投資信託は、投資初心者にとって魅力的な選択肢として知られています。
なぜなら、プロの運用者が選んだ多様な資産に分散投資できるため、リスクを抑えることが期待できるからです。しかし、投資信託のニュースや話題を見ていると、利益を出せていない人も多いようです。一体、どうして投資信託で儲かる人と儲からない人がいるのでしょうか?
この記事では、投資信託が儲からない理由と、実際に儲かっている人の割合についてわかりやすく説明します。
投資信託でなかなか利益を出せない理由とは?
「投資信託は儲からない」と感じている方は少なくありません。金融庁の2020年11月の発表によれば、投資信託で利益を上げている人の割合は約3割。つまり、投資信託を利用している人の3人に2人が損失を抱えている状況です。
新型コロナウイルス感染症の影響による市場の変動を受け、2020年3月末時点で、運用損益がプラスとなっている顧客の割合(金融事業者218社の単純平均)は約3割と、19年3月末時点と比較しておよそ半分程度に減少。マイナスとなっている約7割の顧客のうち、約8割が-30%以上0%未満の運用損益となっている
安定的な資産形成に向けた金融事業者の取組み状況
令和2年9月18日金融庁
では、なぜ多くの人が利益を出せないのでしょうか?その理由はいくつかあります。まず、その中でも特に影響しているのが、投資家の利益と販売会社(銀行や証券会社)のビジネスモデルが対立している点です。
1. 販売会社のビジネスモデル
投資信託の販売会社は、手数料が入るために新しい商品を積極的に販売します。しかし、販売会社が利益を追求するあまり、必ずしも投資家にとって最適な商品を提供しているとは限りません。手数料が高い商品を勧められたり、頻繁な売買を促されたりすることで、結果的に投資家の資産を減らす可能性が高まります。
2. タイミングに惑わされる
「投資信託で儲かりにくい」というもう一つの理由は、売買のタイミングです。特に初心者は、株式市場の値動きに惑わされやすく、上昇時に高値で購入し、下落時に安値で売却してしまうケースが多いです。このような取引は利益を出しにくく、損失につながりやすいです。
3. 短期の利益を狙う
投資信託は本来、長期的な資産運用に適した商品です。しかし、短期間で利益を得ようとする投資家が多いため、かえって損失を出してしまうことがよくあります。短期間での売買は価格の変動に大きく影響されるため、リスクが高まるのです。
投資信託で利益を得にくい理由とは?
「投資信託は儲からない」と感じる理由はいくつかあります。ここでは、その主な理由を詳しく見ていきましょう。
1. 手数料が高い
投資信託で利益を得にくい最大の理由の一つは、かかる手数料が高いことです。投資信託を運用する際には、さまざまな手数料が発生し、これが利益を圧迫してしまいます。投資信託の手数料には以下の3つがあります。
- 販売手数料:投資信託を購入する際に販売会社に支払う手数料です。通常、基準価額の2~3%がかかります。
- 信託報酬:投資信託の運用や管理にかかる費用で、純資産総額に対して年0.5~2.0%程度です。運用期間中ずっとかかるため、長期投資の場合は特に注意が必要です。
- 信託財産留保額:投資信託を解約するときにかかる手数料です。一般的には0.3%程度ですが、最近ではこの手数料がかからない商品も増えてきています。
たとえ運用がうまくいっても、これらの手数料が差し引かれるため、実際に受け取る金額が少なくなることが多いです。
2. 利益に対する税金
投資信託で利益を得た場合、その利益には税金がかかります。譲渡益や分配金が発生した場合、20.315%の税金がかかるため、せっかく得た利益が少なくなってしまうのです。
なお、分配金には「普通分配金」と「特別分配金」の2種類がありますが、税金がかかるのは普通分配金だけです。特別分配金は元本の払い戻しに該当するため、税金がかからない点を覚えておくとよいでしょう。
3. 販売会社が顧客目線でないことも
販売会社の利益が投資家の利益と必ずしも一致しないことも、投資信託で儲けにくい理由です。販売会社は、手数料を収入源としているため、顧客に最適な商品を勧めるよりも、自社に利益をもたらす手数料の高い商品を販売する傾向があります。
そのため、販売会社の営業マンから勧められる商品が必ずしも自分にとって良い選択であるとは限りません。投資信託を選ぶ際には、販売会社のセールストークをそのまま信じず、慎重に商品を選ぶことが大切です。
4. 流行に左右されるテーマ型投資信託
最近は「テーマ型投資信託」といって、特定のテーマに特化した商品が多くあります。たとえば、「ゲノム」や「AI」など、時代の流行に合わせたテーマの投資信託です。流行しているテーマに投資することで利益を得るチャンスはありますが、流行は永遠に続くわけではありません。
かつて人気だった「シェールオイル」や「シェールガス」に投資するファンドは、当時は利益が出やすかったものの、今ではそのテーマが廃れてしまい、以前のような利益を期待するのは難しくなっています。流行に乗るだけでは、長期的に安定した利益を得ることは難しいといえるでしょう。
資産運用会社に求められる信頼性の向上
投資信託が十分に利益を生み出さない背景には、資産運用会社の信頼性に課題があると言われています。ここでは、信頼性を高めるために必要な改善点を見ていきましょう。
1. 販売会社からの独立性の確立
金融庁が発表した「資産運用業高度化プログレスレポート2023」では、日本の資産運用会社の経営に関する問題点が指摘されています。特に、日本の資産運用会社では経営トップの在任期間が「3年未満」であるケースが多く、異動後にすぐ経営トップに就任する例も見られます。これに対し、海外の大手資産運用会社では、経営トップが「5年以上」在任し、かつ「勤続10年以上」の内部昇進者が経営に携わる割合が高いのです。

この違いから、日本の資産運用会社では、親会社から一時的に天下りのような形で経営が行われているケースが多く、専門性や責任感の面で海外と比べて大きく出遅れている可能性が指摘されています。つまり、長期的な視点に基づく運用が難しい体制にあると言えるのです。
2. 運用担当者の情報開示が少ない
同じレポートでは、日本の資産運用会社が個人投資家に対して十分な情報を開示していない点も指摘されています。法人顧客には、運用担当者の氏名や経歴を開示している一方、個人投資家に対しては、運用担当者の名前を開示している割合がわずか「2%」にとどまっています。

これは、個人投資家がどのような専門家によって自分の資産が運用されているのかを知ることが難しい状況です。運用担当者の情報を開示しないことで、資産運用の責任が不透明になり、結果的に信頼性の低下につながっています。
3. 短期売買に偏る日本の投資信託
日本の投資信託は、販売開始直後に一時的に資金を集め、その後は残高が減少していく傾向があります。その理由の一つに、販売会社が手数料を稼ぐために、同じファンドを長期で持ち続けるよりも、売却して別のファンドに資金を移すように勧めることが挙げられます。つまり、販売会社は投資信託の売買を繰り返すことで利益を上げているのです。
このため、日本の歴代運用残高トップ10のファンドは頻繁に入れ替わり、長期で一つのファンドに資産を置いておくことが難しくなっています。投資信託が利益を生み出しにくいのは、こうした販売会社のビジネスモデルにも起因しているのです。
投資信託で利益を出すためのポイント
投資信託で資産運用をしている人のうち、3人に2人が損失を出していると聞くと、少し不安に感じるかもしれません。しかし、いくつかのポイントを押さえておけば、投資信託で利益を出すことも可能です。ここでは、そのための基本的なポイントを解説します。
1. 長期のパフォーマンスや実績で商品を選ぶ
まず、投資信託を選ぶときには、長期のパフォーマンスや実績をチェックすることが大切です。過去のパフォーマンスが、運用の指標であるベンチマーク(例えば、日経平均株価やS&P500など)を上回っている場合、利益が出やすい傾向があります。
また、販売会社や信託先の実績が豊富な商品も選ぶ際の参考になります。ただし、知名度だけで判断するのは禁物です。信頼できる運用会社が運営しているか、過去の運用成績が安定しているかなど、いくつかの商品をピックアップし、しっかり比較検討しましょう。
短期の運用実績は「たまたま」や「運」に左右されることがあるので、できるだけ10年以上の長期実績が好調なファンドを選ぶのがおすすめです。長期間での安定した運用は、そのファンドが市場の波を乗り越えてきた証拠といえます。
2. 長期・積立・分散を意識する
次に重要なのが、長期投資・積立投資・分散投資を意識することです。これらを組み合わせることで、投資のリスクに備え、損失を最小限に抑えることができます。
- 長期投資:時間をかけて投資することで、一時的な値下がりや市場の動揺に惑わされることが少なくなり、冷静な判断ができるようになります。
- 積立投資:毎月一定額を積み立てることで、価格が高いときには少なめに、価格が安いときには多めに購入できる「ドルコスト平均法」の効果を活用できます。これにより、平均的な購入単価を下げることができ、リスクを分散できます。
- 分散投資:複数の投資信託や異なる資産クラス(株式、債券、不動産など)に資金を分けることで、特定の市場や銘柄に依存せず、リスクを軽減できます。
また、投資信託以外の金融商品にも目を向けてみると良いでしょう。例えば、個別株や債券、不動産投資など、いろいろな選択肢を持つことで、さらにリスクを分散することができます。大切なのは、自分のリスク許容度に合った商品をバランスよく組み合わせていくことです。
続けて文章を修正し、内容を補います。
まとめ:投資信託で「儲からない」と感じた方へ
ここまで解説してきたように、投資信託で運用している人の3人に2人が損をしているというデータがあります。手数料などのコストの高さや、投資テーマに流行りがあるために一時的に儲かりづらい時期があることなどから、「投資信託は儲からない」と感じる方も少なくありません。
しかし、ここで重要なのは、投資信託自体が必ず儲からないわけではないという点です。むしろ、長期的な視点やリスク分散を意識することで、利益を得る可能性が十分にあります。投資信託で利益を上げるためのポイントとして、次の点を見直してみましょう。
- コストに注目する:信託報酬や販売手数料の低いファンドを選ぶことで、余分なコストを減らし、利益を増やすことができます。
- 長期の実績でファンドを選ぶ:短期的な人気やトレンドに惑わされず、10年以上の運用実績が安定しているファンドに注目しましょう。
- 長期・積立・分散を心がける:時間をかけて投資をし、毎月コツコツ積み立てることで、リスクを抑えながら着実に資産を増やしていけます。
投資信託はプロの運用に任せるため、自分で個別銘柄を選ぶ手間を省けるのが魅力の一つです。投資信託が「儲からない」と感じる場合、まずは投資スタイルや商品選びのポイントを見直してみてはいかがでしょうか。焦らず、自分に合った投資信託を見つけることが、長期的な資産形成につながります。