2023年4月12日、月面開発事業を行う宇宙ベンチャー企業『ispace』が東京証券取引所グロース市場に上場し、話題を集めました。
この株式上場は、宇宙ベンチャー日本史上初となる快挙なのだ!
株式会社ispaceは、月面探査や宇宙資源開発を目指す日本のベンチャー企業です。
同社は2010年に設立され、月の超展開と科学技術の前進を支えるサービスを提供しています。世界初の民間月面探査を目指しており、これが同社の大きな引力となっています。
マネーチャットでは、投資の超初心者から中級者の方が一緒に意見や情報交換したり、研究するグループを運営しています!
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株式会社ispace【9348】とは?
株式会社ispace【9348】は、月面探査や宇宙資源開発を目指す日本のベンチャー企業です。
同社は2010年に設立され、月の超展開と科学技術の前進を支えるサービスを提供しています。世界初の民間月面探査を目指しており、これが同社の大きな引力となっています。
さらに、同社は「人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界を目指す」をミッションとした宇宙スタートアップ企業です。超小型宇宙ロボティクスを軸に、水資源開発を先導し、宇宙で経済が回る世界の実現を目指しています。
水は水素とアンジェに分解することで燃料になり、月面における水資源のマッピングは、宇宙開発を加速化させると考えられています。これにより、宇宙開発は連鎖的に発展する可能性を持ち、年々大きな成長が期待されます。
建設、エネルギー、鉄鋼、通信、運輸、農業、医療、そして月旅行… 2040年には1000人が住み、年間で10000人が月を訪れる世界の実現を目指しています。ispaceは宇宙に構築したインフラを活用することで、地球に住む人間の生活を支えていくことを目指しています。
株式会社ispaceのビジネスモデル
ispaceのビジネスモデルは、月面開発事業を中心に、以下の3つの主要領域で収益を創出しています。
これらは、同社のミッションごとに提供する独自サービスや技術を通じて具体化され、企業・宇宙機関・学術機関との強固なパートナーシップによって支えられています。
1. 輸送サービス
当中間決算期間中、ミッション2で使用予定の「RESILIENCEランダー」には、民間企業3社、大学1校、アートプロジェクト1件分のペイロード輸送を総額1,600万米ドルで受注。顧客のペイロードを月面まで安全かつ確実に届ける輸送契約が締結されており、この領域での売上が着実に計上されています。
打上げ技術とペイロード運搬の柔軟性を備え、特に商業的な月面輸送市場において競争優位性を確保しています。
ロケットにとってのペイロードは衛星であり、衛星にとってのペイロードは観測機器などのミッション機器なので、英語でニュースを読む際には注意が必要なのだ!
“hosted payloads”は自分の衛星の余剰スペースを、他の企業に使ってもらうサービスで、今はやりのシェアリングエコノミーの一種だよ。
ホスト側は余剰スペースでお金が稼げ、借りる側は衛星全体を作らずとも自分のミッションを打ち上げることができるというメリットがあるのだ。
2. データサービス
ispaceの月面探査車が収集した地形データ、資源情報、環境データは、学術研究者や資源開発企業、宇宙機関にとって重要な商業価値を提供しています。データ収集の成果は、長期的に高い収益を見込むビジネスモデルの中核を成しています。
NASAのCLPSプログラムに関連するミッション3「APEX1.0ランダー」の成功により、データ提供の需要がさらに拡大することが期待されています。
3. パートナーシップサービス
ミッション2における「HAKUTO-R」のオフィシャルパートナーには、新たに三井住友銀行が参画。広告媒体としてのロゴ露出や技術・商品開発での協業契約が進行中。合計22社のパートナーと連携し、ミッションを商業的成功へ導く体制を構築。
商業・学術両面において広範な連携を実現することで、ispaceのブランド力向上と事業基盤の拡大を可能にしています。
- 収益多様化の推進
- 当社はペイロード輸送やデータサービスだけでなく、コンテンツ権利や広告露出といった新しい形態の収益モデルを開拓しています。
- 当社はペイロード輸送やデータサービスだけでなく、コンテンツ権利や広告露出といった新しい形態の収益モデルを開拓しています。
- 政府支援と市場動向の追い風
- 日本政府およびNASAをはじめとする宇宙機関による大規模な予算拡大と技術開発支援の流れは、ispaceの事業成長を加速させる要因となっています。特に、CLPSプログラムへの参画は長期的な契約収入を保証するものであり、当社の成長性を裏付けるのではないでしょうか。
- 日本政府およびNASAをはじめとする宇宙機関による大規模な予算拡大と技術開発支援の流れは、ispaceの事業成長を加速させる要因となっています。特に、CLPSプログラムへの参画は長期的な契約収入を保証するものであり、当社の成長性を裏付けるのではないでしょうか。
- 技術革新と実績
- 「RESILIENCEランダー」や「APEX1.0ランダー」の開発と実装により、ispaceは実績を積み重ねています。これらは競争優位性の証明になり、顧客信頼の獲得につながるでしょう。
- 「RESILIENCEランダー」や「APEX1.0ランダー」の開発と実装により、ispaceは実績を積み重ねています。これらは競争優位性の証明になり、顧客信頼の獲得につながるでしょう。
- グローバル展開の加速
- 米国子会社の活動拠点強化(管制室設置や国際宇宙会議でのプロモーション)は、ispaceのグローバル市場における競争力をさらに高める動きとして注目されています。米国市場でのプレゼンス拡大と収益拡大が期待されます。
株式会社ispaceの業績分析(2024年12月現在)
2025年3月期第2四半期(中間期)の業績は以下の通りです。
- 売上高: 13億4,200万円
- 営業利益: -37億34万円
- 純利益: -63億91万円
でもそもそもispadeの売り上げってどのように立っているのだ?宇宙事業のビジネスがまだよくわからない!
ビジネスモデルのところでご紹介もしましたが、もう少し詳しく業績を見ていきましょう!
有価証券報告書の注記を読んでみたところ、収益認識関係の部分で以下の記述を見つけました!
主には、ビジネスモデルで紹介したように「ペイロードサービス」と「パートナーシップサービス」からの売り上げがあるようですね。
つまり月への輸送サービスによって2025年3月期第2四半期までに11億もの売上があったことがわかります。しかし、着陸失敗しているので、どのような仕組みや内容で輸送サービスの売上が立ったのかは不明ですが、これがispace社の主力サービスといえます。
データについては、まだ大きな売り上げになるほどの活用には至っていないのかもしれません。
また、「パートナーシップサービス」事業については、
また、当社グループの活動をコンテンツとして利用する権利や広告媒体上でのロゴマーク露出、データ利用権等をパッケージとして販売し技術面や商品開発面での協業を行うパートナーシップ事業においては、ミッション2までを対象とする「HAKUTO-R」のオフィシャルパートナーに、新たに株式会社三井住友銀行が、コーポレートパートナーに栗田工業株式会社及び株式会社ジンズが参画し、総勢22社のパートナーとともにミッション2成功を目指します。(決算短信)
とありました。ロゴマークやデータの利用等をパッケージとして提供するサービスのようです。
売上について
売上高の増減分析についてです。
決算期 | 売上高 (百万円) | 売上成長率 (%) |
---|---|---|
2020/3単 | 216 | N/A |
2021/3連 | 506 | 134.26 |
2022/3連 | 674 | 33.20 |
2023/3連 | 989 | 46.74 |
2024/3連 | 2357 | 138.32 |
2025/3連予 | 4033 | 71.11 |
2024年度には大幅な売上成長(138.32%)が見られ、予想では2025年度にも引き続き成長が期待されています(71.11%)
月面着陸には失敗しているものの、着陸直前まで行ったミッションの成果と期待大なミッションだったといえるでしょう。
営業利益
売上はプラスでしたが、営業利益以降は全てマイナスになっています。
ispaceは、次世代ミッション(特にミッション3「APEX1.0ランダー」など)に向けた開発・準備を進めています。これには大規模な技術開発や製造、打上げ準備の費用が必要です。成長フェーズにある企業として、売上よりも投資が優先され、短期的な営業利益の赤字拡大を招いていると考えられます。
2025年度の売上予想は約4,033百万円と大幅な増加が見込まれていますが、売上成長のスピードが投資コストの増加をカバーするにはまだ不十分です。
また、宇宙ビジネス市場では、競争が激化しており、顧客獲得や価格競争に対応するための営業活動費用も増加している可能性があります。
受取保険金
当期のispaceの損益計算書で注目される点が受取保険金です。
特別利益として、約37億円もの保険金を受け取っていることがわかります。
着陸失敗に備えて「月保険」なるものを契約しており、それに基づいて約37億円の保険を受け取ったとのことです。
金額もさることながら「月保険」なるものが存在していたことにも驚きなのだ!
宇宙ビジネスそのものも動き始めているけど、それに伴って、宇宙ビジネス周辺の事業もいろいろと登場しているのだ!
「月保険」は三井住友海上との契約であり、そもそもispaceと三井住友海上が共同で開発した保険でした。この保険金を受け取るために支払った保険料は未公表とのことです。保険会社にとってもリスクの高い保険でしょうから、利益目的ではなく宇宙ビジネスに関係しているという広告宣伝の意味も込めての保険商品なのでしょう。
ispaceにとっては、損害を補償するための保険なので、成功していたらこれを上回る売上が計上されると予測できるので、一気に売上の金額が跳ね上がったことでしょう。
研究開発費
最後に、研究開発費について見ておきます。損益計算書の販売費及び一般管理費に、研究開発費として約22億円が計上されています。
販売費及び一般管理費全体の金額が約39億円なので、販売費及び一般管理費の半分以上が研究開発費ということになります。
研究開発活動に多額の資金を要するというのも、宇宙ビジネスの特徴なのだ!
バランスシート(貸借対照表)はどうなっている?
宇宙ビジネスのように莫大な資金が必要かつ、すぐにお金になりづらいビジネスについては、会社のバランスシートの方が重要かもしれません。
流動比率
まず流動比率は約248%あるので、短期的な支払い能力には問題がなさそうです。
一般的に流動比率は100%あればまず大丈夫、120%くらいが上場企業の平均、150%もあれば理想的と言われるので、ispaceの248%は素晴らしいです。
固定比率
次に固定比率は約111.8%となり、固定資産を自己資本だけで十分賄えていることがわかります。
固定資産を自己資本だけで賄えることが理想的とされますが、実際にそれができている企業はわずかな優良企業だけです。固定比率が約111.8%というのは、固定資産を自己資本だけでは賄えていないことになります。
自己資本よりも固定資産の額が多ければ、固定比率は100%を超えるのだ。
これは自己資本で足りない金額を借金で補っていることを表し、財務状況を注視する必要が出てくるのだ。
しかし、固定比率が100%を超えたからといって直ちに会社の財務が危険な状況にあるというわけではないよ。
自己資本比率
そしてもう1つ、自己資本比率は約19%なので、これは低いといえます。
業種によっても異なりますが、一般的には40%以上であれば安全性に問題なしといえ、20%以下となってくると危険水域レベルです。
宇宙関連業界全体で、この水準を調べる必要もあるのだ!
自己資本比率が低いということは、自己資本に比して負債が多いことを意味します。ispaceの資産の約8割は負債です。一般的に考えると、もう少し負債を減らして自己資本を増やせれば良いところですが、宇宙ビジネスのスタートアップ企業という特殊な業態を考慮すると、負債が大きくなるのはある程度仕方のないことです。
増減分析
最後に前期末からの増減分析を行ってみます。
増減分析を行うことによって、当期中にどのような変化があったかを知ることができます。大きく増減した項目をピックアップしてみると、
資産の部
前渡金や有形固定資産の増加は、次期ミッション準備に伴う先行投資や設備取得を示します。これにより、事業遂行能力が強化されていますが、キャッシュフローの消費を引き起こしています。
また、流動性資産の減少は、営業活動や投資活動に伴う資金消費を反映しています。ただし、引出制限付預金の増加は、将来の計画的な支出を視野に入れた準備を示唆しています。
- 流動資産
- 現金及び預金:
約11.6億円減少(14,315,411 → 13,153,729)。事業運営や投資活動に伴う現金消費が要因。 - 引出制限付預金:
約3.4億円増加(2,517,482 → 2,858,992)。将来のミッション費用など特定用途の資金が増加した可能性。 - 前渡金:
約13.9億円増加(4,228,814 → 5,622,105)。次期ミッション準備に関連する先行投資や契約費用の増加を反映。
- 現金及び預金:
- 固定資産
- 有形固定資産:
約10億円増加(2,462,819 → 3,480,697)。設備投資やミッション関連資産の取得を反映。 - 無形固定資産:
約0.3億円増加(72,634 → 104,197)。研究開発費や特許関連資産の増加が推測される。 - 長期前渡金:
約2.5億円減少(2,560,754 → 2,310,282)。先行投資が進展し、資産計上された可能性。
- 有形固定資産:
負債の部
短期借入金の返済が進んでいる一方で、長期借入金の増加が見られます。これは、財務負担を短期から長期に分散し、キャッシュフローの安定化を図る戦略と考えられます。
また、顧客からの前受金が増加していることは、次期ミッションに向けた契約が進行中であることを示します。
- 流動負債
- 短期借入金:
約17億円減少(5,980,000 → 4,253,210)。短期借入金の返済が進行。 - 契約負債:
約5.7億円増加(3,190,172 → 3,758,565)。顧客からの前受金が増加し、契約進捗を反映。
- 短期借入金:
- 固定負債
- 長期借入金:
約73億円増加(6,538,241 → 13,830,666)。ミッションや設備投資の資金調達が要因。
- 長期借入金:
純資産の部
営業損失の継続が大きな影響を与えています。この段階では成長投資を優先しており、赤字拡大は想定内の現象といえます。
外貨建て資産の評価額が増加したことで、純資産の一部を補填しています。為替の影響が財務に与える影響を考慮する必要があります。
- 利益剰余金:
約64億円減少(△4,982,563 → △11,374,137)。営業損失の拡大が主因。 - 為替換算調整勘定:
約20億円増加(△731,024 → 1,273,445)。為替相場の影響により、外貨建て資産や負債の価値が増加。
ispaceの目標株価は?
さて、ここまでの情報を踏まえて株の評価をしていきます。
しかし、宇宙ビジネスの株価を算出することが果たして現状意味のあることなのか等考えると、あまり意味がなさそうなのと、不確定要素が多いので正確性にかけると思いますが、参考までに算出していきます。
これまでの売上高成長率の評価
成長率の評価では、過去の業績データと質的評価を組み合わせて、算出しました。
平均売上高成長率は 84.73%(過去の急成長も反映)。
成長率の分散は、19.22%(過去の急成長も反映)。
質的評価の反映
質的評価では、次の要因をスコアリングし、今後期待される新たな成長率を算出しました。
- 新規事業や製品開発(スコア:4/5)
- 新しい事業の市場性、技術革新の可能性、導入時期。ispaceが進める月面探査ミッションやスポンサー収益モデル。
- 外部環境の影響(スコア:2/5)
- 宇宙産業の成長期待に対する国際的な政策支援(アルテミス計画など)。
- 競争優位性(スコア:4/5)
- ispaceの軽量月面探査車や技術革新によるコスト競争力。
質的スコア(MAXは1)= 0.667
成長期待
過去の平均成長率、質的スコア、成長のばらつき(分散)を考慮し、成長期待は、
成長期待 = 232.17%
これらの数字から独自に算出した目標株価は、
目標株価:約1,932円
評価と考察
宇宙産業ということでの期待も含めていますが、大きな赤字を伴う営業利益率や負のPERが結果に影響しており、リスクの高い投資であることは間違い無いでしょう。成長期待は高いものの、実現性は不確実性を伴うため、リスク評価を併せて行う必要があります。
しかし、しっかり月面着陸が成功したり、宇宙データ活用等が進んでいけば、現在の事業規模から約2.32倍に成長する可能性は大いにあると思います。
まとめ ispace
株式会社ispaceは、宇宙ビジネス市場における成長期待が高い企業で、月面探査や輸送サービス、データサービスを軸とした多角的なビジネスモデルが注目されています。
現時点での株価は、目標株価と比較して割安感がある可能性があり、中長期投資の視点で魅力的なポテンシャルを秘めています。ただし、宇宙産業特有のリスクや競争環境も慎重に見極める必要があります。
現時点での評価を収益性や成長性の観点からしてみました。
目標株価:1,932円
- 短期的な懸念:
- 赤字経営の継続:
営業利益率が大幅にマイナスであることから、短期的な収益改善は難しい状況です。特に、2025年度にはさらに営業損失が拡大する見込みです。 - ミッション成功の不確実性:
宇宙ビジネスの特性上、技術的な失敗やスケジュール遅延が発生する可能性があります。成功が事業収益の前提条件であるため、このリスクは無視できません。
- 赤字経営の継続:
- 中長期的な期待:
- 成長市場への参入:
宇宙関連市場の成長は世界的なトレンドであり、NASAのアルテミス計画や日本政府の宇宙戦略基金の拡充など、強力な外部支援が後押ししています。 - 高い成長期待:
修正成長率は232.17%と評価されており、ispaceが新規事業やスポンサー収益の拡大を通じて売上を大幅に伸ばす可能性があります。 - 事業モデルの多様性:
輸送サービス、データ提供、スポンサーシップなど、複数の収益源を持つビジネスモデルは、長期的な収益安定性に寄与します。
- 成長市場への参入:
ispaceは、事業の進捗や技術的な成功が株価に大きく影響する「高リスク・高リターン」の投資対象です。
投資は自己責任で行ってください。最新のIR情報や市場データを活用し、慎重な判断を心掛けましょう!
マネーチャットでは、投資の超初心者から中級者の方が一緒に意見や情報交換したり、研究するグループを運営しています!
一緒に株や資産運用、経済について語ろう!
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