投資や資産運用において、人はしばしば非合理的な行動をとります。それを引き起こすのが「心理バイアス」です。連載第1回では、この心理バイアスの基本と投資行動への影響について解説します。
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行動ファイナンスとは?
行動ファイナンスとは、人がお金に関して合理的ではない行動をとる理由を解明する学問です。この分野を広く知らしめたのが、ダニエル・カーネマン氏の研究です。彼は2002年、ノーベル経済学賞を受賞しました。その研究は、特に金融や投資の世界で注目され、現在でも個人投資家の行動を分析する重要な基盤となっています。
カーネマン氏の研究をきっかけに、多くの心理学者が「人が持つ心理的なバイアスが、なぜ合理的でない投資行動を引き起こすのか」を追究してきました。
代表的な12の心理バイアス
人が陥りやすい代表的な心理バイアスを以下にまとめます。これらは、投資行動に大きな影響を与えるものです。
- 自信過剰:自分の投資判断に過度な自信を持ち、無駄に取引を増やしてしまう。
- 後悔回避:損切りを恐れ、悪化した状況から抜け出せない。
- 損失回避:利益よりも損失の方が心理的な重みを持つため、損を過剰に恐れる。
- メンタルアカウント:お金を用途別に分けて考え、全体の最適化を損なう。
- 主観確率:低確率の出来事を過大評価してしまう(宝くじや災害の例など)。
- 決定麻痺:選択肢が多すぎると決断できなくなる。
- 群集心理:自分の意思ではなく、他人の意見に流される。
- 保有効果:保有する資産を過剰に高く評価し、手放せなくなる。
- アンカリング:無関係な数字に影響を受ける(過去の高値が忘れられないなど)。
- 認知的不協和:自分の判断に反する情報を無視し、都合の良い解釈をする。
- 現状維持:変化を恐れ、合理的な選択肢を見逃してしまう。
- 双曲割引:目先の利益にとらわれ、長期的な目標を犠牲にしてしまう。
なぜ人は非合理的な行動をするのか?
これらの心理バイアスの多くは、「2重過程モデル」によって説明されます。このモデルでは、人の判断には次の2つのプロセスがあるとされています。
- 熟慮的判断:時間をかけて考え、合理的に行う判断。
- 直感的判断:瞬間的に反応する判断で、多くの心理バイアスがここに起因します。
投資では、多くの場合「直感的判断」が先行しやすく、その結果として非合理的な行動を取ってしまいます。
バイアスを克服するためには
人が非合理的な行動を完全に避けるのは難しいですが、以下のような工夫で影響を軽減することが可能です:
- 客観的な基準を持つ
事前にルールを設定しておくことで、感情に流されにくくなります。例:「損失が10%を超えたら自動で売却する」。 - 投資を仕組み化する
定期積立投資やロボアドバイザーを活用することで、感情的な判断を排除できます。 - 第三者の意見を参考にする
信頼できる専門家の助言を求めたり、過去のデータを参考にすることで冷静な判断ができます。 - 教育で理解を深める
バイアスを理解することで、自分の行動を見直すきっかけになります。例えば「損失回避」の性質を知れば、リスク許容度を再考する助けになります。
まとめ 合理性と心理バイアス
心理バイアスは、投資行動における大きな障壁です。特に「直感的判断」によるミスを防ぐためには、自分のバイアスを理解し、それに対処するための仕組みを作ることが重要です。