健康の公平性を改善 – 都市が果たす役割

社会的に弱い立場にある人々の健康を守り、健康の公平性を改善するためには、健康に影響を与える社会的要因に取り組むことが必要です。

実は、健康に影響を与える要因のうち、医療が占める割合はわずか10〜20%に過ぎず、教育や所得などの社会的要因が80〜90%を占めています

特に都市部では、近隣環境やインフラ、職場や学校のアクセスなどが健康に大きく影響を与えます。世界の人口の56%は都市に住んでおり都市は健康の格差解消に重要な役割を担っています。都市が提供する機会や環境は、住民の生活に直接影響するため、これをうまく活用することが必要です。

つまり、十分なサービスを受けていない人々がよりよいサービスへアクセスできるよう、健康アウトカムの良し悪しが生じる真の要因を特定することが重要です。

目次

データ活用による都市政策の改善

健康に関する課題を解決するには、データを活用したアプローチが重要です。

ニューヨーク市では、2019年以降、市民の平均寿命が82.6歳から78歳に低下しました。健康格差があるとは、近隣の郵便番号区域に居住する集団間で平均余命の差が10年あることを意味します。

最初のデータ分析では、市内居住者の心血管疾患リスクと、高等教育、通勤時間、健康保険の有無、賃貸料、インターネットアクセスなどの社会的決定要因との間に強い相関関係があることが明らかになりました。

ニューヨーク市では「HealthyNYC」キャンペーンを実施し、心臓病や糖尿病といった非感染性疾患の要因をデータで分析しています。この取り組みは、健康保険の有無や通勤時間、教育レベルなどの社会的要因と健康リスクとの相関関係を明らかにし、効果的な対策を立てるための指針となっています。

ノバルティス財団が進める「AI4HealthyCities」プロジェクトは、AIを使って非臨床的な要因を分析し、都市がどのように健康アウトカムを改善できるかを明らかにする取り組みです。このプロジェクトに参加する都市は、データを活用して具体的な健康改善策を導入し、その効果を評価しています。

重要なのは、ニューヨーク市で試行されているように、モデルを利用して特定の介入策、例えば、運動促進や肥満対策のための公衆衛生キャンペーン、低所得世帯のインターネットアクセス強化、緑地への公共アクセス改善などの、影響やコスト削減を予測できることです。

これまでは、特定の状況や集団に対して健康への影響を最大化するために、どのような要因の組み合わせに取り組むべきかを示唆する包括的なエビデンスに基づくデータは存在しませんでした。

ボゴタの「ケア・ブロック」

コロンビアの首都ボゴタでは、介護の負担が女性に偏っていることが大きな課題です。

女性の1/3(120万人の女性)が無報酬で介護を行い、多くが低所得の状況に置かれています。介護対象者に全面的に依存されているため、家を出ることができず、いわゆる「時間の貧困」に陥っています。

彼女たちは、街で最も弱い立場に置かれています。その90%は低所得で、70%は中等教育を受けておらず、33%がセルフケアのための自由な時間を奪われ、経済的に自立している割合はゼロです。

しかし、もし賃金が支払われれば、このような女性たちはボゴタ市のGDPの13%コロンビアのGDPの20%を占めるようになるでしょう。一方、25万人以上の女性たちが、ほとんどが自分たちの力ではどうすることもできない理由で病気になり、苦しんでいます。

そこでボゴタ市は「ケア・ブロック」という取り組みを導入しました。この区域では、介護者が必要とする支援や教育、心理的サポート、無料のランドリーサービスなどが提供されています。

介護の負担のために120万人の女性が、重要なサービスにアクセスするために家を出ることができないのであれば、当局は代わりに街とそのサービスを彼女たちに提供しなければならないと考えたのです。

WORLD ECONOMIC FORUM

「ケア・ブロック」は、自宅から15〜20分以内でアクセスできる場所に設置されており、女性たちが日常の介護負担を減らし、自立への第一歩を踏み出せるよう設計されています。現在、ボゴタには21のケア・ブロックがあり、2035年までにさらに45カ所を増やす計画です。

まとめ|都市が果たす役割

都市は健康の公平性に関わる問題の原因と見なされがちですが、その一方で解決の場でもあります。

データを活用し、近接性と密度をうまく活かすことで、都市は社会的に脆弱な人々の健康を守り、格差を縮小するための有力な手段を提供できます。こうした取り組みによって、都市は単なる居住地以上の役割を果たし、住民全体の健康と幸福を支える基盤となるのです。

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この記事を書いた人

株式会社シュタインズ

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