運動習慣と孤独回避でメンタルを守るためのヒント

現代社会は、過去と比べて物質的に豊かで、より安全な生活を送ることができています。昔の人々から見れば、今の私たちの生活は「理想的な暮らし」に見えるでしょう。

しかし、実際には精神的な不調に悩む人が増え続けています。近年、精神科を受診する人の数が増加していることからも、物質的な豊かさと精神的な健康が必ずしも一致しないことがわかります。

運動が身体に良い影響を与えることはよく知られていますが、実はメンタルヘルスにも大きな効果があります。定期的に運動を行うことで、脳内のセロトニンドーパミンといった物質が分泌され、ストレス軽減気分の向上に寄与するのです。

週に3回以上の適度な運動がメンタルの安定に役立つという研究結果もあります。たとえば、ウォーキングやジョギングを30分行うだけでも、脳内の化学物質が整い、ストレス耐性が向上します。

現代社会におけるもう一つの大きな問題は孤独です。SNSが普及しているにもかかわらず、孤独感を感じる人は増えています。人とのつながりを持ち、コミュニケーションを取ることが、メンタルを健康に保つためには非常に重要です。

定期的に友人や家族と会話をしたり、趣味の集まりに参加することで、孤独を避けることができます。人との関係がメンタルヘルスにどれほど影響を与えるかは、さまざまな研究で証明されています。

目次

不安や恐怖は人間の「防御機構」であり、生き延びるために必要な感情

まず理解しておきたいのは、不安や恐怖といった感情は人間の「防御メカニズム」の一部であり、これらの感情が生存に必要なものであったということです。

現代社会では、日々の生活で命の危険に晒されることはほとんどありません。例えば、朝から晩までリラックスして過ごしても、外に出れば危険な動物に襲われるといったことは考えにくいでしょう。しかし、数千年前の人類は違いました。当時の生活では、少しの油断が命取りとなり、危険が常に身近にあったのです。

人類の歴史と不安・恐怖の役割

人類の歴史を振り返ると、私たちが「ホモ・サピエンス」として生まれたのは約50万年前。それ以前の猿人の時代を含めると、人類史は500万年にも及びます。この長い時間の中で、99%以上の期間、人類は常に死と隣り合わせの生活を送ってきました。そのような環境では、「不安」や「恐怖」が正常に機能することが、身の回りの危険を察知し、生き延びるために欠かせない要素でした。

現代の私たちは、先進諸国においてほとんどの人が衣食住の不安から解放されていますが、これはほんの数十年程度の変化に過ぎません。これほど短期間で、人間の脳や感情の仕組みが大きく変わるはずがないのです。

不安や恐怖は脳の正常な機能

現代でも不安や恐怖を感じることは、脳が正常に機能している証拠です。これらの感情は、私たちがかつて危険から身を守るために発達させたものです。つまり、不安や恐怖があるからこそ、リスクを予測し、適切に対処することができるのです。

幸福感や満足感は一時的なものであり、追い求めすぎるのは得策ではない

幸福感」や「満足感」といったポジティブな感情は、私たちにとって大切なものです。しかし、これらの感情は多くの場合、一過性であり、長くは続かないことが知られています。この一時的な性質は、人類の進化の過程でも非常に重要な役割を果たしてきました。

狩猟採集生活における幸福感の役割

農耕社会が始まる前、人類は狩猟採集を中心に生活していました。この時代、毎日確保できる食料は一定しておらず、ある日はたくさんの獲物が手に入っても、別の日にはほとんど収穫がないということが普通でした。

仮に一度の狩りで大量の食料を確保できたとしても、当時は長期保存の技術がなく、その場で食べきるしかありません。大量の食料を前にすれば、当然ながらその瞬間に**「幸福感」や「満足感」を感じるでしょう。しかし、問題はその後です。もし、この幸福感が何日も続いた**としたらどうでしょうか?

次の狩りへの意欲が失われ、環境の変化に対応する能力が低下します。これは、狩猟採集生活を送る人々にとって、生存に関わる重大な問題でした。結果として、幸福感や満足感は短期的であるべきという進化的な仕組みが、人類の生存に役立ってきたのです。

幸福感が長続きしない理由

幸福感」や「満足感」が短期的であることは、実は生存のために必要な要素だったのです。これらの感情が長続きしてしまうと、次にやるべき行動を取る動機が失われ、生存に必要な活動を怠ってしまうリスクがありました。そのため、幸福を追い求め続けることは、現代の生活でも必ずしも得策とは言えません。

長時間の座位やストレス、睡眠不足が「慢性炎症」を引き起こす

現代社会では、不安や恐怖といったネガティブな感情がなくならないのはごく自然なことです。また、どんなに嬉しいことがあっても、幸福感や満足感が長続きしないのも当たり前です。このような人間の感情の仕組みをまずは理解し、受け入れることが大切です。

過剰なストレス反応が精神疾患を引き起こす

不安や恐怖といった感情は、元々は危険から自分を守るための防御メカニズムでした。しかし、現代の生活では命に直結する危険が少なくなり、この防御メカニズムが過剰に反応してしまうことが増えています。結果として、うつ病などの精神疾患に繋がることもあります。

これまでのうつ病に関する研究では、患者の脳内でサイトカインによる「慢性炎症」が発生していることが明らかになっています。この脳の炎症を防ぐためには、生活習慣の見直しが必要です。

慢性炎症を引き起こす要因

以下の要因が、慢性炎症を悪化させることが知られています。

  1. 長時間の座位
    長時間座っていると、血流が悪くなり、体内での炎症が進行しやすくなります。
  2. 長期間持続するストレス
    ストレスが長期にわたって続くと、体内の免疫反応が過剰になり、炎症が慢性化します。
  3. 睡眠不足
    睡眠が不足すると、脳の回復が不十分になり、炎症を抑える力が弱くなります。
  4. 加工食品の過剰摂取
    添加物や過剰な糖分を含む食品は、体内での炎症を促進する可能性があります。
  5. 肥満
    体脂肪が多いと、脂肪細胞が炎症物質を分泌し、慢性炎症を引き起こします。
  6. 喫煙
    喫煙は直接的に体内の炎症を悪化させ、特に肺や血管にダメージを与えます。

ライフスタイルと慢性炎症

昔は、炎症といえば感染症が主な原因でしたが、現代では医療や公衆衛生の発達により、感染症の脅威が大幅に減少しました。その一方で、ライフスタイルの乱れが引き起こす慢性炎症が、現代人にとって大きな問題となっています。

運動習慣と孤独を避けることがメンタルヘルスを守る秘訣

うつ病などの精神疾患を予防するために重要な生活習慣として、専門書『ストレス脳』では次の2つのポイントが挙げられています。

  1. 運動習慣
  2. 孤独を避ける

運動習慣の効果

まず、運動がメンタルに与える影響について考えてみましょう。心拍数の上昇を伴う運動、たとえばランニングやエアロビクスなどを行うことで、抗うつ効果が高まることが知られています。しかし、激しい運動ができない人でも心配する必要はありません。実際、ゆっくりとした散歩でも十分に効果があることが分かっています。

現代社会ではテクノロジーの発展により、歩かなくても済む便利な仕組みが整っていますが、その結果、運動不足が原因でメンタルヘルスが悪化している可能性があります。便利さの恩恵を受けつつも、**「とにかく歩く」**というシンプルな習慣を取り入れることが、心と体の健康にとって非常に重要です。

孤独を避けることの大切さ

次に、孤独がメンタルヘルスに及ぼす影響についてです。昔の人々は、他者と協力しなければ生き延びることが難しい時代を生きていました。したがって、人間は他者とのつながりを必要とする生き物です。

ただし、孤独の感じ方は個人差が大きいです。すぐに孤独を感じてしまう人もいれば、一人の時間を好み、孤独を感じない人もいます。問題となるのは、自分が望む人間関係と現実とのギャップです。このギャップが大きいと、ストレスが生まれやすくなります。

また、SNSを通じて多数の人とつながるよりも、少数の親しい知人と対面で会うことが、ストレス耐性を高める効果があることも研究で明らかになっています。質の高い人間関係を持つことが、メンタルヘルスの維持に重要なのです。

まとめ 運動習慣と孤独回避でメンタルを守るためのヒント

慢性炎症を引き起こす原因となる生活習慣を避けることが、心身の健康維持にとって重要です。特に、長時間の座位睡眠不足加工食品の過剰摂取などは慢性炎症を悪化させます。

一方、うつ病などの精神疾患に対抗するためには、運動習慣を取り入れることと、孤独を避けることが有効です。適度な運動と、親しい人とのつながりを大切にすることで、メンタルヘルスをしっかり守りましょう。

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この記事を書いた人

株式会社シュタインズ
「テクノロジー×教育の研究開発」を事業の基盤に、現在は金融教育サービス事業「Moneychat(http://moneychat.life/)」の企画と開発を進める。

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