突然ですが、あなたは財務レバレッジという言葉を聞いたことがありますか?
財務レバレッジとは、借入金などの固定費を増やして自己資本を減らすことで、経営の収益性を高めることを指します。
財務レバレッジを使うと、自己資本に対する利益率(ROE)が上がりますが、同時に借入金に対する利息負担も増えます。つまり、財務レバレッジはリスクとリターンの両面を持つ戦略なのです。
ROEがまだわからない!という方のために、ROEについて解説していますので、ぜひ目を通してください!
この記事では、財務レバレッジについて詳しく説明し、メリットやデメリット、計算式から経営の収益性を解説します。
財務レバレッジを使う際に注意すべき点や、実際の事例も紹介します。財務レバレッジを理解することで、経営者や投資家はより効果的な資金運用や投資判断ができるようになるでしょう。
・財務レバレッジに関する基礎知識
・「財務レバレッジを使う際に注意すべき点
・財務レバレッジの実際の使い方
・財務レバレッジのメリットやデメリット
・財務レバレッジの計算式
財務レバレッジとは
財務レバレッジとは、借入金などの固定費を増やして自己資本を減らすことで、経営の収益性を高めることを指します。
具体的には、主に3つの方法で行われます。
- 借入金や社債などの外部資金を調達して事業に投資する
- 自己資本の一部を株主に配当するか、自社株買いなどで減らす
- M&Aなどで他社の株式を取得する
これらの方法で自己資本比率(自己資本÷総資産)が低下し、固定費比率(固定費÷売上高)が上昇します。
これにより、売上高が増えると利益が大きく増えますが、逆に売上高が減ると利益が大きく減ります。このように、売上高の変動に対する利益の変動率を表す指標が財務レバレッジです。
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財務レバレッジのメリット
財務レバレッジのメリットは、自己資本に対する利益率(ROE)が上がることです。
純利益が同じでも自己資本が少なければ少ないほどROEは高くなります。つまり、自己資本を減らして借入金などの固定費を増やすことで、ROEを高めることができます。ROEは経営の効率性や収益性を表す重要な指標なので、財務レバレッジを使って高めることは経営者や投資家にとって魅力的です。
また、財務レバレッジを使うことで、次のようなメリットもあります。
- 外部資金の利息は税引前に経費として計上できるので、税負担が軽減される
- 外部資金の調達は自己資本の増加よりも簡単で早いので、事業拡大やM&Aなどに柔軟に対応できる
- 自己資本の減少は株式の希少性を高めるので、株価が上昇する可能性がある
財務レバレッジのデメリット
財務レバレッジのデメリットは、借入金などの固定費が増えることで、経営のリスクが高まることです。
固定費が増えると、売上高が減少した場合に利益が急激に減少し、赤字に陥る可能性が高くなります。また、借入金が多くなると、返済能力や信用力が低下し、金利が上昇する可能性もあります。さらに、自己資本比率が低下すると、株主からの信頼や評価が低くなり、株価が下落する可能性もあります。
したがって、財務レバレッジを使う際には、次のような点に注意する必要があります。
- 借入金などの固定費は売上高や利益に見合った水準に抑える
- 借入金の返済計画やキャッシュフロー管理をしっかり行う
- 自己資本比率や信用格付けなどの経営指標を適切に維持する
- 株主への配当や自社株買いなどの資本政策をバランスよく行う
財務レバレッジが高いときは危ない?
財務レバレッジが高くなればなるほど、総資産に対して他人資本の割合が高くなっていることを示します。
財務レバレッジが高くなりすぎると、会社の経営は、借入金や社債などの返済や、利息の支払いに圧迫されている可能性があります。
逆に、財務レバレッジが低いほど、総資産に対する自己資本の割合が高く、総資産の多くが返済義務のない自己資本によって賄われていることになります。
ただし、財務レバレッジが低いから優良企業かというと、一概にそうとは言えません。
例えば、財務レバレッジが「1倍」の会社は、自己資本だけで経営している会社です。
自己資本のみで運営されているということは、積極的な経営を行っていない会社だという判断も取れます。財務レバレッジだけで優良企業かどうかを判断せず、会社の経営姿勢なども併せて見ていく必要があります。
会社が成長するためには、常に変化していく市場に対して、自社の体制や生産性、システムなどを適応させていく必要があります。
自己資本だけで対応できるのは、資金力が極端に強い一部の企業だけであり、通常は借入金や社債などの他人資本の導入が必要です。もし、収益性を見込めるのであれば、他人資本を投入して、財務レバレッジを高くすることも経営手段としては有効になります。
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財務レバレッジの計算式
財務レバレッジは以下の式で計算できます。
財務レバレッジ=営業利益売上高÷純利益営業利益
この式は以下のように理解できます。
- 分子は営業レバレッジと呼ばれ、売上高に対する営業利益の変動率を表します。営業レバレッジは固定経費比率(固定経費÷売上高)に影響されます。固定経費比率が高いほど営業レバレッジは大きくなります。
- 分母は税引前利益率と呼ばれ、営業利益に対する純利益(税引前利益)の変動率を表します。税引前利益率は変動経費比率(変動経費÷売上高)や固定費比率(固定費÷売上高)に影響されます。
- 固定費比率は借入金などの固定費に影響されます。固定費比率が高いほど税引前利益率は低くなります。
したがって、財務レバレッジは営業レバレッジと税引前利益率の比率で表されます。営業レバレッジが高くて税引前利益率が低いほど、財務レバレッジは大きくなります。逆に、営業レバレッジが低くて税引前利益率が高いほど、財務レバレッジは小さくなります。
財務レバレッジの事例
財務レバレッジを使って経営の収益性を高めた事例として、以下のようなものがあります。
- アップル社は2000年代後半から自社株買いを積極的に行い、自己資本を減らしてROEを高めました。自社株買いは株式の希少性を高めるとともに、株主への還元として評価されました。アップル社は自社株買いを行う一方で、事業拡大や研究開発に投資するために外部資金を調達しました。しかし、アップル社の場合、外部資金の利息負担は純利益に対して非常に小さく、財務リスクは低いと言えます。
- ソフトバンクグループは2000年代からM&Aを繰り返し、他社の株式を取得することで自己資本比率を低下させました。M&Aによってグループの規模や収益性を拡大することで、ROEを高める戦略を採りました。ソフトバンクグループはM&Aに伴って多額の借入金を抱えましたが、その一部は取得した他社のキャッシュフローで返済できると考えました。しかし、ソフトバンクグループの場合、借入金の返済能力や信用力が低下し、金利が上昇するリスクがあります。
財務レバレッジを具体的な例で解説
例えば、A社、B社、C社の総資本は1,000億円としましょう。
A社は全額株主資本、B社は総資本のうち250億円を借入で調達、C社は総資本のうち500億円を借入で調達しています。
3社のROA(総資本利益率のことで、下記例では「営業利益/総資本×100」で算出)を10%、支払利息率を4%、税率を40%とし、その他の条件は考慮しないこととします。
そうすると、3社のROE(株主資本利益率のことで、下記例では「税引き後当期利益/純資産×100」で算出しています)は以下のようになります。
A社 | B社 | C社 | |
総資本 | 1,000 | 1,000 | 1,000 |
---|---|---|---|
借入 | 0 | 250 | 500 |
純資産 | 1,000 | 750 | 500 |
自己資本比率 | 100% | 75% | 50% |
営業利益 | 100 | 100 | 100 |
支払利息 | 0 | 10 | 20 |
経常利益 | 100 | 90 | 80 |
税金 | 40 | 36 | 32 |
税引き後利益 | 60 | 54 | 48 |
ROE | 6% | 7.2% | 9.6% |
ROEだけを見てみるとC社がもっとも高くなりました。どのようなケースにおいても上の例のような結果、すなわち借入が多いほどROEは高くなるのでしょうか?
では、景気が悪化するとして、ROAを3%にして計算し直してみましょう。
A社 | B社 | C社 | |
総資本 | 1,000 | 1,000 | 1,000 |
---|---|---|---|
借入 | 0 | 250 | 500 |
純資産 | 1,000 | 750 | 500 |
自己資本比率 | 100% | 75% | 50% |
営業利益 | 30 | 30 | 30 |
支払利息 | 0 | 10 | 20 |
経常利益 | 30 | 20 | 10 |
税金 | 12 | 8 | 4 |
税引き後利益 | 18 | 12 | 6 |
ROE | 1.8% | 1.6% | 1.2% |
この例では、A社のROEがもっとも高くなりました。
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まとめ 財務レバレッジ
財務レバレッジとは、借入金などの固定費を増やして自己資本を減らすことで、経営の収益性を高めることを指します。財務レバレッジを使うと、自己資本に対する利益率(ROE)が上がりますが、同時に借入金に対する利息負担も増えます。つまり、財務レバレッジはリスクとリターンの両面を持つ戦略なのです。
財務レバレッジは営業レバレッジと税引前利益率の比率で表されます。営業レバレッジが高くて税引前利益率が低いほど、財務レバレッジは大きくなります。逆に、営業レバレッジが低くて税引前利益率が高いほど、財務レバレッジは小さくなります。
財務レバレッジを使う際には、借入金などの固定費が売上高や利益に見合った水準に抑えることや、借入金の返済計画やキャッシュフロー管理をしっかり行うことなどに注意する必要があります。財務レバレッジを理解することで、経営者や投資家はより効果的な資金運用や投資判断ができるようになるでしょう。
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