクは何でしょうか？ここでは、個人投資家や企業投資家の観点から考えてみます。

メリットとしては、再生可能エネルギーの需要が高まる中で、高い発電効率や環境負荷の低さを持つ浮体式洋上風力発電が成長市場となる可能性があることです。特に、日本やデンマークなどの先進国が技術協力を行うことで、コスト低減や標準化が進み、世界市場での競争力が高まることが期待されます。また、気候変動対策や持続可能な社会への貢献度も高いことです。

リスクとしては、技術的な課題やコストの高さ、自然災害や政策変更などの不確実性があることです。浮体式洋上風力発電はまだ新しい技術であり、安定した運用や収益性を確保するためにはさらなる技術開発やコスト削減が必要です。また、台風や地震などの自然災害による損傷や停止の可能性もあります。さらに、政府のエネルギー政策や規制の変更によっても影響を受ける可能性があります。

注意点としては、浮体式洋上風力発電に関する情報やデータがまだ少なく、投資判断には十分な分析や検証が必要であることです。また、浮体式洋上風力発電に関連する企業やプロジェクトは多岐にわたります。例えば、風車メーカー、造船会社、運営企業、電力会社、金融機関などです。これらの企業やプロジェクトの特徴や将来性を理解することも重要です。

おわりに浮体式洋上風力発電

本記事では、浮体式洋上風力発電と日本とデンマークの技術協力に関する記事を作成しました。浮体式洋上風力発電は再生可能エネルギーの中でも高いポテンシャルを持つ技術であり、日本とデンマークは互いに補完的な技術を持っています。両国が技術協力を行うことで、浮体式洋上風力発電の普及を促進し、世界的なエネルギー転換に寄与することができます。

しかし、浮体式洋上風力発電にはまだ多くの課題や不確実性があります。コスト低減や技術開発はもちろんのこと、環境影響や社会受容性なども考慮しなければなりません。また、投資する際には情報収集や分析が不可欠です。

浮体式洋上風力発電はまだ新しい技術ですが、その可能性は無限大です。日本とデンマークの技術協力は、その可能性を実現するための一歩となるでしょう。浮体式洋上風力発電に関心のある方は、ぜひこの記事を参考にしてください。