中国の不動産大手である恒大集団(エバーグランデ)が債務危機に陥っており、中国経済だけでなく世界経済にも深刻な影響を及ぼす可能性が高まっています。
同社は2023年8月17日に米ニューヨークの裁判所に連邦破産法15条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請しました。これは中国の不動産危機が深刻化しており、世界第2位の経済大国への懸念が高まっていることを示しています。
この記事では、エバーグランデの債務危機の原因と現状、そしてその影響について解説します。
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エバーグランデとは何か
エバーグランデは1997年に設立された中国の不動産開発会社です。同社は中国全土で1300を超えるプロジェクトを展開しており、住宅や商業施設、オフィスビルなどを建設・販売しています。また、不動産以外の事業も手掛けており、電気自動車メーカーを傘下に抱えたり、サッカークラブを所有したりしています。
エバーグランデは中国最大級の不動産会社であり、世界でも有数の規模を誇ります。2019年には売上高が約5000億元(約9兆円)、純利益が約570億元(約1兆円)に達しました。同社は香港証券取引所に上場しており、時価総額はピーク時には約4000億元(約7兆円)に達しました。
同社は中国の不動産市場において約4%のシェアを持っており、その規模は中国のGDPの約2%に相当します。
エバーグランデの債務危機の原因
しかし、エバーグランデはその急速な成長の裏で多額の負債を抱えていました。同社は過剰な拡大戦略をとっており、土地や建設資材を買いあさるために多くの借金をしていました。また、資金繰りを改善するために、完成する何年も前から物件を事前に販売しており、その代金で新たなプロジェクトを始めるという自転車操業的な経営を行っていました。
しかし、こうした経営手法は持続可能ではありませんでした。2020年から中国政府は不動産市場の規制強化に乗り出しました。政府は住宅価格の高騰や投機的な需要を抑制するために、「三道紅線」と呼ばれる不動産開発業者へのレバレッジ規制を導入しました。この規制では、不動産開発業者は負債対資本比率(100%以下)、負債対資産比率(70%以下)、現金対短期借入金比率(100%以上)の3つの指標を満たさなければなりません。
エバーグランデはこの規制によって新たな借り入れが制限されることになりました。
この規制強化や、新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減少したことなどから資金繰りに苦しみ始め、2021年9月には2本のドル建て社債(合計8.3億ドル)の利払い期限が迫りましたが、同社は支払い能力がないことを認めました。これにより、同社は事実上デフォルト(債務不履行)状態に陥りました。
エバーグランデの債務危機の現状
同社は2023年8月に米国で連邦破産法15条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請しました。これは米国内の資産を保護するためであり、中国本土での事業運営には直接的な影響はないとされています。
しかし、同社がオフショア(中国本土外)で発行した債券(約190億ドル)については再編計画が提案されました。この計画では、債権者に対して新たな長期債や株式に転換可能な証券と交換することが求められます。これは実質的に大幅な債務減免を意味します。
エバーグランデの債務危機が世界経済に及ぼす影響
エバーグランデの債務危機が世界経済に及ぼす影響は、主に以下の3つの点で考えられます。
- 中国経済への影響
エバーグランデは中国経済において不動産セクターの大手であり、多くの雇用や資金流動性を生み出しています。同社の債務危機が深刻化すれば、同社の従業員や下請け業者、購入者などに多大な損害を与える可能性があります。また、同社の債務危機が他の不動産開発会社にも波及し、不動産市場全体に信用収縮や価格下落を引き起こす恐れもあります。不動産市場は中国経済の約25%を占めるとされるため、その影響は中国経済全体に及ぶ可能性が高いです。 - 金融市場への影響
エバーグランデはオフショアで約190億ドルの債券を発行しており、これらの債券は多くの国際的な投資家や金融機関に保有されています。同社が債務再編計画を実施すれば、これらの債権者は大きな損失を被ることになります。また、同社の債務危機が中国本土での金融システムにも影響を与える可能性があります。同社は中国本土で約2000億ドル(約22兆円)の負債を抱えており、これらの負債は多くの銀行や信託会社などに貸し出されています。同社が返済不能に陥れば、これらの金融機関も資本不足や信用リスクに直面することになります。これは中国本土での金融システムの安定性を損なう恐れがあります。 - 世界経済への影響
エバーグランデの債務危機が中国経済や金融市場に与える影響は、世界経済にも波及する可能性があります。中国は世界第2位の経済大国であり、世界貿易や投資において重要な役割を果たしています。中国経済が減速すれば、中国からの需要や資金流入が減少し、世界経済全体にマイナスの影響を与える可能性があります。また、エバーグランデの債務危機が金融市場にパニックや不安を引き起こすことも考えられます。これは世界的なリスク回避や資産価格の変動を招く可能性があります
まとめ エバーグランデの債務危機
エバーグランデの債務危機は中国経済だけでなく世界経済にも深刻な影響を及ぼす可能性があることが分かりました。同社は多額の負債を抱えており、その返済能力が低下しています。同社の破綻が不動産市場や金融システムに与えるショックやリスクは、中国経済全体に波及する可能性があります。また、同社は海外にも多くの債務や関係先を抱えており、その返済能力や信用力が低下することで国際的な金融市場や貿易市場にも波及する可能性があります。さらに、中国の経済成長や需要が減速や低迷することで世界経済全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
エバーグランデの債務危機を解決するためには、中国政府や金融機関、国際社会が協力して対策や支援を行う必要があります。中国政府はエバーグランデの債務再編計画を監督し、同社の債権者や顧客の権益を保護し、不動産市場や金融システムの安定を維持することが求められます。金融機関はエバーグランデとの債務交渉に柔軟に対応し、同社の資金繰りを改善し、信用リスクを管理することが求められます。国際社会はエバーグランデの海外債務問題に対して協調的な姿勢を示し、同社の信用力回復や資金調達を支援することが求められます。
エバーグランデショックは中国経済だけでなく世界経済にも大きな影響を与える可能性がある重要な課題です。この課題に対して適切な対応を行うことで、中国経済や世界経済の安定と成長に貢献することができるでしょう。