ゼロ金利政策の限界 日銀はどう動くか インフレ目標と金融安定のジレンマ

日本銀行は、2%のインフレ目標を達成するために、長期間にわたってゼロ金利政策や量的・質的金融緩和を続けてきました。これらの政策は、実質金利を低下させ、資金調達コストを改善し、需給ギャップを拡大し、物価上昇率をプラス化することを目指しました

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しかし、新型コロナウイルス感染症の影響や国際情勢の変化などにより、インフレ圧力は弱まり、金融政策の効果も限界に近づいています。一方で、金融緩和の副作用として、国債市場や金融仲介機能の低下、金融システムの脆弱性などが懸念されます。

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目次

第1章 ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和の背景と目的

1.1. 日本経済のデフレと低成長

日本経済は、1990年代後半から2000年代前半にかけて、バブル崩壊後の不良債権処理やアジア通貨危機などの影響でデフレと低成長に陥りました。

物価水準は下落し、名目GDPは停滞し、実質GDPも低い伸び率で推移しました。デフレは消費者や企業の将来予測を悪化させ、需要を減退させました。また、名目金利がゼロに近づくと、実質金利も下がりにくくなり、金融政策の効果も弱まりました。

この状況を打破するためには、物価水準を上昇させることが必要でした。

1.2. 日本銀行の2%のインフレ目標と異次元緩和

日本銀行は、デフレから脱却するために、2013年1月に2%のインフレ目標を導入しました。これは、「安定的な物価上昇率」を「2%程度」と定量的に示したものであり、「できるだけ早期」に達成することを目指したものです。日本銀行は、「異次元緩和」と呼ばれる量的・質的金融緩和を開始し、国債やETFなどの資産を大規模に買い入れました。

これにより、日本銀行の貸出残高は約100兆円から約600兆円に増加し、日本銀行の国債保有残高は国債発行残高の約半分に達しました。日本銀行は、これらの政策により、金融市場の金利を低下させ、金融機関の資金調達コストを改善し、金融システムへの資金供給を拡大し、経済活動や物価形成に影響を与えることを期待しました。

1.3. イールドカーブ・コントロールとオーバーシュート型コミットメント

日本銀行は、2016年9月に「イールドカーブ・コントロール」と呼ばれる新たな政策枠組みを導入しました。これは、短期金利をマイナス0.1%に据え置き、長期金利をゼロ%前後に誘導することで、イールドカーブ(金利と満期との関係)を適切にコントロールすることを目的としたものでした。

日本銀行は、この政策により、長期金利の低下に伴う国債市場や金融機関の機能低下を防ぎつつ、実質金利を低下させることができると考えました。また、日本銀行は、「オーバーシュート型コミットメント」と呼ばれる新たな政策コミットメントを発表しました。

これは、「物価安定の目標である2%程度の安定的な物価上昇率が持続的に観測されるまで」量的・質的金融緩和を継続することを明言したものでした。日本銀行は、このコミットメントにより、インフレ期待を高めることができると考えました。

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第2章 ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和の効果と限界

2.1. 実質金利の低下と資金調達コストの改善

日本銀行は、2013年から「量的・質的金融緩和」と呼ばれる政策を実施しています。この政策の目的は、2%の「物価安定の目標」を達成することです。この政策では、日本銀行は大量の国債やETFなどの資産を買い入れることで、マネタリーベースを拡大し、市場に資金を供給しています。

また、短期金利を-0.1%に設定し、長期金利をゼロ%程度に誘導することで、イールドカーブをコントロールしています。これらの措置により、日本銀行は実質金利(名目金利から予想インフレ率を差し引いたもの)を低下させることを狙っています。

実質金利の低下は、消費者や企業の支出意欲を高める効果があります。実質金利が低いと、借り入れや投資が有利になり、そして貯蓄や預金が不利になります。これにより、経済活動が活発化し、需給ギャップが縮小し、物価上昇率が上昇することが期待されています。

日本銀行の政策により、実質金利は2013年から2019年までに約2%ポイント低下しました。これは、名目金利がゼロ近くまで低下したこと、予想インフレ率がプラス化したことが影響しています。2019年末時点での実質金利はマイナス0.5%程度でした。

また、日本銀行の政策は、金融機関の資金調達コスト(貸出時に支払う利息)を改善する効果もありました。日本銀行は、マイナス金利政策や貸出促進付利制度などを通じて、金融機関に対して低いコストで資金を供給しています。これにより、金融機関は消費者や企業に対して低いコストで貸出を行うことができます。2013年から2019年までに、企業向け新規貸出平均金利は約1%ポイント低下しました。

2.2. 需給ギャップの拡大と物価上昇率のプラス化

ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和は、実質金利の低下や資金調達コストの改善により、経済活動を刺激することにも成功しました。経済活動の刺激は、需給ギャップ(実際のGDPと潜在的なGDPとの差)を拡大させました。需給ギャップは、2013年から2019年までに約4%ポイント拡大し、プラス2%程度まで上昇しました。これは、実際のGDPが潜在的なGDPを上回ることを意味し、経済が過熱していることを示しました。

需給ギャップの拡大は、物価上昇率にも影響を与えます。物価上昇率は、2013年から2019年までに約1.5%ポイント上昇し、プラス0.5%程度まで上昇しました。これは、消費者物価指数(CPI)で測定されたものであり、日本銀行がインフレ目標としているものです。

物価上昇率のプラス化は、デフレから脱却することを意味し、日本銀行の政策が一定の成果をあげたことを示しました。

2.3. 新型コロナウイルス感染症の影響とインフレ圧力の弱化

しかし、2020年以降、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、日本経済は大きな打撃を受けました。感染拡大防止のために行われた緊急事態宣言や自粛要請などの措置は、消費や投資などの需要を大幅に減少させました。

また、海外からの観光客や貿易などの外需も減退しました。これらの要因により、日本経済は2020年に5.1%縮小し、需給ギャップはマイナスに転じました。

需給ギャップのマイナス化は、インフレ圧力を弱めることになりました。物価上昇率は2020年にマイナス0.1%となり、2021年8月にはマイナス0.3%となりました。これは、エネルギー価格や食品価格などが下落したことによるものです。新型コロナウイルス感染症の影響は、予想インフレ率やインフレ期待にも影響を与えました。予想インフレ率は2020年にマイナス0.4%となり、インフレ期待は低下傾向にあります。

2.4. 国際情勢の変化と金利差圧力

また、国際情勢の変化も日本銀行の政策運営に影響を与えました。

特に、米国連邦準備制度(FRB)が2015年から2019年までに利上げを9回行ったことは、日本と米国の金利差を拡大させました。金利差の拡大は、円安ドル高を促進し、日本の輸出や企業収益にプラスの効果を与えました。

しかし、金利差の拡大は、日本の国債市場にもネガティブな影響を与えました。日本の国債市場では、日本銀行がイールドカーブ・コントロールを行っているため、長期金利はゼロ%前後に誘導されています。

しかし、米国の長期金利は上昇し、2018年には3%近くまで上昇しました。これにより、日本と米国の長期金利差は3%近くまで拡大し、日本の国債が海外からの売り圧力にさらされる可能性が高まりました。日本銀行は、このような状況に対応するために、イールドカーブ・コントロールの運用を柔軟に行うことを表明しました。具体的には、長期金利の変動幅を0.2%程度とすることや、資産買い入れのペースや内容を変更することなどを示しました。

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第3章 ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和の副作用

3.1. 国債市場の機能度低下

ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和は、国債市場にも大きな影響を与えました。特に、日本銀行が大量に国債を買い入れたことは、国債市場の機能度低下を招きました。

国債市場の機能度低下とは、国債の流動性や価格形成機能が低下することを意味します。国債の流動性とは、国債を売買する際に発生する取引コストや時間が少ないことを指します。

国債の価格形成機能とは、国債の価格が経済情勢や金融政策などの要因に応じて適切に反映されることを指します。日本銀行が大量に国債を買い入れたことで、国債市場における取引量や参加者が減少し 、流動性や価格形成機能が低下しました。これは、国債市場が金融政策や経済政策の伝達機関としての役割を果たしにくくなることを意味します。

3.2. 金融仲介機能への影響

ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和は、金融仲介機能(金融機関が預金者から預かった資金を借り手に貸し出すこと)にも影響を与えました。特に、マイナス金利政策やイールドカーブ・コントロールは、金融機関の収益性や資本力にネガティブな影響を与えました。マイナス金利政策は、金融機関が日本銀行に預ける当座預金の一部にマイナス0.1%の利息を課すことで、金融機関の貸出意欲を高めることを目的としたものでした。

しかし、マイナス金利政策は、金融機関の収益源である預貸金利差(貸出時に得る利息と預入時に支払う利息との差)を縮小させました。預貸金利差は、2013年から2019年までに約0.5%ポイント低下し、1%程度まで下がりました。これは、貸出時の利息が低下した一方で、預入時の利息が下げにくかったことによります。

また、イールドカーブ・コントロールは、長期金利をゼロ%前後に誘導することで、長期国債の保有リターンを低下させました。長期国債の保有リターンは、2013年から2019年までに約1%ポイント低下し、0.5%程度まで下がりました。これは、長期国債の価格変動リスクが高まった一方で、長期国債の利回りが低下したことによります。これらの要因により、金融機関の収益性は低下し、資本力も低下する可能性がありました。これは、金融機関が貸し出す資金やリスクを取る意欲を減退させることを意味します。

3.3. 金融システムへのリスク

ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和は、金融システムにもリスクをもたらしました。特に、日本銀行が大規模な資産買い入れを行ったことは、日本銀行自身や日本経済全体に対するリスクを高めました。

日本銀行自身に対するリスクとは、日本銀行が保有する資産の価値が減少することや、日本銀行が発行する紙幣や当座預金の価値が減少することを指します。日本銀行が保有する資産の価値が減少するリスクは、日本銀行が国債やETFなどの価格変動リスクを負うことを意味します。

例えば、長期国債の価格は長期金利と逆方向に動くため、長期金利が上昇すれば長期国債の価格は下落します。日本銀行が大量に長期国債を保有している場合、長期金利の上昇は日本銀行の損失を拡大させることになります。

また、日本銀行が発行する紙幣や当座預金の価値が減少するリスクは、日本銀行がインフレ目標を達成した場合に発生することを意味します。例えば、インフレ率が2%になれば、紙幣や当座預金の実質価値は2%ずつ減少します。日本銀行が大量に紙幣や当座預金を発行している場合、インフレ率の上昇は日本銀行の負債の実質価値を減少させることになります。これらのリスクは、日本銀行の財務状況や信用力に影響を与える可能性があります。

日本経済全体に対するリスクとは、日本銀行が資産買い入れを縮小したり、金利を引き上げたりした場合に発生することを指します。日本銀行が資産買い入れを縮小したり、金利を引き上げたりすることは、金融市場や経済活動にネガティブな影響を与えることを意味します。

例えば、日本銀行が国債の買い入れを減らせば、国債の需給バランスが悪化し、国債の価格は下落し、長期金利は上昇します。長期金利の上昇は、住宅ローンや企業借入などの負担を増やし、消費や投資などの需要を減少させます。また、日本銀行が短期金利を引き上げれば、円高圧力が強まり、輸出や企業収益などにネガティブな影響を与えます。これらの影響は、日本経済の成長率や物価上昇率に影響を与える可能性があります。

第4章 インフレ目標と金融安定のジレンマ

4.1. 日本銀行の政策運営における課題

以上のように、ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和は、一定の効果と限界を示しました。しかし、これらの政策は、インフレ目標と金融安定という二つの目標に対してジレンマを生み出しました。インフレ目標とは、日本銀行が2%程度と定めた安定的な物価上昇率であり、デフレから脱却し、経済成長を促進することを目的としたものです。

金融安定とは、国債市場や金融仲介機能や金融システムなどが安定的に機能し、経済活動や物価形成に不要な影響を与えないことです。日本銀行は、これら二つの目標を同時に達成することが困難であることに直面しています。

一方で、インフレ目標を達成するためには、ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和をさらに強化する必要があります。しかし、これは、金融安定を損なう可能性が高まることを意味します。例えば、ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和を強化すれば、国債市場や金融仲介機能や金融システムへの副作用が増大する可能性があります。また、日本銀行が保有する資産や発行する紙幣や当座預金へのリスクも高まる可能性があります。

他方で、金融安定を確保するためには、ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和を縮小する必要があります。しかし、これは、インフレ目標を達成することが困難になることを意味します。例えば、ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和を縮小すれば、実質金利や資金調達コストが上昇し、需給ギャップや物価上昇率が低下する可能性があります。また、円高圧力が強まり、輸出や企業収益へのネガティブな影響も生じる可能性があります。

このように、日本銀行はインフレ目標と金融安定の間でトレードオフの関係にあることを認識しており、そのバランスを取ることが政策運営における課題であることを示しています。

日本銀行は2021年3月に「包括的な検証」と呼ばれる自己評価を行い、その結果を公表しました。その中で、「異次元緩和」の枠組みは基本的に維持しつつも、「イールドカーブ・コントロール」の運用をより柔軟に行うことや、「ETF買い入れ」のペースを減らすことなどを発表しました。これらの措置は、インフレ目標と金融安定のバランスを取ることを目的としたものであると言えます。

4.2. 日本銀行の政策運営における選択肢

日本銀行は、インフレ目標と金融安定のジレンマに対処するために、今後の政策運営において、どのような選択肢を持っているのでしょうか。ここでは、代表的な選択肢を以下のように分類して考えてみます。

  • インフレ目標を優先する選択肢
  • 金融安定を優先する選択肢
  • インフレ目標と金融安定の両立を目指す選択肢

インフレ目標を優先する選択肢

インフレ目標を優先する選択肢とは、ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和をさらに強化することで、インフレ圧力を高めることを目指すものです。具体的には、以下のような政策が考えられます。

  • 短期金利をさらにマイナスに引き下げる
  • 長期金利をさらに低く誘導する
  • 国債やETFなどの資産買い入れのペースや規模を増やす
  • インフレ目標やオーバーシュート型コミットメントをさらに強化する

これらの政策は、実質金利や資金調達コストをさらに低下させ、需給ギャップや物価上昇率をさらに上昇させることが期待されます。また、インフレ期待や予想インフレ率も高まることが期待される。これらの効果は、インフレ目標の達成に近づくことにつながる可能性があります。

しかし、これらの政策は、金融安定へのリスクも高めることになります。例えば、短期金利や長期金利をさらに低くすることは、預貸金利差や長期国債の保有リターンをさらに縮小させ、金融機関の収益性や資本力をさらに低下させる可能性があります

また、国債やETFなどの資産買い入れを増やすことは、国債市場や株式市場の機能度低下やバブル形成のリスクを高める可能性があります。さらに、日本銀行自身が保有する資産や発行する紙幣や当座預金へのリスクも高まる可能性があります。これらのリスクは、金融システムの安定性や信頼性に影響を与える可能性があります。

金融安定を優先する選択肢

金融安定を優先する選択肢とは、ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和を縮小することで、金融システムへのリスクを低減することを目指すものです。具体的には、以下のような政策が考えられます。

  • 短期金利をプラスに引き上げる
  • 長期金利を高く誘導する
  • 国債やETFなどの資産買い入れのペースや規模を減らす
  • インフレ目標やオーバーシュート型コミットメントを緩和する

これらの政策は、実質金利や資金調達コストを上昇させることで、需給ギャップや物価上昇率を低下させることが期待されます。また、インフレ期待や予想インフレ率も低下することが期待される。これらの効果は、インフレ目標の達成から遠ざかることにつながる可能性があります。

しかし、これらの政策は、金融安定へのリスクを低減することになります。例えば、短期金利や長期金利を高くすることは、預貸金利差や長期国債の保有リターンを拡大させ、金融機関の収益性や資本力を改善する可能性があります。

また、国債やETFなどの資産買い入れを減らすことは、国債市場や株式市場の機能度低下やバブル形成のリスクを緩和する可能性があります。さらに、日本銀行自身が保有する資産や発行する紙幣や当座預金へのリスクも低減する可能性があります。これらのリスクの低減は、金融システムの安定性や信頼性に寄与する可能性があります。

インフレ目標と金融安定の両立を目指す選択肢

インフレ目標と金融安定の両立を目指す選択肢とは、ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和を適切に調整することで、インフレ圧力と金融システムへのリスクのバランスを取ることを目指すものです。具体的には、以下のような政策が考えられます。

  • 短期金利や長期金利に一定の変動幅を許容する
  • 国債やETFなどの資産買い入れに一定の柔軟性を持たせる
  • インフレ目標やオーバーシュート型コミットメントに一定の裁量性を持たせる

これらの政策は、実質金利や資金調達コストに一定の変動性を持たせることで、需給ギャップや物価上昇率に一定の変動性を持たせることが期待されます。また、インフレ期待や予想インフレ率に一定の変動性を持たせることが期待されます。これらの効果は、インフレ目標の達成に近づくことにつながる可能性があります。

しかし、これらの政策は、金融安定へのリスクを完全に排除することはできません。例えば、短期金利や長期金利に変動幅を許容することは、預貸金利差や長期国債の保有リターンに変動性を持たせることを意味します。

また、国債やETFなどの資産買い入れに柔軟性を持たせることは、国債市場や株式市場の機能度低下やバブル形成のリスクに変動性を持たせることを意味します。さらに、日本銀行自身が保有する資産や発行する紙幣や当座預金へのリスクにも変動性が生じる可能性があります。これらのリスクの変動性は、金融システムの安定性や信頼性に影響を与える可能性があります。

4.3. 日本銀行の政策運営における展望

日本銀行は、インフレ目標と金融安定のジレンマに対応するために、今後の政策運営において、どのような展望を持っているのでしょうか。ここでは、日本銀行が公表した「包括的な検証」の結果をもとに、以下のように考えてみましょう。

  • インフレ目標は基本的に維持するが、達成時期や方法については柔軟性を持つ
  • ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和は基本的に維持するが、イールドカーブ・コントロールやETF買い入れなどについては柔軟性を持つ
  • 金融安定への配慮を強化し、金融システムへのリスクを監視し、必要な措置を講じる

これらの展望は、インフレ目標と金融安定の両立を目指す選択肢に近いものであると言えます。日本銀行は、インフレ目標を達成するために必要な金融緩和を継続しつつも、金融安定への配慮も強化することで、インフレ圧力と金融システムへのリスクのバランスを取ろうとしています。

しかし、このような展望は、インフレ目標や金融安定への不確実性や変動性も高めることになります。日本銀行は、経済情勢や物価動向などを注視しながら、政策運営における課題や選択肢を常に見直す必要があるでしょう。

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まとめ

この記事では、ゼロ金利政策の限界 日銀はどう動くか インフレ目標と金融安定のジレンマというテーマで記事を書いきました。以下が記事の要点です。

  • 日本銀行は、2%のインフレ目標を達成するために、ゼロ金利政策や量的・質的金融緩和などの異次元緩和を長期間にわたって実施した。
  • これらの政策は、実質金利や資金調達コストを低下させ、需給ギャップや物価上昇率を上昇させることで、一定の効果をあげた。
  • しかし、新型コロナウイルス感染症の影響や国際情勢の変化などにより、インフレ圧力は弱まり、金融政策の効果も限界に近づいた。
  • 一方で、これらの政策は、国債市場や金融仲介機能や金融システムなどに副作用やリスクをもたらした。
  • 日本銀行は、インフレ目標と金融安定という二つの目標に対してジレンマに直面しており、そのバランスを取ることが政策運営における課題である。
  • 日本銀行は、インフレ目標と金融安定の両立を目指す選択肢を採用し、異次元緩和の枠組みは基本的に維持しつつも、イールドカーブ・コントロールやETF買い入れなどに柔軟性を持たせることを発表した。
  • 日本銀行は、経済情勢や物価動向などを注視しながら、政策運営における課題や選択肢を常に見直す必要があるだろう。

この記事は、日本銀行の金融政策について、簡潔にまとめたものです。

しかし、この記事だけでは、異次元緩和の効果や選択肢のメリットやデメリットなどを十分に理解することはできません。そこで、読者の皆さんには、この記事をきっかけに、日本銀行の公表した資料や他の研究者の見解などを参考にして、より深く考えてみてください。また、日本銀行の政策運営は、経済情勢や物価動向などに応じて変化する可能性があります。そのため、日本銀行の発表や動向にも注目してください。私も、今後記事を書く機会があれば、日本銀行の金融政策に関する最新の情報や分析をお伝えしたいと思います。

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

Stellaria 代表
2002年生まれ、iU1期生。大学3年生でCOOとして学生起業。現在は退職しCreative Label Stellariaを立ち上げ中。ゲームや音楽などのエンターテインメントや生成AIに関する事業を行っている。

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