日本銀行が毎年3月・6月・9月・12月に発表する「企業短期経済観測調査」(短観)は、日本経済の動向を把握する重要な指標の一つです。短観では、全国の約1万社の企業に対して、現在の景況感や今後の見通し、設備投資計画などをアンケート形式で調査し、その結果を「業種別景況感指数」(DI)として公表しています。
DIは、景況感が「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いたもので、プラスの値は景況感が良いことを、マイナスの値は景況感が悪いことを示します。また、DIが前回よりも高くなると景況感が改善したことになります。
短観では、企業規模や業種によってDIが異なりますが、特に注目されるのは「大企業・製造業」のDIです。これは、日本経済の主力産業であり、輸出や設備投資などに大きく影響するからです。
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9月短観の結果
2023年9月30日に発表された9月短観では、大企業・製造業のDIが前回(6月)から4ポイント改善してプラス9となりました。これは、2期連続で改善したことになります。前回はコロナ禍で大幅に悪化した2020年12月以来の改善でした。
大企業・製造業のDIの内訳を見ると、自動車や電気機器などの主要産業が改善した一方で、鉄鋼や化学などの素材産業が悪化したことがわかります。また、非製造業では小売や飲食などコロナ禍で打撃を受けたサービス産業が改善しましたが、宿泊や旅行などは依然として厳しい状況が続いています。
他の指標としては、設備投資計画や雇用計画も改善しました。設備投資計画は全産業で前回比13.0%増加しました。
改善の背景
大企業・製造業の景況感が改善した背景としては、以下のような要因が考えられます。
自動車生産の回復
自動車は日本の主要な輸出品であり、世界的な需要の回復や半導体不足の緩和によって生産が増加しました。
非製造業の持ち直し
コロナ禍で大きな影響を受けた非製造業も、ワクチン接種の進展や緊急事態宣言の解除に伴って、消費やサービスの需要が回復しました。
中国経済の堅調さ
中国は日本の最大の貿易相手国であり、中国経済の動向は日本経済に大きな影響を与えます。中国では、コロナ対策やインフラ投資などによって経済が拡大し続けており、9月の製造業PMIは50.6と景気拡大を示す水準を維持しました。
今後の見通しと日銀の政策
大企業・製造業の景況感が今後も持続的に改善するかどうかは、以下のような要素に左右されると考えられます。
コロナ禍の収束
コロナ禍は依然として日本経済に不確実性をもたらしており、感染拡大や変異株の出現などが景気回復を阻害する可能性があります。ワクチン接種や感染対策の徹底が重要です。
半導体不足の解消
半導体は自動車や電気機器など多くの製品に必要な部品であり、半導体不足は生産や輸出に悪影響を及ぼしています。半導体不足は世界的な問題であり、供給と需要のバランスが回復するまでに時間がかかると予想されます。
世界経済の動向
日本経済は輸出に大きく依存しており、世界経済の動向が重要です。特に米国や欧州など先進国の景気回復やインフレ圧力、金利上昇などが日本経済に影響を与える可能性があります。
日銀は、9月短観で大企業・製造業の景況感が改善したことを評価しつつも、コロナ禍や海外情勢などによる不確実性を指摘しました。日銀は現在、長期金利をゼロ%前後に誘導する「イールドカーブコントロール」という政策を実施しており、金融市場や物価動向を注視しながら適切な金融緩和を継続する方針です。
まとめ 日銀9月短観
9月短観で大企業・製造業の景況感が2期連続で改善したことは、日本経済にとって明るい兆しです。
しかし、コロナ禍や海外情勢などの不確実性は依然として高く、景気回復の持続性には注意が必要です。日銀は金融政策の運営において、柔軟かつ強力な金融緩和を続けるとともに、経済や物価の動向を慎重に見極めることが求められます。
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