中東情勢と世界経済への影響 イランとイスラエルはどうなるの?

中東地域の緊張状態が極限に達しています。昨日、イスラエルがイランに報復攻撃を行いました。これらは、軍事力を持つ大国として知られており、この状況がさらに拡大する可能性があると一部で懸念されています。第5次中東戦争のような事態が現実になる恐れも増してきています。

このような軍事的な衝突は、世界経済にも大きな影響を及ぼす可能性があります。たとえば、石油価格が急激に上昇することが考えられます。中東は石油の大きな供給源であり、戦争が起こると、その生産や輸送が困難になるためです。石油価格が上がると、日本を含む多くの国でガソリンや電気代が上がり、物価が全般的に高くなる可能性があります。

また、安全への懸念から、世界の投資家が金融市場でリスクを避けるようになり、株価が下がることも予想されます。これにより、企業の利益が減少し、経済成長が鈍化するかもしれません。

今後、どのような対策が考えられるのか、どんな影響が予想されるのかを詳しく見ていきたいと思います。政治的な解決策や国際社会の介入がどのように影響を与えるか、また、経済への具体的な影響を数値を交えて解説していきます。

目次

そもそもなんでイランとイスラエルは対立するのか

イランとイスラエルの関係は、1950年代から1960年代にかけては比較的近かった時期があります。当時のイランは親米派の国王が治めており、アメリカを支持基盤とするイスラエルと国交を結んでいました。

しかし、1979年にイラン革命が起こり、事態は一変しました。この革命により、パーレビ王制が倒れ、イスラム教シーア派の宗教指導体制が確立されました。革命の指導者である故ホメイニ師は、イスラエルを「聖地エルサレムを奪った敵」と定義し、イランはイスラエルを国家として認めない姿勢を明確にしました。これが、イランとイスラエルの対立が決定的になった瞬間です。

イランは現在も、国政の基本方針として反イスラエル政策を掲げています。イスラエル政府を「シオニスト政権」と非難し、その存在を認めていません。ここでいう「シオニスト」とは、19世紀に始まったイスラエル建国運動の支持者たちを指します。

一方、イスラエルやアメリカは、イランを重大な脅威と見なしています。特に2002年に発覚したイランの秘密の核施設建設計画は、世界中に衝撃を与えました。この事件から、イランが核武器を開発しているのではないかという疑念が強まりました。

「イラン核合意」とは、イランの核関連活動を制限する国際枠組みですが、トランプ前米政権の離脱により、この合意は機能不全に陥っています。イスラエルは、イランが開発する核兵器が自国を攻撃する目的であると警戒しています。一方、イラン政府は核開発は平和利用のためだと主張しています。

イスラエルによるイランへの攻撃とその影響

2023年4月19日、日本時間の午前にイスラエルからイランのイスファハン市に攻撃が行われました。このニュースは、アメリカの当局者がイスラエルの攻撃を確認し、アメリカのメディアが報じたことで広く知られるようになりました。

イスファハンは、イランの首都テヘランの南に位置する町で、かつて王朝の中心地として栄えました。また、「イスファハンは世界の半分」と称されるほどの美しい町として知られています。イスファハンは、多くのイスラム教の熱心な信者がいる宗教都市であり、軍事施設や核関連施設が存在することで知られています。

今回の攻撃が行われたのは、イスファハン州にあるイランの空軍基地とされています。しかし、具体的な場所や詳細については、まだ明らかにされていない状況です。

今のところ、人的被害に関する具体的な情報は出ていません。イランの一部報道によると、無人機を撃墜したとの情報もありますが、どこからの攻撃だったのかなどの詳細は明らかにされていません。

イスラエルとイランの緊張が高まる

2023年の10月からイスラエルは戦争状態にあり、その間に多くのニュースが報じられました。どのニュースが重要か判断するのは難しいですが、今回のイランへの攻撃は非常に危険な状況を示しています。

イランは、イスラエルからの攻撃が行われることを事前に予測していました。イランは、イスラエルが攻撃を行うと見て、あらゆるレベルで対策を立てていたようです。

イランの反応は、強いものでした。イランの外務大臣アブドラヒアも言及していますが、イスラエルが武力を使ってイランの主権を侵害した場合、イランは断固として対応し、イスラエルを後悔させると明言しています。これは、イランが今回の攻撃に対して反撃を行う可能性があるという意味です。

イランとイスラエルの関係は非常に悪く、過去にイランのアハマリネジャド大統領がイスラエルを「地図上から消す」と発言したほどです。このたびの攻撃は、イスラエルからイランへの直接的な攻撃としては史上初とされ、先週末のイランからの攻撃に対する報復という形で行われました。

この攻撃がイランからの再報復を引き起こす可能性があり、それにより両国間の戦争ムードがさらに高まることが予想されます。この大国同士の対決が全面戦争に発展するリスクがあります。

イスラエルとイランの核問題とその地政学的リスク

イスラエルは事実上の核保有国とされており、その核兵器の保有は国際社会で広く認識されています。一方、イランについては長年にわたって核兵器を開発しているのではないかという疑念が持たれています。現在、イランはウラン濃縮を進めており、核兵器の開発にほぼ到達していると考えられています。これにより、イランも事実上の核兵器保有国と見なされつつあります。

このような状況下で、核武装する一歩手前の国と既に核を保有している国が対峙しています。この両国間での緊張が今後さらにエスカレートすると、全面的な対決に発展するリスクが高まります。

両国間の対立がエスカレートすることにより、中東全体に影響が及ぶことが懸念されています。この地域での紛争は、容易に他の国々に飛び火する可能性があり、第5次中東戦争の発生が現実的な懸念として浮上してきています。

イスラエルとイランの緊張が高まる背景と現状

イスラエルとイランの間では長年にわたり緊張状態が続いていますが、特に2023年10月からの状況が注目されています。

この時、パレスチナ自治区ガザ地区に拠点を持つイスラム武装勢力ハマスがイスラエルに攻撃を行いました。イランはハマスを長年支援しており、資金や武器の提供をしていることから、ハマスの攻撃が事実上イランの支援下で行われていると見なされています。

2023年10月以降、イスラエル軍はハマスをガザ地区で追い詰めるための作戦を展開しています。その影響で戦争状態が続いており、イランが支援する他の組織もハマスに同調してイスラエルに対する攻撃を強化しています。例えば、イエメンからはイスラエル方向にミサイルが発射されたり、シリアやイラクにあるアメリカ軍基地が攻撃されるなど、中東全体での緊張が高まっています。

この緊張は、2023年4月1日に新たな局面を迎えました。イスラエル軍がシリアにあるイランの大使館領事部を空爆し、多数の死者を出しました。この中にはイラン革命防衛隊の高官も含まれていたため、イランにとっては重大な打撃となりました。この出来事を受け、イランは報復として4月14日にイスラエルに対して300発のドローンとミサイルを発射しました。

イスラエルからの最新の攻撃は、この一連の報復の一環として行われました。このような攻撃と報復の連鎖は、中東地域全体の安定を脅かしており、今後どのような展開になるかが非常に重要です。特にイランが次にどのような行動を取るかが、今後の緊張の行方を大きく左右することになります。

イスラエルによる攻撃とイランの対応

最近、イスラエルからの攻撃を受けたにも関わらず、イランの国内メディアの報道は非常に抑制的です。日本と異なり、イランのほとんどのメディアは国営であり、特にテレビは政府の強い影響を受けています。

例えば、ファルス通信は、敵のドローンが防空システムによって撃墜されたと報じています。このように、イランは攻撃が大したことがなかったというメッセージを発信しようとしており、それが「小鳥を三羽打ち落とした」と表現されることもあります。

In this photo released on Wednesday, Jan. 6, 2021 by the Iranian army, an unmanned aircraft is launched during a military exercise in an undisclosed location in Iran. On Tuesday, the Iranian military began a wide-ranging, two-day aerial drill in the country’s north, state media reported, featuring combat and surveillance unmanned aircraft, as well as naval drones dispatched from vessels in Iran’s southern waters. (Iranian Army via AP)

このような報道からは、イランが「攻撃はあったが、それを撃退し、被害はなかった」と主張していることが読み取れます。それにより、「イスラエルへの報復は必要ない」というメッセージも含んでいると解釈できます。イランの報道がこのように抑制的なのは、無用なエスカレーションを避けるための戦略的選択かもしれません。

最近、イスラエルからの攻撃がありましたが、イランからの300発のドローン攻撃に対して、イスラエルの反撃は比較的抑制されていました。この攻撃でイスファハンに近い核施設近くでの爆発が報じられましたが、国際原子力機関(IAEA)の声明によると、核施設自体は無事だったとされています。このため、イスラエルの攻撃はあくまで抑制的であり、大規模な被害は避けられたようです。

こうした一連の出来事から、イスラエルとイランが現状の緊張を維持しつつも、それ以上のエスカレーションを避ける可能性があります。これが最善のシナリオとして考えられ、双方が一旦「手打ち」にすることで、事態の悪化を防ぐ道を選ぶかもしれません。

イスラエルの戦略と国際的な立場

イスラエルがなぜ抑制的な攻撃を行ったのか、その理由を理解することが重要です。

イスラエルのネタニヤフ首相は、ガザ地区でのハマスからの攻撃を受け、戦事内閣を組織しました。これにより国民の関心も一気にガザ地区へと集中しました。ガザ地区は元々約210万人の人口がいた場所ですが、そのうち150万人が現在、最南端に位置するラファ地区に押し込められています。

このラファ地区への進軍が国際的に注目されており、ネタニヤフ首相はハマスを完全に解体することを目指しています。しかし、150万人が密集するラファ地区を攻撃することは、多くの民間人の犠牲を招くため、アメリカやヨーロッパの一部国々からはこの進行を止めるよう強く求められています。

最近、イスラエルは国際的な孤立が進んでおり、特にアメリカとの関係に隙間風が感じられます。この状況の中で、イランへの攻撃はイスラエルがアメリカの支援を再び得るための戦略だったと見られています。しかし、4月14日にイランからイスラエルへの300発の攻撃に対して、アメリカの反応は冷たく、バイデン政権はイスラエルの報復行動を支持しないと明言しました。

これによりネタニヤフ首相の計画は狂い、イスラエルは大規模な報復を避ける選択をしました。イランもこの限定的な攻撃を受けて、「これで一旦終わりにしよう」というメッセージを受け取ったと考えられています。専門家の中には、このような状況下でイスラエルとイランがガザ地区への関心を戻す可能性を指摘しています。

イスラエルとイランの緊張がさらに高まる可能性

現在の中東情勢において、イスラエルとイランの間でどのような展開が起こるかは、まだはっきりとは言えない状況です。いくつかの異なるシナリオが考えられますが、それぞれが中東地域全体に大きな影響を与える可能性があります。

可能なシナリオ
  1. 第1波の攻撃とその意味
    • 現在のイスラエルの攻撃は、「第1波」と見なされており、これは主にイランの防空システムの効果をテストする目的で行われた可能性があります。この後に更なる本格的な攻撃が予想されることもあり得ます。
  2. 核施設への攻撃戦略
    • イスラエルがイランの核施設を本気で破壊しようと考えている場合、ミサイル攻撃だけでなく、サイバー攻撃を組み合わせるような手法が採用されるかもしれません。このような攻撃が実行されれば、イランは強硬な報復を行う可能性が高まります。
  3. メッセージの誤解
    • 仮にイスラエルがこれ以上の攻撃を行わない意向で、今回の攻撃を「手打ちにするためのメッセージ」としてイランに送ったとしても、イランがそれを異なる方法で受け取るリスクがあります。イランの政治内部には様々な意見が存在し、特に革命防衛隊の一部はより攻撃的な姿勢を示す可能性があります。この場合、状況は急速に悪化し、本格的な戦争に発展するリスクがあります。

中東情勢の緊迫化と市場への影響

中東の緊張が高まる中で、通常見られる「リスクオフ(投資リスク回避)」の動きが強まりました。一般的にリスクオフの状況ではドルと円が買われやすいです。

しかし、今回のケースでは異なります。アメリカの金融政策や経済の基本的な条件が変わらずに維持されている中、原油価格の高騰によるインフレ懸念から、アメリカの利下げ予想がさらに先延ばしになるとの見方が強まっています。このため、日米間の金利差が広がり、円の買いが進みにくい状況が続いています。

日本経済への影響

原油の供給に関する懸念と、それに伴う原油価格の上昇は、日本経済にとって大きな問題です。高い輸入インフレが続けば、日本の物価は上昇し続ける可能性があります。これにより、賃金が物価上昇に追いつかず、日本銀行の金融政策の方向性が見えにくくなるでしょう。インフレは高まっていますが、日本銀行は利上げに踏み切るのが難しい状況にあります。

為替市場の動向

ドル高/円安の傾向は今後も変わらないと見られます。特に、円が大きく高くならなかったことを考えると、ドルは155円を目指しているようです。日本政府や日本銀行による為替介入への警戒感は高まっていますが、市場のボラティリティ(価格変動の激しさ)はそれほど高くありません。このため、実際に円を買い支える介入が行われるのは難しいでしょう。もし介入が実施されたとしても、それがドル高トレンドを変えることは難しいと考えられます。

ドル円の動き

中東情勢の緊迫化を受けて、ドルと円の間での取引は高値圏でのもみ合いが続くと予想されます。先週末の報道後、円が一時的に強まったものの、その後はリスク回避の流れによりドルが再び153円台に戻りました。リスク回避の状況が続くと、通常はドルや円、スイスフランなどが選好されますが、原油価格の上昇とそれに伴う輸入インフレや貿易赤字の増加の懸念から、円は売られやすい状況になります。

投機筋の動向

投機筋による円売りポジションは増加しています。株価の急落などリスク回避の流れが強まると、円買いが進む可能性があります。一方で、中東情勢が一旦落ち着いた場合、ドルは153円後半での上値の重さが意識されるようになるかもしれません。

債券市場への影響

中東情勢の緊迫化による債券市場への影響は一様ではありません。リスクオフムードが強まると、国債への資金流入が見込まれますが、株安が進むと年金勢による債券売り・株式買いのリバランスも意識されます。ロシア・ウクライナ危機のように、資源価格の高騰が消費者物価に上昇圧力をもたらす可能性があります。

原油価格の影響

原油価格がさらに上昇する場合、米国のインフレが長期化することにより、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ傾向が弱まる可能性があります。市場は神経質になりがちですが、債券が売られ過ぎることはないでしょう。

地政学的リスクと市場の反応

イランが抑制的な姿勢を保つかどうかが鍵となります。イランがエスカレートさせずに限定的な報復を行う場合、市場では一時的な安堵のため息が聞かれるかもしれません。しかし、地政学的リスクは明らかに増しており、今後数週間から数カ月は市場のボラティリティが高まる可能性があります。

まとめ 中東情勢と世界経済

中東情勢の緊迫化は、ドルや円、債券市場に大きな影響を及ぼしています。投資家は、今後の政治的動向に注意を払いながら慎重に市場を見極める必要があります。

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この記事を書いた人

株式会社シュタインズ
「テクノロジー×教育の研究開発」を事業の基盤に、現在は金融教育サービス事業「Moneychat(http://moneychat.life/)」の企画と開発を進める。

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