タバコと幸福度の関係について、こんなニュースが取り上げられています。
そのニュースによると『タバコを吸わない人のほうが幸福感が大きい』ようです。
元となった研究は、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の研究です。Andrew Stickley氏らは、旧ソ連の9ヵ国のデータを使用し、男性の喫煙率と喫煙関連死亡率の高い集団において、喫煙やニコチン依存と幸福感との関連について検討しました。
・非喫煙者と元喫煙者はともに、現喫煙者よりも幸福度が優位に高かった。
・ニコチン依存度が高い喫煙者は、依存度が低い喫煙者より幸福感が優位に低かった。
喫煙者は、一時的なストレス解消のためにお金や幸福度を失い、将来の健康までも犠牲にしているとも言えるかもしれません。
合理的中毒モデル|タバコと経済学
合理的中毒モデルというものがあります。
ノーベル経済学賞受賞者のゲーリー・ベッカーがマーフィーとともに、1988年に出版した、経済学分野以外でも有名な論文で提唱されました。
これは、「タバコや麻薬のような中毒財を消費するのも合理的選択である場合がありうる」というものです。
害であることをわかっていても中毒財を消費することのほうが満足度が大きいので、中毒財を選択するのです。
合理的中毒は、本人にとってトータルで大きな満足をもたらすので、正しい選択と言えます。したがって、中毒にかかることを制限・邪魔することはよくないことです。
しかし、2005年に出版されたMITの経済学者・ジョナサン・グルーバー教授らの論文は、タバコ税の引き上げによって、人々が幸福になったことを見出しました。もし合理的中毒であれば、タバコ税の増税で、喫煙コストが増えることは、必ず幸福感を減らすはずです。
しかしそうではなく、双曲割引のために、現在の誘惑に勝てず吸ってしまってい後悔している人であれば、タバコ税の引き上げを、タバコをやめるコミットメントの手段として歓迎するかもしれません。
グルーバーらの論文は、双曲割引を持った非合理的な中毒のほうが多いことを示唆しています。