うんこで理解するHMB!【GPU】HBM(High Bandwidth Memory)とは何か?

最近のゲームや産業分野でGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の計算能力への需要が高まっています。このため、GPU内のプロセッサとメモリ間のデータ転送速度は重要な役割を果たしており、ここにはHBM(High Bandwidth Memory)やGDDR6(graphics double data rate type six synchronous dynamic random-access memory)といった先進的な設計技術が使われています。

GPUはCPUと異なり、最高速度の処理よりもコア数の多さを活かした設計がなされています。そのため、プロセッサとメモリ間の転送速度が速ければ速いほど良いのです。

「メモリ帯域幅」とは、メモリが1秒間にどれだけのデータを転送できるかを示します。このメモリ帯域幅を増やす方法は、大きく2つあります。一つは転送道(バス)の幅を広げること、もう一つは転送速度を上げることです。ただし、転送速度を上げると消費電力も増加するため、多くの場合はバスの幅を広げる設計が採用されます。その結果生まれたのがHBMやGDDR6です。

特にHBM(現行はHBM2)はハイエンドモデルで使用され、技術的な進歩が顕著です。一方、GDDR6はエントリーモデルに多く採用されています。今回は、特にHBMに焦点を当ててその役割と重要性について解説します。

目次

HBM(High Bandwidth Memory)とは?

HBM(High Bandwidth Memory)は、非常に高い帯域幅を持つDRAM(Dynamic Random Access Memory)です。帯域幅とは、メモリとプロセッサ間でデータ信号を交換する際のデータ転送速度のことで、これが大きいほどデータ処理速度が速くなります。

具体的には、この帯域幅は信号線1本の伝送速度とバス(データ転送路)の本数によって決まります。例えば、DDR3タイプのDRAMでは、伝送速度が1,600Mbpsでバス本数が32本の場合、帯域幅は6.4ギガバイト/秒になります。

HBMの第2世代は、伝送速度2Gbpsでバス本数が1024本にもなり、その結果、帯域幅は254ギガバイト/秒と非常に高い数値を実現しています。これは、TSV(Through-Silicon Vias)技術を使用した高密度配線と垂直方向のメモリ積層によるものです。この技術により、高密度な配線が可能となり、信号の伝播遅延が減少して高い動作周波数を実現します。

さらに、3次元構造を利用してメモリダイの下にロジック層を配置することで、メモリの操作制御とデータ転送の効率化が可能になります。HBMは単体で存在するわけではなく、ホストプロセッサと組み合わされたマルチチップパッケージ形式で製品化されます。

https://www.inrevium.com/pickup/hbm/

プロセッサとは

プロセッサはコンピュータの「頭脳」と考えることができます。人間で言うところの脳のようなものですね。プロセッサはコンピュータに命令を与え、それをどのように実行するかを決めます。たとえば、あなたが「この文章を印刷して」とコンピュータに命令したとき、プロセッサはその命令を受け取り、プリンターに文章を送るように指示を出します。プロセッサはとても速く働き、たくさんの命令を一瞬で処理できます。

メモリとは

メモリは、コンピュータが情報を一時的に保管する場所です。学校で習ったことや友達の名前を一時的に覚えておく人間の記憶力に似ています。コンピュータが作業をするとき、必要な情報をメモリに「覚えさせて」おきます。たとえば、あなたが文書を書いているとき、その文書の内容はメモリに保管されます。コンピュータが電源を切ると、メモリに保管されていた情報は消えてしまいます。だから、大切な情報はハードドライブなどに保存する必要があります。

HBM(High Bandwidth Memory)の役割

コンピュータがタスクを実行する際、プロセッサは必要なデータをメモリから取得します。このとき、HBMが重要な役割を果たします。HBMは、メモリからプロセッサへデータを送る道として機能し、この「道」の品質がデータ交換の速度を決定します。

通常のメモリは、プロセッサとは別のチップに搭載されており、データのやり取りには時間がかかります。しかし、HBMはプロセッサとメモリを物理的に近くに配置することで、データの転送距離を短縮し、速度を大幅に向上させています。具体的には、HBMはメモリチップを積層し、これらを短く直接的な接続(TSV、Through-Silicon Vias)で結ぶことで、高速なデータ交換を実現します。

この高速なデータ交換により、プロセッサは必要な情報を迅速に取得し、処理することができ、結果としてコンピュータ全体の性能が向上します。例えば、高度なグラフィックス処理や大量のデータを扱うAI計算など、高いデータ転送速度を要求されるタスクにおいて、HBMは非常に効果的です。

HBMを「うんこ」で理解しよう💩

想像してみてください、あなたは「うんこ処理工場」のマネージャーです。この工場では、うんこを処理して環境をきれいに保つ重要な仕事をしています。

  • プロセッサ
    これは、うんこ処理工場の「うんこ処理機」です。うんこをどのように処理するか、どの順番で処理するかを決定します。うんこ処理機が速ければ速いほど、より多くのうんこを早く処理できます。
  • メモリ
    これは「うんこ一時保管所」です。うんこ処理機がすぐに処理できないうんこを一時的に保管しておく場所です。保管所が大きければ大きいほど、もっと多くのうんこを一時的に保管できます。
  • HBM(High Bandwidth Memory)
    これは「超高速うんこ輸送ベルト」です。うんこ一時保管所からうんこ処理機へ、うんこをとても速く運ぶことができます。このベルトが速ければ速いほど、うんこ処理機は待たずに次々とうんこを処理できます。

このように、うんこ処理工場がスムーズに運営されるためには、うんこ処理機(プロセッサ)、うんこ一時保管所(メモリ)、超高速うんこ輸送ベルト(HBM)が重要な役割を果たしているんです。

HBMの進化:高性能メモリ技術の歴史とその発展

HBM(High Bandwidth Memory)の歴史は、メモリ技術の進化と共に、さまざまな挑戦と改良の連続でした。

まず、プロセッサとメモリを接続する際には、データがどれだけ早く伝わるか(伝わる速さ)と、どれだけ多くのデータを同時に送れるか(線の細さ)が重要な要素です。伝わる速さを上げる方法には、プロセッサとメモリを物理的に近く配置することや、信号が早く伝わる材料を使うことなどがあります。また、線が細いほど多くのピン(接続点)を設けることが可能です。

WideIO Memoryは、プロセッサの上にメモリを配置する設計で、多くのピン接続を実現しました。これにより、スマートフォンなどの狭い空間での高密度な接続が可能になりました。信号速度を下げることで消費電力も低減できるため、モバイル端末には理想的な技術ですが、発熱量が増加することがデメリットです。

HMC(Hybrid Memory Cube)は、メモリをプロセッサの上に重ねずに配置する設計で、プロセッサの放熱を考慮しました。ここではインタフェースチップがプロセッサとメモリの間に挟まれ、通信を助ける役割を果たしますが、発熱の問題がありました。

そしてHBMに至ります。HBMはHMCの設計を引き継ぎつつ、熱の問題を解決するために、プロセッサとメモリの間に伝導性の良いシリコンを用いました。シリコンの基盤は、熱の逃がしやすさと細かい配線を可能にし、これによりHBMは高性能ながらも発熱を抑えることができるようになりました。この技術的進化は、スーパーコンピュータやハイエンドPCなどでのHBMの利用を可能にしました。

HBMのデメリットと将来性

HBM(High Bandwidth Memory)の技術は多くのメリットを持ちますが、その唯一の大きなデメリットは「価格」です。HBMの製造には、シリコンインポーザと呼ばれる追加のシリコン基板が必要で、このためコストが上昇します。現在のところ、この高価格のためにHBMは主にハイエンドの用途や、小面積での設計が求められる特別な場合に限られて使用されています。

しかし、技術の進歩は常にコスト削減を目指しており、HBMの低価格化に向けた取り組みも継続されています。これにより、HBM技術が日常使用される一般的なPCにも搭載される可能性が高まっています。将来的には、HBMのコストが下がり、より多くのデバイスでその高速なデータ転送能力を活かすことができるかもしれません。

HBM技術のまとめ

HBM(High Bandwidth Memory)は、メモリ技術の重要な進歩を代表するもので、特に高速なデータ転送と効率的な設計が特徴です。この技術は、プロセッサとメモリ間の高速なデータ交換を可能にし、コンピュータの性能向上に大きく寄与しています。HBMは特にハイエンドのコンピュータやスーパーコンピュータでの使用に適しており、その高い帯域幅と低遅延は、高度なグラフィックス処理や大規模データ処理において重要な役割を果たしています。

しかし、HBMの主なデメリットは高価格です。この高コストは、シリコンインポーザという追加の基板の使用によるもので、現時点ではHBMの普及を限定しています。ただし、技術開発の進歩に伴い、HBMの低価格化が進められており、将来的にはより多くの一般的なPCやデバイスでの採用が期待されています。

HBM技術は、メモリとプロセッサ間の通信を革新し、コンピュータの性能を大きく向上させる潜在力を持っています。今後、そのコストの課題が解決されれば、HBMはさらに幅広い用途での活用が期待できるでしょう。

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この記事を書いた人

株式会社シュタインズ
「テクノロジー×教育の研究開発」を事業の基盤に、現在は金融教育サービス事業「Moneychat(http://moneychat.life/)」の企画と開発を進める。

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