今世紀に入ってから、中央アジア全域では健康分野が大きく進歩しました。
男性の平均寿命は5.2年延びて70.3年、女性は4年延びて76.2年になりました。さらに、妊産婦死亡率は過去20年間で半減し、2000年の10万人あたり49人から2017年には24人にまで減少しています。
今回は、健康への投資がもたらす経済効果について解説いたします!
健康への投資がもたらす経済効果
健康への投資は、社会の発展において重要な役割を果たします。ヘルスケア部門は経済成長を促進する重要な分野であり、雇用の創出にも貢献します。
特に中央アジアのような経済発展途上の地域では、医療分野に対する投資が大きな経済効果をもたらします。
中央アジア(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)は、非常に大きな潜在力を持つ地域です。人口8,000万人のうち、約半数が30歳以下。また、この地域はヨーロッパとアジアの経済大国をつなぐ架け橋となっています。2024年、この5カ国のGDP成長率は4.1%と見込まれており、これは世界平均の2.6%を大きく上回り、ヨーロッパ地域の他のどの地域よりも高い数値です。(WORLD ECONOMIC FORUM)
例えば、WHO(世界保健機関)の調査によると、GDPのわずか0.1%を社会保護や労働市場政策、住宅支援に投入することで、中央アジアの人口約8,000万人のうち30万人の生活を4年以内に改善することができるとしています。また、幼児期の健康への投資は教育水準や雇用機会を向上させ、その経済的なリターンは最大で8倍にもなると言われています。
中央アジアの具体的な健康課題
中央アジアでは、まだ多くの健康課題に直面しています。
その一例が多剤耐性結核(MDR-TB)です。この地域では、毎年3万4,000人以上が結核と診断され、8,000人以上が多剤耐性結核を抱えています。
しかし、WHOの支援により、各国は新しい経口治療法を導入し、患者は自宅で治療を受けられるようになっています。これにより、患者は社会から隔離されることなく、家族と共に生活を続けられ、より早く回復することができます。
さらに、気候変動も健康課題に影響を及ぼしています。洪水や高温、氷河の融解などの異常気象は、毎年中央アジア諸国に100億ドルの被害をもたらし、約300万人の人々に影響を与えています。これに伴う健康問題として、安全な水へのアクセスの困難、食糧不足、大気汚染による呼吸器疾患などが挙げられます。
健康への投資の広がりと持続的な未来
健康とウェルビーイングに関する投資は、地域全体の持続的な発展を支えるものです。気候変動に強いインフラ整備や、水・衛生設備の改善、化学物質の管理強化などは、健康面だけでなく経済成長や雇用創出にもつながります。
2年前、中央アジアの保健大臣たちは、結核対策や健康的な環境づくりなど11の分野での協力を強化することで合意しました。この合意を実現するための指針が「中央アジアにおける健康と福祉のためのロードマップ」です。このロードマップは、各国の強みを活かし、地域全体の利益を促進するための具体的な行動計画です。
今後の展望と期待|健康への投資
2024年6月26日から27日にかけて、WHO欧州地域事務局とキルギス保健省が共催する「中央アジア国際保健投資フォーラム」が開催されました。このフォーラムでは、各国の政策担当者や投資家が一堂に会し、健康分野への投資の重要性を議論します。フォーラムの主な目的は、中央アジア全域の経済発展、社会的結束、そして持続可能な開発の基盤を構築することです。
健康への投資は、単なる経済的利益を超えて、人々の生活の質を向上させ、社会全体の幸福度を高める重要な手段です。中央アジアの将来のために、ヘルスケア分野への持続的な投資が求められています。