2005年6月に設立されたフィル・カンパニーは、昨年11月にフィルパーク東京【フィル・パーク TOKYO GINZA Shintomi Lab】に新しい本社を開設しました。この新しい本社は、地上13階建てで、フィルパークとしては過去最大の床面積とフロア数を誇ります。
フィル・カンパニーとは、商業施設の開発・運営を行っている企業です。フィルパークは、同社が展開する商業施設のブランド名です。
2023年には大きな経営体制の変革があり、金子麻理さんが社長に就任しました。さらに、同年11月には創業メンバーである高橋伸彰さんが代表取締役会長になりました。代表取締役会長とは、会社の取締役の中で特に重要な役職を担う人のことです。
そこで今回は、【3267】フィル・カンパニーの2024年11月期1Q決算について、資料をもとに投資初心者にもわかりやすいように解説いたします。
フィルカンパニーがどんな会社なのかの概要は以下の記事冒頭で解説をしているのだ!
2024年11月期1Q決算とは、2024年11月を期末とする会計年度の第1四半期(1Q)の決算報告のこと。
四半期とは、3か月ごとの期間のことなのだ。
フィル・カンパニー 2024年11月期1Qの 経営成績はどうだった?
まず初めに、2024年11月期1四半期(1Q)の経営成績を見ていきましょう!
2023年12月1日から2024年2月29日までの第1四半期連結累計期間中、日本経済はコロナ禍からの正常化やインバウンド需要の回復などによって、緩やかな回復基調にありました。しかし、円安や物価高の影響で個人消費や設備投資は停滞する状況が続いています。
このような状況の中、フィル・カンパニーは「まちのスキマを『創造』で満たす」というパーパス(企業の存在意義)を掲げ、土地オーナー・入居者・地域にとって三方良しとなる企画である「空中店舗フィル・パーク」およびガレージ付賃貸住宅「プレミアムガレージハウス」を事業展開してきました。これらの事業は、既存土地オーナー向けに土地活用商品の企画提案を行う「請負受注スキーム」と、不動産投資家向けに当社が土地を購入し、土地活用商品の開発から販売までを行う「開発販売スキーム」という二つの手法でソリューションサービスを提供しています。
売上高と利益
2024年11月期第1四半期連結累計期間の経営成績は次の通りです。
- 売上高: 606,083千円(前年同期比17.3%減)
- 売上総利益: 207,688千円(前年同期比10.1%増)
- 売上総利益率: 34.3%(前年同期は25.7%)
売上高は、請負受注スキームにおける売上高の減少に伴い、前年同期より減少しました。一方で、売上総利益および売上総利益率は、新規受注件数の増加に伴い、売上総利益率の高い契約時の売上が増加したため、前年同期より増加しました。
売上高は、サービスや商品を販売することで得た対価の総額のこと。 売上高から売上原価を差し引いた金額( 売上高 - 売上原価)を、売上総利益というのだ!
売上総利益は『粗利』とも呼ばれてるのだ!
営業損益と経常損益
- 営業損失: 88,654千円(前年同期は営業損失88,174千円)
- 経常損失: 96,589千円(前年同期は経常損失90,461千円)
- 親会社株主に帰属する四半期純損失: 71,409千円(前年同期は親会社株主に帰属する四半期純損失67,750千円)
営業損益は、業容拡大に伴う先行投資としての人件費や業務委託費の増加による販売費及び一般管理費の増加が影響し、前年同期とほぼ同程度の営業損失を計上しました。
売上高、売上内訳、売上原価、売上総利益および売上総利益率
下表に、第1四半期連結累計期間における売上高、営業利益、経常利益、売上総利益を示します。
投資家にとって重要なポイント💡
ここで投資家にとって重要なポイントを分かりやすくまとめました。
売上高の減少
売上高が前年同期比で17.3%減少したことは注意が必要です。これは主に請負受注スキームでの売上高の減少によるものです。経済の不透明感や消費者の慎重な支出が影響している可能性があります。
売上総利益率の改善
一方で、売上総利益率が前年同期の25.7%から34.3%に改善している点は、企業の収益性が向上していることを示しています。新規受注件数の増加により、売上総利益率の高い契約時の売上が増加したことが寄与しています。
営業損失と経常損失の継続
営業損失と経常損失が前年同期とほぼ同水準であることから、業容拡大に伴う先行投資の影響が続いていることがわかります。これには、人件費や業務委託費の増加が含まれており、将来的な成長を見据えた投資と捉えることもできます。
営業損益は8,800万円の赤字となりました。これは、開発販売の引き渡し件数が0件だったことから売上が伸び悩んだ結果です。
四半期純損失
親会社株主に帰属する四半期純損失が前年同期より若干増加していますが、これは大幅な変動ではありません。引き続き、収益性の改善とコスト管理が求められます。
総括
フィル・カンパニーの2024年11月期第1四半期の決算は、売上高の減少が見られる一方で、売上総利益率の改善や新規受注の増加など、ポジティブな要素も含まれています。特に、業容拡大に伴う先行投資が今後の成長に寄与する可能性があるため、中長期的な視点での評価が重要です。投資家にとっては、企業の収益性と成長戦略に注目し、引き続き慎重なモニタリングが求められます。
このように、フィル・カンパニーの第1四半期決算は、厳しい経済状況にもかかわらず、しっかりとした利益を確保しています。
- 連結累計期間: 企業の複数の子会社や関連会社の業績を合わせて報告する期間のことです。
- インバウンド需要: 海外からの観光客やビジネス客による需要のことです。
- 円安: 円の価値が他の通貨に対して下がることです。
- 物価高: 商品やサービスの価格が上昇することです。
- 売上総利益率: 売上総利益を売上高で割った割合で、会社の利益率を示します。
- 営業損益: 営業活動によって得られた利益(損失)のことです。
- 経常損益: 本業以外の収益や費用を含めた、会社の経常的な利益(損失)のことです。
- 親会社株主に帰属する四半期純損失: 親会社の株主に帰属する四半期純利益(損失)のことです。
売上高と売上総利益 どちらが大事?
売上高は、企業が商品やサービスを売ったときに得られる総額なのだ。でも、売上高が高いだけでは、必ずしも企業が儲かっているとは言えないのだ。なぜなら、売上高から原材料費や製造コストなどを差し引いた売上総利益が、実際の利益だからね。
例えば、100万円の商品を売っても、製造に110万円かかったら赤字になるのだ。だから、企業は売上高だけでなく、コストも管理し、売上総利益を増やすことが重要なのだ。
売上高も大事だけど、最終的には利益を上げることがもっと大事なのだ。利益が出ないと、会社は成長できないよね。企業がしっかりと利益を上げることで、健全な成長を続けることができるのだ!
フィル・カンパニーのパーパス、ビジョン、バリュー
フィル・カンパニーは、コロナ禍を乗り越え、第3の創業期を迎えています。まずは、企業の原点に立ち返り、会社としての存在意義(パーパス)、目指す姿(ビジョン)、および価値観(バリュー)を再定義することから始めました。
当社が注力するのは、例えば街の中でコインパーキングでしか活用されていない土地、一本裏通りで活用が難しい土地、変形地や狭小地、あるいは駅から遠くて土地活用に工夫が必要な土地です。これらの土地を、その地域のニーズに応じて活用することで、土地オーナー、テナントや入居者、地域の人々全てが幸せになれることを目指しています。
昨年、半年以上かけて経営陣だけでなく社員とも議論を重ねた結果、次のように定義しました。
- パーパス(存在意義): 街の隙間を創造で満たす
- ビジョン(目指す姿): 街づくりをオーダーメイドで実現する
- バリュー(価値観): 地域とお客様のために全ての力を尽くす
重要なポイント
- パーパスの明確化: 「街の隙間を創造で満たす」というパーパスは、フィル・カンパニーが特に力を入れている分野を示しています。これは、未利用地や特殊な条件の土地を有効活用することで新たな価値を創出するという戦略です。投資家にとって、このパーパスは企業の長期的な成長可能性を理解する上で重要です。
- ビジョンの具体化: 「街づくりをオーダーメイドで実現する」というビジョンは、フィル・カンパニーが提供するソリューションのユニークさを強調しています。地域ごとにカスタマイズされたアプローチは、他の不動産開発企業との差別化要因となります。
- バリューの実行: 「地域とお客様のために全ての力を尽くす」というバリューは、フィル・カンパニーが顧客や地域社会との関係を重視していることを示しています。これにより、長期的な信頼関係を築き、持続可能なビジネスモデルを実現することが期待されます。
事業概要
フィル・カンパニーのパーパスとビジョンを実現するための主な手段として、次の2つの事業があります。
- 空中店舗フィル・パーク事業
- ガレージ付き賃貸住宅プレミアムガレージハウス事業
まず、フィル・パーク事業について説明します。
この事業は、駐車場の上空の未活性空間を利用して収益を生み出す空間ソリューションサービスです。これにより、駐車場という限られたスペースを最大限に活用することができます。
累計の施工実績としては、工事請負棟数が223棟、開発販売棟数が43棟、合計266棟に達しています。
次に、プレミアムガレージハウス事業について説明します。
この事業は、入居者の幅広いライフスタイルを想像するとともに、駅から離れた郊外エリアでも安定した収益を生み出す土地活用商品です。
プレミアムガレージハウス事業は、2019年に開始されて以来、施工個数と当社システムに登録されている入居待ち登録件数ともに成長を加速しており、今後もさらなる企業拡大が見込まれています。
投資家にとって重要なポイント💡
- 空中店舗フィル・パーク事業の有望性: 駐車場の上空を利用することで、都市部の限られたスペースを最大限に活用し、新たな収益源を創出するこの事業は、土地活用の新しいモデルとして注目されています。累計施工実績が266棟に達していることは、事業の成功と需要の高さを示しています。
- プレミアムガレージハウス事業の成長性: 駅から離れた郊外エリアでも安定した収益を生み出すこの事業は、地方都市や郊外地域での土地活用において強みを発揮しています。2019年の事業開始以来、施工個数と入居待ち登録件数が増加していることから、事業の成長性と今後の拡大の可能性が高いことがうかがえます。
フィル・カンパニーの空中店舗フィル・パーク事業とプレミアムガレージハウス事業は、都市部および郊外での土地活用において独自のソリューションを提供しており、今後の成長が期待されます。特に、限られたスペースを最大限に活用する空中店舗フィル・パーク事業は、新たな収益モデルとして投資家にとって魅力的です。また、プレミアムガレージハウス事業は、郊外地域での安定した収益を見込むことができるため、長期的な投資先としての価値が高いと考えられます。
事業概要各プロダクト及び今後の方針
フィル・カンパニーは、フィルパークとプレミアムガレージハウスの2つのプロダクトを、受注スキームと開発販売スキームという2つのスキームで展開しています。以下は、これらのプロダクトとスキームをマトリックスにしたものです。
フィルパーク事業
- フィルパークの受注スキーム
- 概要: これは、当社の中核事業であり、土地オーナーに対して土地活用商品の企画提案を行うスキームです。
- 今後の方針: このスキームは、今後も当社の中核を担う企業として、人材の配置や経営資源の配分を行い、強化していく方針です。
- フィルパークの開発販売スキーム
- 概要: 当社が土地を購入し、企画・開発を行い、販売するスキームです。販売までの間、当社の在庫としてバランスシートに計上されます。
- 今後の方針: 今後も候補地を探し、チャンスがあれば積極的に拡大していく方針です。
プレミアムガレージハウス事業
- プレミアムガレージハウスの受注スキーム
- 概要: 入居者の幅広いライフスタイルに対応するガレージ付き賃貸住宅の企画提案を行うスキームです。
- 今後の方針: 需要が高まっている事業領域であり、今後も積極的に取り組んでいく方針です。
- プレミアムガレージハウスの開発販売スキーム
- 概要: 郊外の土地を購入し、ガレージ付き賃貸住宅を企画・開発し、販売するスキームです。郊外の土地は都心に比べて評価が付きにくく、ファイナンスが難しいため、販売先が限られる可能性があります。
- 今後の方針: 候補地を取得する際には、入居者や販売先が十分に見込まれるケースに限定して行っていく方針です。
投資家にとって重要なポイント💡
- フィルパーク事業の中核性: 受注スキームがフィル・カンパニーの中核事業であり、今後も経営資源を集中させる方針であることは、安定した収益基盤を支える要因となります。
- 開発販売スキームの拡大方針: フィルパークの開発販売スキームは、積極的に拡大していく方針であり、新たな収益源の創出を目指しています。
- プレミアムガレージハウス事業の成長性: 需要が高まっている受注スキームに重点を置くことで、収益のさらなる成長が期待されます。
- 郊外の土地活用の慎重なアプローチ: 郊外の土地は評価が付きにくいため、入居者や販売先が見込まれるケースに限定して行う方針は、リスク管理の観点から重要です。
フィル・カンパニーは、フィルパークとプレミアムガレージハウスの2つのプロダクトを中心に、受注スキームと開発販売スキームを展開しています。特にフィルパークの受注スキームは中核事業として、今後も強化される予定です。投資家にとっては、各スキームの成長性とリスク管理のバランスが重要であり、特に郊外の土地活用においては慎重なアプローチが求められます。
- 受注スキーム: 土地オーナーに対して土地活用商品の企画提案を行う方式です。
- 開発販売スキーム: 当社が土地を購入し、開発から販売までを行う方式です。
- バランスシート: 企業の財政状態を示す表で、資産、負債、資本の状況を示します。
- 郊外: 都市部から離れた地域のことです。
- ファイナンス: 資金調達や資金管理のことです。
潜在市場
フィル・カンパニーは、フィルパーク事業とプレミアムガレージハウス事業の潜在市場を、建築業界の市場規模をベースに算出しています。全国の建物・建築物の年間総工事費は約26.7兆円です。この大きな市場から、それぞれのビジネスの潜在市場を試算しています。
フィル・カンパニーのビジネスは、街の隙間を活用するというニッチな市場ではありますが、マーケットは非常に大きく、ビジネスモデルの独自性を生かして事業化していきます。
投資家にとって重要なポイント💡
- 大規模な潜在市場: 全国の建築市場が年間約26.7兆円と非常に大きな規模であることから、フィル・カンパニーの事業にも大きな成長の余地があることが示唆されています。
- ニッチ市場の強み: 街の隙間を活用するというフィル・カンパニーのニッチ市場は、他の企業が参入しにくい独自のビジネスモデルを持っています。この独自性は、競争優位性を保つための重要な要素です。
- 成長機会の最大化: 潜在市場の規模を考慮すると、フィル・カンパニーが今後の成長機会を最大限に活用するための戦略が重要です。特に、フィルパーク事業とプレミアムガレージハウス事業の両方で、ニッチ市場における独自のポジションを強化することが求められます。
- 潜在市場: 現在は直接的に取り組んでいないが、将来的にビジネスチャンスが見込まれる市場のことです。
- 建築業界の市場規模: 建物や建築物にかかる年間の総工事費を示します。
- ニッチ市場: 特定の分野に特化した市場のことです。大規模市場とは対照的に、特定のニーズや要求を持つ顧客層を対象としています。
2024年11月期 第1四半期の事業進捗
まず、2024年1月に発表した中期経営計画の概要を簡単にご説明します。
中期経営計画の目標は、持続的成長の基盤となる体制や仕組みを構築することです。
そのために、以下の2つの改革を進めています。
- 事業プロセス改革: 第1の改革として、業務の効率化やプロセスの最適化を図り、既存ビジネスのスケールアップを目指します。
- 組織改革: 第2の改革として、組織の強化や人材の育成を通じて、企業の成長を支える体制を構築します。
これらの改革を通じて、2026年11月期には売上高150億円、営業利益12億円、ROE(自己資本利益率)20%を目指します。
さらに、既存ビジネスの成長に加えて、新規事業の育成やインオーガニック成長(M&Aなどを通じた成長)にも着手していきます。これが第3の改革である「事業ポートフォリオの変革」です。これにより、バリュエーションの向上と株主価値の向上を実現していきます。
投資家にとって重要なポイント💡
- 持続的成長の基盤構築: 事業プロセス改革と組織改革を通じて、持続的な成長の基盤を築くことは、長期的な企業の成長にとって重要なポイントです。
- 売上高・営業利益・ROEの目標: 2026年11月期における具体的な目標値(売上高150億円、営業利益12億円、ROE20%)は、企業の成長戦略を評価する上で重要な指標となります。
- 事業ポートフォリオの変革: 新規事業の育成やインオーガニック成長を通じた多角化戦略は、企業の成長性を高めるための重要な要素です。
重要KPI
今期の重要KPIは、問い合わせ数、提案数、請負受注件数の推移を示しています。今期の目標値は次の通りです。
- 問い合わせ数: 1850件
- 提案数: 220件
- 請負受注件数: 45件
- 請負受注高: 55億円
また、人員数は今後3年間で130名まで拡大する予定です。
企業が出すKPIの重要性
KPI(Key Performance Indicator)は、企業の将来業績を左右する重要な指標なのだ。財務諸表には記載されていない非財務情報で、企業の健康状態や将来性を示すのだ!
例えば、SaaS企業のKPIには、月額利用料(MRR)、利用者数、解約率などがあるのだ。これらの指標は、企業がどれだけ安定した収益を上げているかを示し、投資家にとって重要なのだ。
KPIは、投資家が企業の成長性や収益性を予測するための材料なのだ。財務諸表には記載されていない詳細なパフォーマンスを知る手掛かりとして、企業の強みや課題を把握し、投資判断に役立つのだ。
企業が出すKPIは、投資家にとって非常に重要な情報なのだ。KPIを通じて、投資家は企業の健康状態や将来性を理解し、より良い投資判断を行うことができるのだ。企業はこれをしっかりと投資家に伝えることで、信頼を得て投資につなげることができるのだ。
2024年11月期第1四半期の事業進捗は、中期経営計画に基づいた持続的成長の基盤構築を目指すための重要なステップです。特に、事業プロセス改革や組織改革を通じて、既存ビジネスのスケールアップを図り、さらに新規事業の育成やインオーガニック成長を通じた多角化戦略を進めることで、企業の成長性と競争力を高めています。
- 中期経営計画: 中期(数年間)の企業の経営方針や目標を定めた計画のことです。
- ROE(自己資本利益率): 自己資本に対する利益の割合を示す指標で、企業の収益性を評価する際に使用されます。
- インオーガニック成長: 合併・買収(M&A)などを通じて企業が成長することです。
中期経営計画の進捗
第1四半期の実績は左側の青色の部分、第2半期の計画は右側の緑色の部分となります。
事業KPIである問い合わせ数、提案数、受注件数の進捗は想定通りでした。今年に入って、金融機関など3社と契約を締結するなど、ビジネスマッチング先の拡大がありました。引き続き、金融機関とのビジネスマッチングの拡大に加え、既存のビジネスマッチング先との関係性を強化・深化するとともに、ウェブマーケティングも強化していきます。施策を着実に実行し、第2四半期以降もしっかりKPIを積み上げていきます。
中期経営計画の重要性
中期経営計画は、企業が3~5年先の目標を設定し、その達成に向けた具体的な計画なのだ。この計画には2つの重要な目的があるのだ。
まず、会社の現状整理と課題の明確化。
中期経営計画を作ることで、従業員数や年齢構成、市場の成長率に対する自社の成長率などを把握し、課題を明確にするのだ。これにより、従業員や株主が会社の現状を共有し、課題解決に向けた一体感を持つことができるのだ。
次に、目標達成に必要な具体的な施策の明確化。
例えば「3年後に売上を1.5倍にする」ために、毎年どれくらいの従業員増加が必要かが明確になるのだ。これにより、株主は計画の進捗を確認し、投資判断の材料にすることができるのだ。
中期経営計画は、企業の成長の道筋を示し、株主や従業員がその進捗を確認するための重要なツールなのだ。これにより、投資家はより良い投資判断を行うことができるのだ。
人員数の進捗と課題
今期の人員数は想定通りには伸びませんでした。原因としては以下の2点が挙げられます。
- 採用の遅れ: 継続的に採用は進めているものの、計画通りには進みませんでした。
- 退職者の増加: 期末の賞与支払い時期もあり、退職者が想定より多かったことが影響しました。エンゲージメント向上の取り組みを強化する必要があります。
人員増強の取り組みについて、以下の2つの問題に対する対策を説明します。
採用の強化
- 採用管理システムの導入: 採用候補者のパイプラインを管理することで、採用プロセスの進捗が見える化され、迅速な対応が可能になりました。また、人材の要件を明確化し、採用プロセスおよび意思決定のスピードアップも図っています。
退職抑制策
- 従業員エンゲージメントの向上: 従業員の定着率を向上させることで、退職者の減少を目指します。具体的には、PVV(パーパス・ビジョン・バリュー)の浸透および意思疎通の活発化を図り、PVVを体現したプロジェクトに対して表彰を行ったり、ポッドキャストを利用して創業者の思いを従業員に伝えるなどの策を実行しています。
- 退職者とのコミュニケーション: 課題の認識と改善に努めています。
- 人事制度の整備: 働き方改革の一環として、残業時間削減や在宅ワークの導入を検討しています。また、福利厚生制度の充実として、従業員持ち株会制度を開始します。報酬についても、賃上げやインセンティブ制度の見直しを行っています。
組織改革の進捗
組織改革では、組織開発と人材開発を進めています。
- 組織開発: PVVの浸透を図り、社外ステークホルダーへの理念の浸透と満足度向上のために、フィルオーナーズクラブの補足を検討しています。持続的成長の基盤づくりとして、マネージャー育成研修を導入し、マーケティング部および広報部を新設しました。関西における拠点の開設や建築機能の強化も検討しています。
- 人材開発: 自立的・持続的な経験学習の促進として、オンボーディングツールを用いた新規営業部員へのノウハウ吸収を進めています。目標管理システムを導入し、社員全員が成長に対するモチベーションとコミットメントを持てる体制を整えています。
投資家にとって重要なポイント💡
- KPIの達成状況: 第1四半期の問い合わせ数、提案数、受注件数の進捗が計画通りであることは、企業の成長力を示す重要な指標です。
- 人材の確保と定着: 採用の遅れや退職者の増加という課題に対して、具体的な対策が講じられていることは、組織の安定と成長にとって重要です。
- 組織改革の進捗: 組織開発と人材開発の進捗は、企業の長期的な競争力を高めるための重要な取り組みです。
中期経営計画の進捗状況は、持続的成長の基盤を築くための具体的な施策が順調に進んでいることを示しています。特に、事業プロセス改革や組織改革を通じて、企業の成長戦略が明確に実行されています。投資家にとっては、これらの施策がどのように成果を上げているかを注視し、長期的な視点で企業の成長性を評価することが重要です。
- KPI(重要業績評価指標): 企業の目標達成度を測るための具体的な指標のことです。
- エンゲージメント: 従業員の仕事に対する意欲や会社への愛着心を指します。
- オンボーディングツール: 新入社員が会社の文化や業務に迅速に適応するための支援ツールのことです。
- 目標管理システム: 企業の目標と個人の目標を連動させて管理するシステムのことです。
中期経営計画による株価の動向
中期経営計画は、発表されると株価の変動要因となるのだ。計画の内容がこれまでの会社予想に対してインパクトがあるものであれば、株価は急上昇することがあるのだ。
例えば、企業が新しい成長戦略や大胆な投資計画を発表した場合、市場はその将来性を評価し、株価が大きく上がる可能性があるのだ。逆に、期待に反する内容であれば、株価が下がることもあるのだ。
中期経営計画は、企業の未来を描く重要な指標であり、投資家はこれを基に投資判断を行うのだ。株価の動向は、企業が発表する計画の内容と市場の期待感に大きく左右されるのだ。
計画発表の際は、その具体的な内容と実現可能性をしっかりと確認することが重要なのだ。これにより、投資家はより正確な判断を下し、リスクを抑えた投資ができるようになるのだ。
収益性の推移
2021年11月以前は、四半期ごとに粗利が大きく変動していましたが、現在は売上総利益率が概ね20%から25%で安定的に推移しています。売上総利益率は、業種ごとに異なるが20%以上が望ましいと言われています。
資材価格の高騰にもかかわらず、販売価格に転嫁できているため、利益率は現状維持できています。当社は、どのような条件でも収益性の高い物件を提案できる比較提案力があるため、価格が上がってもお客様に満足いただける商品を提供できています。その結果として、以前と変わらない売上利益率、つまり売上総利益率を維持できています。
今期の売上総利益率(売上総利益を売上高で割った割合)は34.3%ですが、これは一時的なものです。
投資家にとって重要なポイント💡
- 工事進行基準への変更: 売上計上方法を工事進行基準に変更したことで、収益の安定性が向上しました。これにより、四半期ごとの粗利が安定的に推移しています。
- 資材価格の高騰: 資材価格が高騰しているにもかかわらず、販売価格に転嫁できているため、利益率を維持できています。これは、価格上昇を顧客に転嫁できる強い価格交渉力と顧客満足度の高さを示しています。
- 売上総利益率の一時的な上昇: 今期の売上総利益率は34.3%と高い水準にありますが、これは一時的なものであり、長期的には安定した利益率を維持することが重要です。
売上高の内訳
売上高は前年同期から17%の減収となっています。請負受注からの売上も前年同期比で減少していますが、これは竣工した案件の規模が平均で見て小さかったことが要因です。
受注高及び受注残高の推移
コロナ前の2020年および2019年11月期が売上高・利益ともに過去最高業績でした。現在の受注高は、その時の水準を超えており、第1四半期としては件数ベースで過去最高となっています。直近3四半期の受注高は10億円を超えており、昨年来実施している改革の成果が出始めていると感じています。受注残高も35億円まで積み上がり、コロナ前の水準まで回復しています。
投資家にとって重要なポイント💡
- 受注高の増加: 直近3四半期の受注高が10億円を超えていることは、企業の営業活動が順調に進んでいることを示しています。これは、今後の売上増加に直結する重要な指標です。
- 受注残高の回復: 受注残高が35億円まで回復していることは、コロナ前の水準に戻っており、今後の業績に対する安心感を提供します。
- 改革の成果: 昨年来行っている改革の成果が出始めていることは、企業の成長戦略が効果を上げていることを示しています。
フィル・カンパニーの売上高は前年同期比で減少していますが、これは竣工案件の規模が小さかったことが主な要因です。
一方で、受注高および受注残高は過去最高水準に達しており、昨年来の改革の成果が現れ始めています。投資家にとっては、これらの受注高の増加と受注残高の回復が、今後の売上増加にどのように寄与するかを注視することが重要です。
- 請負受注: 顧客からの依頼に基づいて行う受注のことです。
- 竣工: 建築工事が完了することを指します。
- 受注残高: 現在受注しているが、まだ売上として計上されていない金額のことです。
請負受注に関するKPIの推移
以下は、請負受注に関するKPI(重要業績評価指標)の推移です。
- グレーのバーチャート: 問い合わせ数
- ブルーのバーチャート: 提案数
また、下の表には受注件数と提案から受注に至った割合を示す制約率を記載しています。
問い合わせ数と提案数の推移
上の画像で、左側がフィルパーク、右側がプレミアムガレージハウスのデータです。両者ともに問い合わせ数が減少しています。
4Qにフィルパークの提案数が減少したことから、新規の問い合わせ数も減少しました。しかし、面談や提案の数を増やすことに注力した影響で、問い合わせ数が減少した結果となっています。
一方で、ほぼ基準に立てた予算通りの問い合わせ数は獲得できており、面談数や提案数といった実数に近いKPIは増えています。今後は、定型金融機関の数をさらに拡大し、営業人員を増やすことで問い合わせの拡大を図りたいと考えています。
また、ウェブマーケティングの戦略も策定中です。都市活用サイトなど他社媒体の掲載や自社媒体のSEO対策、リスティング広告も活用しながら問い合わせ数をさらに拡大していきたいと考えています。
投資家にとって重要なポイント💡
- 問い合わせ数の減少とその理由: 問い合わせ数の減少は一時的なものであり、面談や提案の数を増やすことに注力した結果です。これは、短期的な戦略の転換として理解することが重要です。
- 実数に近いKPIの増加: 面談数や提案数といった実数に近いKPIが増加していることは、営業活動が実際に進展していることを示しています。
- 営業戦略の強化: 定型金融機関の数を拡大し、営業人員を増やすことで、問い合わせ数の増加を図る戦略は、長期的な成長に向けた重要な施策です。
- ウェブマーケティングの活用: SEO対策やリスティング広告などのウェブマーケティングを活用して、問い合わせ数を増加させる取り組みは、現代のデジタルマーケティング環境において重要です。
フィル・カンパニーの請負受注に関するKPIの推移は、問い合わせ数の一時的な減少が見られるものの、面談数や提案数が増加していることから、営業活動が順調に進んでいることを示しています。今後の戦略として、定型金融機関の数の拡大や営業人員の増強、ウェブマーケティングの強化が予定されており、これらの施策がどのように成果を上げるかが注目されます。
Q&Aコーナー
ここからは個人投資家からの質問とその回答についてまとめます。
- 広告宣伝費についてのご質問です。第1四半期時点では前年同期から30%減少しているとのことですが、問い合わせ数を増やすためにもWebを活用するとのことでした。今後、広告宣伝費は増える想定でしょうか?
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第1四半期は予算より広告宣伝費を抑えていたことから、少し低い状態でした。第2四半期以降は、この部分の費用が増えていくことを想定しています。前期の年間広告宣伝費は約3000万円程度でしたが、そこからは増える可能性があります。
いずれにしても、業績予想と整合的な予算を組んでいますので、仮に売上高が業績予想の75億円で確定すれば、営業利益も業績予想の3億円となるように、しっかりとコストコントロールを厳格に行ってまいります。
投資家にとって重要なポイント💡
- 広告宣伝費の増加予定: 第2四半期以降、広告宣伝費を増加させる予定です。これにより、問い合わせ数の増加が期待されます。
- コストコントロールの徹底: 広告宣伝費を増加させる一方で、業績予想と整合的な予算を組むことで、営業利益の確保を目指しています。コストコントロールを厳格に行うことで、利益率を維持しつつ成長を図ります。
- 粗利率の大幅改善は単純に施工が少なかっただけで、その他の構造的な改善要因などはなかったのでしょうか?前年同期も売上高自体の水準は低かったようですが、施工のウェイトが高かったということでしょうか?
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粗利率の変化について、構造的な変化は特にございません。四半期ごとに見ると一時的に粗利率が上がったように見えているのが結論です。当社は工事進捗に応じて売上高を計上しますが、売上自体は非常に好調でした。ただ、過去に受注した案件の工事進捗に応じて計上される売上のタイミングが、今回の四半期ではあまり多くなかったため、売上高の計上額自体は小さくなりました。
一方で、そのタイミングの利益率は2割弱と相対的に低かったため、売上高が低いことで相対的に粗利率が押し上げられる結果となりました。また、1Qで受注高が11億円あり、その数%の契約時に売上を計上しましたが、金額的には少ないものの粗利率は9割から10割に達しています。これにより、売上高はそれほど押し上げられませんでしたが、利益をほぼ同額押し上げる形となり、結果的に利益率が大きく改善しました。
今後、2Q以降に工事の進捗が進み、案件の金額が増えると、過去の平均である20%から25%の利益率に回帰すると予想されます。また、販売についても粗利率は概ね20%ですので、在庫の売却が進めば平準化されると考えています。利益率は四半期ごとに多少ぶれることがあるため、ある程度の幅を見てトレンドで把握していただければと思います。
投資家にとって重要なポイント💡
- 粗利率の一時的な変動: 粗利率の大幅な改善は一時的なものであり、構造的な変化ではないことを理解することが重要です。四半期ごとの工事進捗や売上計上のタイミングによって変動することがあります。
- 売上高と利益率の関係: 売上高が低い時期には相対的に粗利率が押し上げられる傾向がありますが、これは一時的な現象です。長期的には、平均的な利益率に戻ると予想されています。
- 契約時の高粗利率: 契約時に計上される売上の粗利率が高いため、金額が少なくても利益を押し上げる効果があります。この点は、今後の業績予測において考慮すべき要素です。
「粗利率が高い」≠「儲かる」
粗利率が高いからといって、必ずしも事業が儲かるわけではないのだ。
たとえば、美容室の粗利率が高くても、ピザ専門店の方が営業利益が高いみたいな場合はよくあるのだ。
これは、事業の儲けを考えるときに、粗利率だけでなく固定費も考慮する必要があることを示しているのだ。固定費には、家賃や人件費などの毎月一定額かかる費用が含まれるのだ。高い粗利率を持つビジネスでも、固定費が多ければ、利益を出すのが難しくなるのだ。
したがって、事業計画を立てる際や毎月の収支を管理する際には、粗利率と固定費の両方をしっかりと意識することが重要なのだ。
事業の成功には、粗利率の高さだけでなく、固定費をどれだけ効果的に管理できるかが鍵なのだ。
まとめ 業績 (ROE)を高めることで株価 (PBR)を上げ、株主価値(株価)の向上を目指す
いかがだったでしょうか?
フィル・カンパニーは、業績向上を目指し、具体的には自己資本利益率(ROE)を高めることで、株価純資産倍率(PBR)を上げ、最終的には株主価値(株価)の向上を目指しています。
一時的な売上高の減少は見られるものの、長期的な目で見たときの今後の成長に期待できる企業ですので、ぜひ今後の動向をチェックしていきましょう!