【6857】半導体テスト装置の分野で世界ナンバーワン!アドバンテストを初心者にもわかりやすく解説!

今回は、生成AI(人工知能)に不可欠な技術を大きく寡占している企業、アドバンテストについて紹介します。寡占とは、市場において数少ない企業が大きな影響力を持つ状態を指します。アドバンテストは、この分野での技術力が非常に高く、他の多くの企業に影響を与えています。

アドバンテストの大きな特徴の一つは、圧倒的な技術力を持っていることです。特に、彼らが作る反動体テスト装置において、この技術力が光っています。反動体テスト装置とは、半導体などの電子部品の品質をテストするための機器です。

アドバンテストは、反動体テスト装置の分野で世界ナンバーワンの地位を獲得しています。これは、半導体産業や電子部品業界において非常に重要な役割を果たしており、アドバンテストの製品が広く使われている証拠です。

目次

日本企業の世界市場におけるシェア拡大とその強み

アドバンテストは、年々世界市場のシェアを拡大しています。2022年には、市場全体の約57%のシェアを獲得しました。

https://www.semiconductor-industry.com/advantest/

この数字は、その企業が世界市場でどれだけ強い影響力を持っているかを示しており、非常に印象的な成果です。

世界で戦える日本企業が少ない中、このような企業が存在することは、日本の誇りと言えるでしょう。彼らの成功は、日本経済にとっても重要な意味を持ち、多くの人々に影響を与えています。

この企業の強みは、特に技術面にあります。彼らが市場で成功している理由の一つは、先進的な技術と革新的なアプローチです。この記事を通じて、その強みや技術について詳しく知っていただきたいと思います。

アドバンテストの概要

アドバンテスト社の本社は、東京都千代田区丸の内に位置しています。この場所は東京駅のすぐ近くで、非常にアクセスしやすい場所にあります。

社名株式会社アドバンテスト
本社所在地〒100-0005 東京都千代田区丸の内1丁目6番2号
新丸の内センタービルディング
設立1954年(昭和29年) 12月
代表取締役 兼 執行役員社長吉田 芳明
資本金32,363百万円
上場証券取引所東京証券取引所プライム市場(証券コード:6857)
発行済株式総数766,141,256株(2023年10月1日現在)
従業員数(臨時従業員含む)7,117人(国内2,783人、海外4,334人)
(2023年3月31日現在)

アドバンテスト社は1954年に設立されました。つまり、2024年には設立から70年という長い歴史を持つ企業となります。この長い期間にわたって、アドバンテスト社は技術の進歩と共に成長してきました。

アドバンテスト社は、東京証券取引所のプライム市場に上場している企業です。資本金は約323億円あり、2023年3月期の売上高は約5,600億円です。また、従業員数は約7,000名と、多くの人々が働いている大企業です。

「アドバンテスト」という社名は、「Advanced Test Technology」(先進的なテスト技術)から作られた造語です。この名前は、同社の技術力と革新性を象徴しています。

この記事では、アドバンテスト社の基本情報、歴史、経済的背景、そして社名の由来について詳しく紹介しました。アドバンテスト社は、長い歴史と堅実な経済基盤を持つ企業であり、その名前は先進的な技術へのコミットメントを表しています。

アドバンテスト社のコア事業

アドバンテスト社は、反動体部品テストシステム事業部門をコア事業として展開しています。この事業部門は、会社の売上高の約80%を占める主力事業です。つまり、アドバンテスト社の大きな部分をこの事業が占めているということです。

反動体テスタとは、一言で言うと、半導体のチップなどの反動体をテストするためのシステムです。この機器は、半導体を作る企業に提供されています。反動体テスタは、半導体が完成するまでの工程で使用されます。

半導体の製造過程は、主に前工程と後工程に分かれており、その間に細かな工程が挟まれます。反動体テスターは、特に電気特性検査工程で使用されます。前工程では、上波特性検査部門で使われ、パッケージモールドという工程の後の最終検査工程で使用されます。つまり、半導体のチップや上波が完成する直前の検査に反動体テスターが用いられるのです。

半導体テスト工程とその重要性、そしてアドバンテストの役割

まず、半導体のテスト工程について簡単に説明しましょう。

テスト工程は、設計データを元に「テストプログラムリファレンス」を作成することから始まります。これは、期待される半導体の性能や出力波形などを事前に設定したものです。そして、半導体がこのリファレンス通りに動作するかどうかを確認して、良品か不良品かを判定するのがテスト工程の主な役割です。

https://www.semiconductor-industry.com/advantest/

現代の半導体は非常に微細な回路で作られ、高速で動作します。製造工程でのわずかな誤差でも、断線や動作電圧のばらつきなどの不具合が生じる可能性があります。特に、最先端のデバイスや生成AIの普及に伴い、これらを安定的に製造することは大きな技術的チャレンジです。そのため、メーカーは早い段階からの十分な試験を行い、品質向上に努めています。

半導体テストシステムは、こうした最先端デバイス、特に生成AIの開発において重要な役割を果たします。このシステムは、半導体の品質を保証し、安定した製造を支援するために不可欠です。

生成AIの社会実装には、「高機能メモリHBM(High Bandwidth Memory)」が必須です。HBMは、数千以上のコアを持つGPU(グラフィックス処理ユニット)に適した構成を持ち、膨大な演算処理を可能にします。HBMは3D積層メモリ技術を用いており、従来の2次元メモリよりも高い帯域幅と容量拡張性を実現しています。

アドバンテストは、このような高性能メモリやGPU、CPUなどの生成AI用デバイスのテストプラットフォームを全て保有しています。さらに、2.5Dや3Dなどの先端パッケージ用テスト技術も保有しているため、生成AIの製造において非常に重要な役割を担っています。

HBMについては別の記事で詳しく解説していますので、必ず読んでください。

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アドバンテストの強み

アドバンテスト社の大きな強みは、そのコア技術である電子計測技術にあります。この技術は、様々な分野に応用されており、企業に莫大な利益をもたらしています。電子計測技術とは、電子機器の性能や品質を正確に測定するための技術のことです。

https://www.semiconductor-industry.com/advantest/

この電子計測技術は、SoC(System on Chip)テスターやメモリテスタ、テストハンドラーなど、半導体のテストをするための機器に使用されています。これらの機器は、半導体製品の品質を保証するために不可欠です。

アドバンテスト社は、半導体テスタ市場で50%以上のシェアを獲得しています。これは、同社の技術と製品が市場において非常に重要な位置を占めていることを示しており、半導体市場の発展に大きく貢献しています。

アドバンテスト社の電子計測技術により、半導体市場の発展に対して大きな恩恵を与えることができます。同社の技術や製品が市場のニーズに応え、品質の向上や効率化に貢献しているのです。

半導体テスタ市場とその競合状況

アドバンテスト社は、半導体テスタ市場においてアメリカの会社「テラダイン」と競合しています。これら二つの企業が、世界の半導体テスタ市場を二分している状況にあります。つまり、この二社が市場の大部分を占めているということです。

半導体テスタ市場は、半導体の試験や検査装置市場の一部です。この市場は右肩上がり、つまり絶えず成長している状態にあります。しかし、全ての検査装置市場が半導体テスタ市場だというわけではありません。半導体の製造工程には多くの検査が所々に含まれており、これらの検査装置全体が市場規模を形成しています。

市場全体の検査装置の中で、反動体テストが占める割合は約40%とされています。2023年の市場規模を見ると、全体が約2兆5000億円であるため、半導体テスタ市場は約1兆円の規模になっています。

アドバンテストの業績(2024年3月期) 第3四半期決算

https://www.advantest.com/ja/investors/ir-library/result.html

売上高、営業利益ともに去年に比べて減益となっています。

https://www.advantest.com/ja/investors/pdf/J_BIZ_240131_slide.pdf

事業セグメント別を見ると徐々に回復傾向にあるようですが、そこまで芳ばしくない業績となっています。これは、半導体市場ま強くないことが要因とされています。

最近の世界経済は、コロナウイルスからの回復が進んでいますが、いくつかの問題もあります。特に、欧米での金融引き締め政策や中国の景気成長の鈍化が影響して、全体的には経済が減速しています。

この経済状況の影響を受けて、スマートフォンやパソコン、テレビなどの主要民生機器の需要が減少しました。さらに、データセンタの投資も減速し、半導体市場全体でも需要が落ち込んでいます。ただし、生成AI関連の半導体など、一部の分野では需要が増加しています。

多くの半導体メーカーは、在庫調整や設備投資の抑制を行い、市場は前年比で縮小しました。

デジタルトランスフォーメーションの加速を背景に、過去3年間にわたり顧客からの投資が活発でした。しかし、半導体市況の弱まりにより、設備の余剰が発生し、当社製品の需要が前年同期比で大きく落ち込みました。

結果として、売上高は3,507億円(前年同期比で15.0%減)となりました。営業利益は621億円(51.9%減)、税引前利益は596億円(55.2%減)、四半期利益は471億円(52.8%減)となりました。この減少は、売上の減少、利益率の低下、原材料費の上昇、為替差損などが原因です。当第3四半期の平均為替レートは、米ドルが1ドル=142円(前年同期は135円)、ユーロが1ユーロ=154円(前年同期は139円)でした。海外売上比率は96.1%(前年同期は96.6%)です。

半導体テスタ市場の現状

世界経済は、コロナウイルスの影響から回復し始めていますが、2024年(CY24)も不確実性が残っています。アメリカなどでの景気後退の懸念、地政学的リスクの拡大、急激な為替変動リスクなどが挙げられます。半導体市場では、半導体の在庫調整が徐々に改善し始めており、今後は生成AI(人工知能)関連への投資が活発化すると予想されています。

2023年(CY23)の半導体テスタ市場は、スマートフォンやPCなどの主要な民生機器向けの需要が停滞し、それに関連する半導体の設備投資の抑制が想定よりも長期化しています。2024年の市場の回復は年の後半になると見込まれています。

生成AI向けの需要の高まりと連動して、テスタの需要も増加する見通しです。SoC(System on Chip)テスタ市場では、HPC(High Performance Computing)/AI向けを中心に、2024年後半に需要の立ち上がりが期待されています。また、メモリテスタ市場では、高性能DRAM(Dynamic Random-Access Memory)向けの需要が急速に伸びると見込まれています。

アドバンテストの業績予想

現在の業績予想では、前年度と比較して減益になると見込まれています。これは、半導体テスタ市場の需要が全体的に弱まっていることを示しています。

高性能半導体向けのSoC(System on Chip)テスタでは、徐々に需要の回復が見られますが、車載や産業機器向けでは需要が弱まっています。そのため、本格的な市場の回復にはまだ時間がかかると予想されています。

一方、メモリテスタ市場においては、顧客からの投資が活発な高性能DRAM(Dynamic Random-Access Memory)向けを中心に、テスタの供給体制を増強することで増収が見込まれています。具体的には、10月の予想よりも50億円増の売上が予想されています。

まとめ アドバンテスト

アドバンテスト社は、高性能メモリ向けテスタの需要の増加に対応し、供給体制を強化しています。これにより、売上予想を100億円増額しています。つまり、市場での高性能メモリテスタの需要が増えることに伴い、同社の売上も増加する見込みです。

民生品向け半導体の在庫調整が長引いている影響で、昨年度の高水準だったSoCテスタの出荷による余剰キャパシティの消化にも影響を与えています。つまり、民生品向けの市場の需要減少が、半導体テスタの生産過剰につながっている状況です。

2024年(CY24)は、生成AI関連向け半導体の需要の高まりが、関連する設備投資を促進し、テスタ需要を年後半から引っ張る見込みです。このことは、生成AI技術の発展により半導体市場が活性化する可能性があることを意味しています。

アドバンテストは、生成AI技術の進展による半導体バリューチェーンの変化を捉え、新しいソリューションの提供を進めています。また、これによって顧客基盤の拡大を目指しています。

さらに、アドバンテストは収益性の改善を目指して、以下の施策を推進しています。

  • 需要変動に柔軟に対応できるサプライチェーン管理の高度化
  • 付加価値の高いソリューションの提供
  • 販売価格の見直しや原価低減活動の強化

この記事では、アドバンテスト社の現在の業績、市場の状況、および今後の展望について説明しました。同社は市場の需要変化に対応し、新たなソリューションの提供と収益性の向上に努めています。

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この記事を書いた人

株式会社シュタインズ
「テクノロジー×教育の研究開発」を事業の基盤に、現在は金融教育サービス事業「Moneychat(http://moneychat.life/)」の企画と開発を進める。

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