GDPがドイツに抜かれ日本は4位へ!その原因を初心者にもわかりやすく徹底分析!

最近のニュースで、日本のドル建て名目GDP(国内総生産)が2023年にドイツに抜かれて、世界4位になったという報道が話題になっています。ただ、この変化を見てドイツ経済がとても順調に進んでいると考えるのは間違いです。

実際、日本とドイツの順位が逆転したのは、単に為替の影響が大きいからです。ドル建てのGDPは、為替レートに大きく左右されるため、日本とドイツの逆転が大きなニュースになること自体、あまり重要ではないとも言えます。

GDPについては他の記事でわかりやすく解説していますので、必ず読んできてください。

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また、ドル建て名目GDPという指標自体、多くの日本人にとってはあまり馴染みがなく、日常生活に直接関係がないものです。そのため、この指標を使って国を比較すること自体がどれほど意味があるのか、疑問を投げかける声もあります。

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目次

岸田首相の経済政策と足りない最後の一押し

2023年2月15日、内閣府は10-12月期のGDP速報を発表しました。

結果は2四半期連続のマイナス成長で、年率換算で▲0.4%でした。

内訳を見ると、民間消費は▲0.9%、住宅投資は▲4.0%、設備投資は▲0.3%、政府消費は▲0.5%、公共投資は▲2.5%、輸出は11.0%、輸入は7.0%となっています。

公的部門のパフォーマンスが特に弱かったです。昨年の11月6日に「現代ビジネス」で指摘されたように、岸田政権は景気対策に本気でなかったようです。特に、昨年年末ではなく今年6月に延期した所得税減税が影響したと考えられます。

岸田政権はアベノミクスを継承しているものの、景気対策で最後の一押しが足りないという状況です。GDPギャップの実態と乖離した数字や景気対策の矮小化も問題です。

IMFの対日審査では、「所得税減税を含む11月の財政刺激パッケージは妥当ではなかった」との見解が出されました。これは財務省の意見を代弁したものと見られ、岸田首相が反発したとされていますが、タイミングの問題もあったと思われます。

この状況を踏まえ、今後の日本経済がどのように動くか注目されています。特に、政府の経済政策と景気対策の効果がどのように表れるかが重要なポイントとなるでしょう。

名目GDPの実態と日本経済

日本がドイツに抜かれて世界4位になった理由は、実はかなり単純です。多くの人が為替レートが関係していると考えがちですが、実際のところ、名目GDPを見ると、為替の影響はそれほど大きくないかもしれません。

1990年を基準にしてみると、日本の名目GDPはほぼ同じレベルで推移しています。しかし、アメリカ、カナダ、イギリスはその間に約3~4倍に増加しました。イギリス、イタリア、フランスも2.5倍程度に成長しています。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/73865f4d172b93fd15b4ca1447d71f0a139c5387

このように、日本だけが目立って成長が鈍化しているわけです。だから、ドイツに抜かれるのも当然と言えます。日本経済の成長の遅れが他国と比べて顕著であることが、この名目GDPの数字からもはっきりとわかります。

この事実を踏まえると、今後の日本経済の成長戦略や政策について、より深く考える必要があります。他国とのGDP比較から見えてくる日本の現状を理解し、経済の活性化に向けた適切な手段を模索することが重要と言えるでしょう。

名目GDPと実質GDP

名目GDPと実質GDPは、どちらも国内総生産(GDP)を測定する方法ですが、計算の仕方が異なります。

名目GDPは、市場価格に基づいてGDPを評価する方法で、物価変動の影響を反映しています。一方、実質GDPは、名目GDPから物価の変動を取り除いて計算されるため、物価の変動による影響が排除された状態で経済の成長を評価することができます。実質GDPは、経済の実際の成長を評価するためによく用いられ、経済成長率を確認する際には実質GDPが用いられます

名目GDPと実質GDPについてパンで例えると……

名目GDPと実質GDPについて、分かりやすく説明しましょう。例えば、パン屋さんの売り上げを考えてみます。1年目にパン1個200円で1万個売ったとき、その売り上げは200万円です。2年目にパンの価格が220円に上がり、1万2,000個売れたら、売り上げは264万円になります。

この例で、1年目の名目GDPと実質GDPはどちらも200万円です。しかし、2年目では名目GDPは264万円になりますが、実質GDPは物価上昇分を除いて計算するので、240万円(200円×1万2,000個)になります。名目GDPは物価変動を含む金額ベースの評価ですが、実質GDPは物価変動を除いた数量ベースの評価です。経済成長率を見るときは、物価変動の影響を除いた実質GDPを使います。

デフレの影響も大きい

2023年の日本の経済の大きさを示す数字(名目GDP)は591兆4820億円でした。これをドルに換算すると、日本の経済は世界で4番目に大きいことになります。これまでは3番目だったので、1つ下がったんですね。これは円の価値が下がったことも関係していますが、もう一つ大きな理由があります。それは、日本の経済がここ30年間ほとんど成長していなかったことです。

デフレとは

まず、「デフレ」という言葉を理解しましょう。デフレは物の価格がずっと下がり続ける状態のことです。インフレが物価が上がることなので、その反対ですね。この物価の変動は、人々がどれだけ物を買いたいか(需要)と、市場にどれだけ物があるか(供給)のバランスで起こります。

デフレの影響は?

世界の歴史を見ると、デフレはあまり多くない珍しい現象です。たとえば、19世紀の産業革命の時は、技術が進歩して物がたくさん作られたのに、お金の量はあまり増えなかったので、物の価格が下がるデフレが起こりました。

デフレが続くと、企業や人々はお金を使うのを控えるようになります。なぜなら、物の価格が下がり続けると思うと、買うのを待ったほうが安くなるからです。結果として、経済が停滞しやすくなるんです。

ノーベル経済学賞を受賞したベン・バーナンキ先生によると、大恐慌の時に金本位制を続けた国はデフレに苦しんだそうです。でも、日本はその時、高橋是清という人がうまい政策を使って、デフレを早く脱出できました。しかし、1990年代半ばからの日本は、デフレが続いて経済がなかなか成長しなかったんです。

この記事では、日本の経済が成長しなかった理由の一つとして「デフレ」という現象を紹介しました。デフレが経済に与える影響を知ることは、日本の経済を理解する上でとても大切です。

政策の間違いと改善の兆し

日本の経済が停滞した主な理由の一つは、財務省と日本銀行などの機関が十分なマクロ経済の専門知識を持っていなかったことです。さらに、間違った政策を認めずに続けてしまったため、問題が長引いてしまったと、経済学者の高橋洋一さんは指摘しています。

アベノミクスという経済政策の下で、デフレ(物価が下がり続ける状態)からの脱却が見え始めました。具体的には、1994年から安倍・菅政権が始まるまでの平均GDPデフレータ伸び率はマイナス0.9%でしたが、安倍・菅政権下ではプラス0.6%に改善しました。しかし、2回の消費税増税やコロナ禍の影響で、理想的なプラス2%には届きませんでした。

GDPデフレーター

名目GDPを実質GDPに評価しなおす「GDPデフレーター」と呼ばれる指標があります。

数式で表すと「名目GDP÷実質GDP=GDPデフレーター」となります。

例えば、上記のパン屋の事例でいえば、名目GDPは264万円であり、実質GDPは240万円でした。ここからGDPデフレーターは「264万円÷240万円=1.1」と計算できます。

これは物価上昇もしくは物価下落がどの程度発生したかを示しています。このGDPデフレーターが1以上となっていれば、基準年と比べて物価が上昇 (インフレ) していることを示します。一方、1未満となっていれば、物価が下落 (デフレ) していることを意味するのです。

社会的割引率の問題

政府の投資計画に使われる「社会的割引率」が4%と高すぎることも問題でした。この割引率は、投資の価値を決めるための数字ですが、本来は市場の金利に近い数値であるべきです。しかし、日本では20年以上も変わらず、高い割引率が適用されていました。これが適切に1%程度に下がれば、公共投資の予算は今の倍以上に増える可能性があります。

社会的割引率

「将来生じる便益や費用を現在の価値でどう評価するか」です。

例えば、今年得られる10万円と10年後に得られる10万円を足して、総便益20万円とはなりません。一般的に、年4%の割合で将来価値を現在価値に割り引く手法がよく用いられています。

この年4%を社会的割引率という。その結果、「10年後の10万円」は、「現在の約6.8万円」に換算され、総便益は約16.8万円となります。「明日の百より今日の五十」という諺は、極端ではあるが社会的割引率を単純化したものと言えるでしょう。

経済成長には、マクロ経済政策が非常に重要です。1990年代は、財務省や日本銀行の対応が十分でなかったと言われています。安倍・菅政権以降、日銀は改善されましたが、低金利を活かせず、公共投資が足りなかったため、民間投資も十分ではありませんでした。これが日本経済のGDPの低下につながったと考えられます。

日本の公共投資問題と高すぎる社会的割引率の影響

社会的割引率とは、政府が公共投資の価値を決める時に使う数字のことです。この数字が高いと、投資の価値が低く見積もられるため、公共投資(道路や橋などのインフラ整備)が減ってしまいます。日本ではこの割引率が20年間、4%で固定されていました。

4%の割引率が続くと、公共投資がなかなか進まないんです。それに、公共投資が少ないと、民間企業も投資を控える傾向があります。つまり、この高い割引率は経済に悪影響を与えているんです。

なぜ割引率は見直されなかったのか?

20年前、この割引率を4%に決めたのは、当時の金利が4%だったからです。本来は、金利に合わせて割引率も変わるべきなのに、その後見直しがされませんでした。高橋洋一さんによると、財務省や国土交通省が自分たちにとって都合が良いため、敢えて変更しなかったのではないかと言われています。

民主党政権の時も、割引率の問題は指摘されていましたが、変更されませんでした。安倍政権になっても、国交大臣の政治的な理由で見直しが難しかったようです。何度も見直しの話が出ましたが、実際には変更されず、岸田政権になっても4%のままでした。

国債と公共投資の関係

公共投資は通常、国債(国が借金して作るお金)を使って賄われます。もし割引率を下げて公共投資が増えれば、その分国債の量も増えることになります。つまり、公共投資を増やすか、国債を抑えて現状維持するかが、政治家や官僚の間で議論されているのです。

現在、日本では公共投資が十分に行われていないと言われています。特に災害復旧などの分野で、この過小投資が進行していることが、経済にも悪影響を与えています。適切な公共投資は災害からの回復を早め、経済活動を支える重要な役割を持っています。

国債の問題は資産とのバランス

国債とは、政府がお金を借りるために発行する借金のことです。日本の国の借金は1286兆円という巨額ですが、この数字だけを見て心配する人もいます。

しかし、国債が問題なのは、単に借金の額だけではありません。大事なのは、国が持っている資産と借金(負債)の差額、つまり「純資産」です。国際通貨基金(IMF)が発表する「パブリックセクターバランスシート」という報告書で、各国の純資産の状態が分かります。

この報告書によると、GDPに対する純資産の割合が大きい国ほど財政が健全だと言えます。カナダが一番高い割合を持っていますが、実は日本もとても高く、G7国の中で2番目に良い状態にあります。

財務省や一部の人々は、日本の財政健全性を悪く見せようと、IMFに対してこの数字を下げるよう働きかけているという話も耳にします。

ドイツの経済成長

公共投資は、民間の投資を引き出すために大切な役割を持っていますが、日本ではその役割を十分に果たしていませんでした。国土を強くする投資が足りず、低金利時代の良い投資機会を政府も民間も逃してしまったのです。加えて、1997年、2014年、2019年の3回の消費税増税も、経済にとって大きな打撃でした。

もしデフレ(物価の下落)がなく、社会的割引率が適切で、政府の投資が十分だったら、日本の経済はもっと成長していたはずです。この「もしも」の状況で計算すると、日本の名目GDPはもっと高くなって、ドイツに抜かれることはなかったでしょう。

ドイツ経済の3つの要因

一方で、ドイツ経済は幸運にも恵まれていました。ドイツ経済の成長要因は以下の3つです。

  1. ユーロ圏の中心国として、他の国々より割安な通貨で経済的に有利
  2. ロシアからの安い原油の輸入
  3. 中国向けの輸出が好調

これらのうち、1番目の要因は続いていますが、2番目と3番目の好条件は失われつつあります。日本が適切な経済政策を行えば、ドイツを抜いて再び世界2位の経済大国になる可能性があります。

まとめ 日本の公共投資の問題点とドイツ経済の成長要因

この記事では、日本の公共投資の問題点と、ドイツ経済の成長要因について説明しました。国の経済政策がどのように経済成長に影響するかを理解することは、金融に興味を持つ人にとって重要な知識です。

日本の経済は、公共投資が十分でなかったことが問題の一つです。公共投資とは、政府が道路や橋などのインフラを作るために使うお金のこと。この投資が足りないと、民間の会社もお金を使いたがらなくなるんです。さらに、1997年、2014年、2019年の3回の消費税増税が、経済に悪影響を与えました。

社会的割引率という指標が高い(4%)ために、公共投資が抑えられてしまいました。この割引率が低ければ、もっと多くの公共投資ができたはずです。

また、日本の国債(政府の借金)は1286兆円ととても多いですが、大事なのは借金だけでなく、国の資産と借金の差額です。この差額が大きい方が経済は健全と言えます。国際通貨基金(IMF)の報告によると、日本はこの点でG7国の中で2番目に良い状態です。

ドイツの経済は、ユーロ圏の中心国であること、安い原油の輸入、中国向け輸出が好調であることが成長要因です。しかし、そのうちの2つはこれから変わる可能性があります。日本が適切な経済政策を行えば、ドイツを抜いて世界2位の経済大国になるチャンスがあります。

こうした経済や投資についてYoutubeチャンネルでも初心者にもわかりやすく解説していますので、ぜひフォローやいいねをお願いいたします!

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この記事を書いた人

株式会社シュタインズ
「テクノロジー×教育の研究開発」を事業の基盤に、現在は金融教育サービス事業「Moneychat(http://moneychat.life/)」の企画と開発を進める。

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