ビジネスやマーケティングの世界でよく聞く「LTV(Lifetime Value)」という言葉を聞いたことがありますか?
このLTVとは、顧客があなたのビジネスとの関係全体でどれだけの価値をもたらすかを計測する指標です。特に、既存顧客との関係性を計る上で重要視されています。
LTVを理解することは、効果的なマーケティング戦略を立てる上で重要です。この記事では、LTVの基本的な概念を初心者向けに解説します。
LTV(顧客生産価値)とは?
LTV、またはLifetime Valueは、文字通り「顧客生涯価値」とも呼ばれます。
これは、顧客があなたのビジネスと長期間にわたって行う取引によってもたらす総収益を示す指標です。単なる単発の購入だけでなく、その顧客が長期間にわたってどれだけの回数購入し、どれだけの金額を支出するかも考慮されます。
もっといえば、「ある顧客が自社の利用を開始してから終了するまでの期間に、自社がその顧客からどれだけの利益を得ることができるのかを表します。例えば、ある顧客との取引が1回で終わってしまう場合よりも、2回目以降も取引が継続した場合の方がLTVは高くなります。
LTVは顧客がもたらすであろう利益が数値として表れるため、企業活動やマーケティング活動において特に大切な指標です。
LTVの計算方法
LTVは以下のように計算されます:
LTV = 平均購入金額 × 購入回数 × 顧客の平均寿命
- 平均購入金額(Average Purchase Value): 1回の取引あたりの平均支出金額です。
- 購入回数(Purchase Frequency): 顧客が特定の期間内に平均的に何回購入するかを示します。
- 顧客の平均寿命(Customer Lifespan): 顧客があなたのビジネスと関わり続ける平均期間です。
例えば、平均顧客単価40万、収益率50%、購買頻度0.5回/月(=6回/年)、継続期間5年の場合、LTV は、40万円×50%×6回×5年=600万円となります。
LTV(Lifetime Value)への注目理由
なぜLTVが注目されているのでしょうか?その背後にある理由について詳しく見ていきましょう。
新規顧客獲得のハードルが高まった
日本の総人口は、総務省統計局のデータによれば、平成20年のピークである12,808万人から、平成23年以降は減少し続け、令和3年には12,550万人となっています。多くの市場ではシェアの争いが激しくなり、新規顧客を獲得するためのハードルはますます高まっています。
新たな顧客を獲得するためには、多額のコストと時間がかかるため、その努力から十分な利益を得るのが難しいケースもあります。逆に言えば、既存顧客との良好な関係構築が成功すれば、継続的な購買や友人への紹介による新規顧客の増加が期待できます。
One to Oneマーケティングが主流となった
顧客はインターネットの普及によって入手可能な情報が増加し、個々の嗜好が多様化しました。これに伴い、企業は顧客データの収集や分析を通じて、個々の顧客に適した商品を提供する方法を模索しました。これが「One to Oneマーケティング」であり、顧客の好みに合わせた提案を行うことが求められるようになりました。これまでのマーケティングは広範な顧客に向けたものでしたが、近年では顧客一人ひとりの要望に対応するマーケティングが主流です。
One to Oneマーケティングでは、顧客のロイヤルティを高め、継続的な取引を促進するためにLTVが重要な指標として浮上しています。
サブスクリプションサービスの流行
最近では、一定の定額料金を支払うことで、特定の期間にわたって製品やサービスを利用できるサブスクリプションサービスが大流行しています。このモデルは顧客に継続的な利益をもたらすため、企業にとっても魅力的なビジネスアプローチとなっています。サブスクリプションサービスを提供する企業が増える中、顧客に長期間にわたってサービスを提供し続けるためには、LTV向上の考え方が重要です。
これにより、LTVの重要性が企業の中で高まり、長期的な顧客関係を築くための施策がますます注目を集めています。
LTVを改善する方法
LTVを向上させるために考慮すべきポイントは以下のとおりです。
- 顧客満足度: 良い商品やサービス、優れたカスタマーサポートを提供して顧客満足度を高めましょう。
- リピート購入の促進: リピート購入を奨励するプログラムや特典を提供して、顧客の継続的な関与を促します。
- 顧客対応: 顧客の声に耳を傾け、改善の余地がある点を進んで修正することで、顧客ロイヤルティを高めます。
平均顧客単価は、売上を顧客数で割ったもので計算されますが、これを要素分解することで理解を深めることができます。平均購入品数(商品数を顧客数で割ったもの)と平均商品単価(商品の売上を商品数で割ったもの)を用いて、「平均顧客単価=平均購入品数×平均商品単価」と表現できます。
顧客単価を向上させるための方法として、以下の戦略があります。
1. クロスセル
クロスセルとは、関連する製品やサービスを一緒に提案することで、顧客の購買意欲を高める手法です。ECサイトのレコメンド機能のように、顧客の立場を考えて関連商品を提案することが鍵です。
2. アップセル
アップセルは、顧客が購買を検討している商品に対して、より高額な商品やサービスを提案する方法です。上位モデルの商品の魅力を強調し、顧客に納得感をもたせることが、顧客単価向上への道です。
3. 商品価格の戦略
商品の値上げについては、価格が顧客の購買決定に与える影響を検討する必要があります。顧客が価格以外の要因に価値を見出す場合、大幅な値上げは顧客離れのリスクを伴う可能性があります。値上げを検討する場合は、顧客に納得感のある値上げを行うための戦略を考えましょう。
購買頻度の増加
購買頻度を増やすためには、顧客の行動データを活用し、ニーズを把握しましょう。定期的なメールを送信して、新たな商品を提案することが効果的です。メールには、自社商品の特長とメリットを明確に伝えることが重要です。
継続期間の延長
顧客のロイヤルティを高め、長期間にわたって購買してもらうために、以下の戦略を検討しましょう。
- 既存顧客への特典提供
- 他社では入手できない独自の商品やブランドイメージの構築
- ロイヤルな顧客から新規顧客の獲得へのインフルエンス
収益率の向上とコスト削減
購入単価、頻度、期間を改善しても、収益率が低下したり、コストが増加することは避けなければなりません。製造業の一部企業では、銭単位で設備や運営コストを管理し、大幅な節約を実現しています。また、MA(マーケティングオートメーション)やCRM(顧客関係管理)の導入により、顧客獲得・維持のコストを効果的に抑えることが可能です。
これらの戦略を組み合わせ、平均顧客単価の向上を図り、企業の成長に貢献しましょう。
まとめ LTV
顧客生涯価値(LTV)最大化は、企業の持続的な成功に向けた重要な要素です。
顧客を長期間にわたり魅了し続けるためには、クロスセルやアップセル戦略を通じて単価を引き上げ、購買頻度を増やすことが重要です。また、顧客との深い関係を築き、継続的な信頼を育むことでLTVを最大限に活用できます。顧客ロイヤリティを高める特典やブランドイメージの構築、MAやCRMを活用したコスト効率の向上など、戦略的なアプローチが求められます。結果として、高いLTVは新規顧客獲得への投資回収を促進し、長期的な競争優位を築く力となります。