LEMONADE | AIと行動経済学で進化する保険ビジネス

保険はもともと相互扶助の理念に基づくものですが、「お得な保険」や「元が取れるか」など、損得勘定で話されることがあります。これは、日本では保険に貯蓄の要素もあるためかもしれません。

そんな中、アメリカの保険会社で、契約者と保険会社が損得勘定なしに協力し、コミュニティ全体で機能する事例が登場しています。これに触発され、新しい保険ビジネスの可能性を見出した企業があります。それが「LEMONADE」です。

そこで今回は、AIと行動経済学を活用したビジネスについて紹介いたします!

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目次

AI活用で新しい保険体験

Lemonadeは、2015年にダニエル・シュライバーとシャイ・ウィニンガーによって設立されました。

彼らは保険業界とは無縁のバックグラウンドを持ち、従来の保険のあり方に疑問を抱き、社会に本当に必要な形で保険を提供しようとするスタートアップ企業です。

Lemonadeの保険サービスは、独自のAIテクノロジーを駆使しています。契約から保険金の支払いまでの手続きは、すべてWEBやアプリで行える仕組みです。

加入手続きでは、チャットボットが質問し、「Yes」や「No」で回答することで保険料が算定されます。その後のカスタマーサービスにおけるクレーム処理や保険金の手続きも、チャットボットが対応することで、人件費を削減できます。

さらに、インターネットがあれば気軽に始められ、シンプルで直感的なUIデザインから、スマートフォン世代の若者を中心に急速にユーザー数を増やしています。2020年末には100万人以上の顧客数を突破し、累計で4.815億ドルを調達し、株式上場も果たしました。

また、虚偽の評価や保険金の詐欺を防ぐためのアルゴリズムも開発しています。これにより、しっかりとしたコストダウンが実現され、通常の損害保険よりも格段に安い料金が設定されています。たとえば、賃貸住宅の損害保険が月額5ドルといった具体例もあります。

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行動経済学を活用した「ソーシャルインシュランス」

Lemonadeが若者に受け入れられている理由は、テクノロジーだけでなく、その独自のビジネスモデルにあります。特にZ世代と呼ばれる若い世代に好評なのは、Lemonadeのビジネスモデルが魅力的だからです。

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従来の損害保険ビジネスは、契約者から集めたお金をまとめてプールし、それを運用して利益を上げるという形態でした。保険会社は契約者のお金で運用し、その利益が保険会社の収益の源となり、契約者とはある種の利益相反の関係になっていました。

Lemonadeは、この課題を解消し、「保険をかける」という行為をよりポジティブで意味のある「ソーシャルインシュランス」という概念に変え、社会貢献に繋がる仕組みに再構築しました。

具体的な仕組みは次の通りです。まず、加入者が支払った保険料の25%は運営費用や再保険に充てられ、残りの75%が保険金支払いのためにプールされます。契約者の一部の損失に対して支払われ、残った分は契約者が指定した寄付先に寄付されます。これにより、契約者は通常の保険商品にあった未請求の損失感から解放されるのです。

Lemonadeは2019年には、ユニセフ経由で子どもたちへの食糧支援や安全な水の提供、虐待を受けた子どもへのサポート、五大湖のプラスチッククリーンアップなど、26の団体に総額63万ドルを寄付しました。

この社会貢献の仕組みにより、Lemonadeはアメリカで「B-Corp」として認定され、社会的なパフォーマンス、説明責任、透明性などの基準を満たしています。

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保険業の在り方を変える新しい世界観

行動経済学の視点から注目されるのは、保険金を支払って残ったお金が保険会社の利益や内部留保になるのではなく、顧客が加入時に選んだチャリティに寄付されるという点です。レモネード社は、ピザを分けるイラストを使って、自社が受け取る手数料は掛け金の一律20%で、残りのお金は素早く保険金として支払われ、余ったお金は寄付されると表現しています。

https://www.lemonade.com/

文章の中で「保険料はあなたたちのお金で、自分たち(会社)のお金ではない」という表現が印象的です。

寄付に回すことで、顧客からの不正な請求も減り、結果的にコストが低減されます。同時に、自分が他人の役に立っているという「意味づけ」の効果もあり、顧客のモチベーションを向上させ、不正な行動を抑制する効果が期待できます。

これによって、私たち顧客は、「自分のリスクに対する備えだけでなく、社会貢献の一環として寄付を選ぶ」という体験を得られるのだと思います。まさに加入時に感じることのできるユニークなUX(ユーザーエクスペリエンス)と言えるでしょう。

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AIが保険を提案

日本では、保険の内容にこだわりがあり、それがAI(ボット)による提案で実現しています。レモネード社の保険内容を見てみると、全てがAIによるチャットボット(自動対話システム)のやりとりで、住所を入れないと進めないようになっています。通常、日本では様々なプランを比較してから選ぶのが一般的ですが、これがスマートフォン世代には手間に感じられるかもしれません。

AIとのやりとりは、通常のコールセンターの対話と同じ感覚で、非常に明るい印象です。AIはリスク分析や保険プランの内容や価格設定も担当し、住所などのデータを入力し、いくつかの質問に答えると、自動的にプランが提案されます。

ただし、AIに対して通常の営業担当者と面談した際にできるような質問や、内容の一部変更の希望などの調整がどこまでできるかは不明です。保障内容の説明は、従来の保険会社が最も気を遣ってきた部分であり、ここを簡略化する姿勢を見せています。

しかし、このスマートなやりとりがスマートフォン世代に好評を得そうです。AIによって提案されたプランに同意すれば、加入手続きは90秒で終了するとのこと。また、請求手続きも3分と謳われています。

このように、スマートフォン世代向けにUI(ユーザーインターフェイス)やUX(ユーザーエクスペリエンス)を大切にし、保障内容の説明や納得感については、会社の理念や姿勢で判断してもらうスタンスを取っています。

寄付先に選んだテーマごとにSNSがある

寄付のテーマごとにSNSがあり、防犯や防災、コミュニティの機能が活かされます。90秒で加入でき、3分で支払われるのは非常にわかりやすいです。寄付の仕組みがあるため、請求して元を取ろうという気持ちにならず、「私も仲間入りして、何かあったときは皆で助け合おう」というモードになれるのは、行動経済学の効果です。

自分が寄付先に選んだテーマ(貧困支援、病児支援、女性支援など)ごとにSNSがあります。お互いに事故や損害に合わないように情報交換しているというのです。これにより、保険の支払いが減れば寄付に回るという大義名分が整い、保険会社も契約者も利益相反が起きずに、1つの方向に向かうことができます。非常に良いシステムだと感じました。

また、目的や興味が明確な社会貢献コミュニティがあると、仲間意識も強くなるので、解約や脱退なども減るのではないかと予想されます。これも、経営が長期的に安定する大きなファクターと言えます。

まとめ

私の知る限り、日本の企業や組織で、ここまで「AI活用+行動経済学」が組み合わさって機能している例はありません。

AIの活用は主にコストダウンや収益アップにつながるはずの領域で行われますが、それによって得られたコスト削減の余力をどこに投資するかが重要な判断ポイントです。

人間の動機づけメカニズムなどを科学的に理解した上で考案されたビジネスモデルや商品ラインナップ、そしてそのプロセスは、他社が容易に真似できない強みを持ち、最終的には顧客の満足度と継続利用につながります。

イノベーションを起こすには、しばしばビジネスモデルの変革が求められますが、その際に不可欠なのがAIと行動経済学の活用です。

AIを導入する企業は、単なる局地的な導入だけでなく、未来を見越した戦略を練ることが重要です。

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この記事を書いた人

株式会社シュタインズ
「テクノロジー×教育の研究開発」を事業の基盤に、現在は金融教育サービス事業「Moneychat(http://moneychat.life/)」の企画と開発を進める。

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