2025年、トランプ氏が政権に返り咲くと同時に、再び世界中に“関税ショック”が巻き起こりました。
アメリカは、中国やメキシコだけでなく、カナダや日本といった同盟国にまで高い関税を課し、株式市場は不安定に。多くの人が「トランプには経済の見通しなどないのでは?」と感じたことでしょう。
しかし、実はこの混乱——すべてが“計画の一部”かもしれないのです。
今回のテーマは、トランプ政権の新たな経済ブレーンが描く「世界経済の再編計画(MAGAマスタープラン)」や関税の先にある「マール・ア・ラーゴ合意」について解説します。
この記事では、初心者にもわかりやすく、
- トランプ政権の関税政策の意図
- 世界を3つに分ける“バケツ理論”
- マール・ア・ラーゴ合意とは
- 米ドルと製造業を同時に守るという大胆な構想
などを丁寧に読み解いていきます。
「混乱の裏に戦略あり」——この一文が、今のアメリカ経済を理解する鍵かもしれません。
なぜトランプ政権は関税にこだわるのか?—“産業の空洞化”という危機
トランプ氏が関税を好むのは単なる保護主義ではありません。彼とその経済チームが本気で危機感を抱いているのは、アメリカで進む「産業の空洞化(ディインダストリアライゼーション)」です。
アメリカの製造業はどれほど衰退したのか?
1950年代、アメリカの経済に占める製造業の割合は約28%もあり、世界でも圧倒的な生産国でした。ところが現在では、その割合はたったの10%以下にまで落ち込んでいます。
これは「物を作る国」から「サービスと金融の国」へのシフトを意味します。一見すると、経済の進化に見えるかもしれませんが、トランプ陣営はこれを国家としての弱体化と見ています。
工場がなくなると、国も弱くなる?
なぜ工場が減ると問題なのでしょうか?
トランプ陣営によれば、製造業が衰退すると、以下のようなリスクが高まります:
- 雇用の減少と地方経済の破綻:中西部などの「工業地帯」が経済的に疲弊
- 安全保障の低下:戦争や緊急時に自国で物資や兵器を生産できなくなる
- 中国との競争力の低下:中国の国有企業はすでにアメリカを凌ぐ生産能力を持っている
特に懸念されているのが、万が一中国が台湾に侵攻した場合、アメリカが工業力で対抗できない可能性です。
例えば、ある中国国有企業はたった1年でアメリカが第二次世界大戦以降に造ったすべての商船よりも多くを建造したという報告もあります(https://www.youtube.com/watch?v=o3MLLCYii4Q&t=319s&ab_channel=ForbesBreakingNews)。
製造業の復活なくして国家の安全はない?
だからこそ、トランプ政権は「関税」を使ってでも、アメリカ国内に工場を取り戻そうとしているのです。
その本質は、経済政策というより「国家の再構築」とも言えるでしょう。
関税の真の狙いとは?MAGAマスタープランの全貌
一見すると、トランプ政権の関税政策は「行き当たりばったり」に見えるかもしれません。
味方であるはずのカナダや日本にまで関税をかけ、株式市場も混乱し、多くの専門家が「これはただの混乱だ」と指摘してきました。
しかし、政権内部の発言や経済顧問たちの論文を読み解くと、この“カオス”はむしろ計画の第一段階だと見えてきます。これが、いわゆる「MAGAマスタープラン」の始まりです。
ステップ1:混乱は“交渉力”を高めるための布石
トランプ氏の側近であり、新たに財務長官に就任したスコット・ベセントはこう述べています。
スコット・ベセント「関税は交渉のためのレバー(てこ)だ。」
つまり、最初に関税を無差別にかけることで、世界各国との交渉材料を蓄積しているのです。市場の混乱すら、「本気である」というメッセージとして機能しています。
経済顧問のスティーブン・ミランも、「関税はあとで交渉に使うために、まず“混乱”を作り出すことが必要」と述べています。
この段階で重要なのは、「今の関税政策はゴールではなく、スタート地点」だという点です。
ステップ2以降が本番:関税を使って世界を再編する
この「関税の乱」を乗り越えた先に、トランプ政権が目指しているのは、アメリカ主導による新しい貿易秩序の構築です。
それはただの自由貿易ではなく、「米国にとって都合の良いルールに書き換えられた貿易体制」。
その核心となるのが次のステップ——世界を3色に分ける“バケツ理論”です。
米国は世界を“3色”に分けようとしている?
「関税カオス」の背後には、トランプ政権の壮大な世界戦略があります。
その中核にあるのが、スコット・ベセント財務長官が言及した、世界を「グリーン(緑)」「イエロー(黄)」「レッド(赤)」の3つの“バケツ”に分ける構想です(https://www.youtube.com/watch?v=drPH94fio7E&t=2455s&ab_channel=ManhattanInstitute )。
これは単なる比喩ではなく、今後のアメリカの外交・貿易政策を方向付ける新しい枠組みの基礎になる可能性がある重要なキーワードです。
グリーン・イエロー・レッドとは?
🟢 グリーン国(優遇される国)
- 米国からの低関税や軍事保護を受ける
- 米ドルへのアクセスも優遇される
- 経済・政治面でアメリカのルールに従う国々
- 日本、カナダ、イギリスなどの“旧来の同盟国”が該当する可能性
🟡 イエロー国(中立・交渉中)
- 一部の優遇を受けるが、全面的な信頼はされていない
- 米国と対話中で、条件次第でグリーンにもレッドにもなる
- メキシコやインドなどが該当する可能性あり
🔴 レッド国(敵対的・非協力国)
- 高関税・軍事保護の打ち切り
- 米ドル経済圏からの排除も検討
- 中国やロシア、イランなどが該当とみられる
この分類は、単に貿易だけでなく、通貨、金融、軍事、政治すべてを連動させた多層的な支配構造の一部です。
言い換えれば、「グリーン国に入るかどうか」が、これからの国家にとっての生き残り戦略になる可能性があります。
このような枠組みは実は初めてではありません。
1944年に始まったブレトン・ウッズ体制や、1985年のプラザ合意も、アメリカを中心とした経済圏を築くものでした。
しかし、今回の違いは「協調」ではなく、「アメリカ主導の選別」と「忠誠度に応じた差別的な待遇」が前提になっている点です。
最終目標は“マール・ア・ラーゴ合意”?新・世界秩序の設計図
トランプ政権が目指している“本当のゴール”とは何なのか?
それが今、経済アナリストたちの間で囁かれているのが、「マール・ア・ラーゴ合意(Mar-a-Lago Accords)」という構想です。
これは、かつての「ブレトン・ウッズ体制」や「プラザ合意」に匹敵する、新しい国際経済秩序の再構築を意味します。
この言葉は、金融界の大物アナリスト、ゾルタン・ポズサー氏が2024年に初めて提唱したもので、1985年に米国主導で行われた「プラザ合意」にヒントを得たものです。当時は主要先進国が協力し、ドルの価値を意図的に下げました。
プラザ合意ではアメリカ・日本・西ドイツ・フランス・イギリスが協力し、ドルの意図的な“引き下げ”を行いました。その目的は、当時の過度なドル高による貿易不均衡を是正するためです。
“マール・ア・ラーゴ合意”とは何を狙っているのか?
経済顧問スティーブン・ミランの構想をもとにすれば、その目的は以下のようにまとめられます:
- 米ドルの基軸通貨(=世界の中心通貨)としての地位を維持する
- 同時に、ドルの価値を意図的に下げ、アメリカの製造業を復活させる
- 選ばれた“グリーン国”とだけ経済協力を深める
- その見返りとして、各国はドル相場の調整に協力し、アメリカの通貨政策に従う
これが実現すれば、アメリカは「強いドルの恩恵」と「製造業の再生」を両立させることが可能になります。普通はあり得ないこの「一石二鳥」を狙っているのが、トランプ流のグランド・ストラテジーなのです。
なぜトランプは“ドル安”を望むのか?
トランプ氏とその経済チームが目指すのは、単なる通貨政策の調整ではありません。
彼らが本気で目指しているのは、「強すぎるドルがアメリカを弱くする」という“常識”の転換です。
一般的に「通貨が強い=国が強い」と考えられがちです。
実際、米ドルは長年にわたって世界の基軸通貨(=国際取引の中心通貨)として君臨してきました。ドルが強いことで、以下のようなメリットがありました:
- アメリカ政府は、低い金利で借金(国債)を出せる
- 世界中の投資マネーが米国に集まりやすい
- 石油などの国際取引がドル基準で行われ、影響力を維持できる
一方で、その“副作用”も大きかったのです。
ドル高がアメリカ製造業を破壊した?
ドルが強いと、アメリカ国内で生産された商品は価格が高くなり、輸出が不利になります。
その結果:
- 海外製の安い製品が市場に流入
- 国内の工場が閉鎖し、雇用が失われる
- 特に地方の“ブルーカラー(工場労働者)”の仕事が激減
トランプ氏はこの現状を「アメリカン・ドリームの崩壊」ととらえています。
さらにトランプ政権が問題視しているのは、アメリカが世界の警察官として担ってきた防衛コストの偏りです。
NATOやアジアの同盟国を守るためにアメリカが巨額の軍事費を負担している一方で、その恩恵を受けてきた国々が十分に見返りを払っていない、と考えています。
その見返りの一つが、「米国債の購入」ですが、これすらも「金利が安すぎる」とトランプ側は不満を持っているのです。
しかし、問題は“信頼”の欠如
この構想には一つ、大きな問題があります。
それは、「他国が本当に協力するのか?」という点です。
トランプ政権はこれまでにも、カナダ・メキシコとの貿易協定(USMCA)を一方的に再交渉したり、NATO加盟国に対して「防衛費を払え」と圧力をかけたりしてきました。
そのため、多くの同盟国は「アメリカに従っても、また裏切られるのでは?」という疑念を抱いています。
つまり、“マール・ア・ラーゴ合意”の実現には、圧倒的な信頼と説得力が必要なのです。
この合意がもし実現すれば、世界は再びアメリカを中心とした通貨・軍事の選別的ブロック体制へと向かうことになります。
「ドルを支えるなら守ってあげる」「守ってほしいなら協力しなさい」という極めて交渉色の強い戦略です。
しかし、そんな強引な構想が果たして世界に受け入れられるのでしょうか?
なぜ関税がカギになるのか?
マール・ア・ラーゴ合意という壮大な計画を進める上で、トランプ政権が最も重視しているツールの一つが「関税」です。
「関税」は、ただの貿易税ではなく、トランプにとっては圧力をかけるための交渉カードなのです。
トランプ政権の経済ブレーン、スコット・ベセントはこう語っています:
「関税は3本脚のスツールの“第3の脚”であり、外交カードとしても使える。」
つまり、関税は:
- 海外企業をアメリカに生産拠点ごと“呼び戻す”効果(→雇用増)
- アメリカ製品の価格競争力を上げる効果(→輸出促進)
- 交渉材料として他国に「譲歩」を引き出す効果(→政治的圧力)
これら3つの狙いを同時に叶えようとする経済的な圧力戦略なのです。
関税は「脅し」としての意味も持つ
たとえば、関税の脅威によって:
- メキシコが国境管理を強化
- ヨーロッパ諸国が国防費を増額
- 外国企業が「アメリカ国内投資」を表明
といったように、実際に政策変更や投資行動の変化が起きています。
こうした現象は、トランプがただ単に“貿易を守る”ためでなく、「より大きな交渉を優位に進めるため」に関税を使っている証拠と言えるでしょう。
“ドル覇権”と“製造業復活”は両立するのか?
ここまでの構想を見ると、トランプ政権が目指しているのは「アメリカを再び製造大国にすること」と「ドルの国際的地位を維持すること」の二兎を追う戦略です。
しかし、経済の専門家たちの間では、この2つはそもそも矛盾するのではないか?という疑問が強く投げかけられています。
ドルの強さ=製造業の弱体化?
基軸通貨であるドルにはこんな特性があります:
- 世界中がドルを欲しがる → 価値が高くなる(ドル高)
- ドル高になると → アメリカ製品が“高く見えて”売れにくくなる
- 輸入品が安くなり → 海外製品がアメリカ市場を席巻する
つまり、「ドルの覇権を維持すること」は、製造業にとってはマイナスに働く可能性が高いのです。
これが、かのフランス財務相が「ドルの覇権はアメリカにとって“過剰な特権”だ」と指摘した理由でもあります。
“弱いドル”にすれば製造業は救えるが…
一方で、意図的にドルを弱くしようとすれば、こんなリスクがあります:
- 米国債の信頼性が下がる(=国債価格下落・金利上昇)
- 海外投資家がアメリカから資金を引き上げる
- アメリカの金融市場全体が不安定化する
アメリカ経済は「強いドル」の上に成り立ってきたため、ドルの信認を揺るがすことは“金融システム全体”へのリスクにもなり得るのです。
「両立させる」には“国際的協調”が必須
だからこそ、トランプ政権が目指す“マール・ア・ラーゴ合意”では、各国に対して:
- 「ドルの相場調整に協力せよ」
- 「代わりに、アメリカは安全保障を提供する」
という取引を仕掛けているのです。
つまり、単独では両立できない目標を、外交と経済の“バーター取引”で実現しようとしている。それが、マラ・ア・ラゴ構想の中核なのです。
『関税の混乱』は、世界を変える布石かもしれない
表面的には、トランプ政権の関税政策は「めちゃくちゃ」に見えるかもしれません。
同盟国にも敵対国にも関税をかけ、株式市場を動揺させ、グローバル企業を困惑させる——確かに、その全体像は混乱そのものです。
しかし、その背後には、アメリカの経済ブレーンたちが描く世界再設計の構想があるかもしれません。
今回解説をしたマール・ア・ラーゴ合意——それは単なる通貨政策ではありません。
それは、アメリカが「ドルの力」と「軍事力」を同時に活用し、世界の経済秩序を再構築しようとする計画です。
この構想が実現すれば、世界は再び「アメリカに従う国」と「従わない国」に分断される可能性があります。まさに、21世紀版の“選別された世界秩序”です。
- アメリカの製造業を再建し、
- 同時にドルの覇権を維持しながら、
- 経済・軍事・通貨のすべてをテコに世界を3つのグループに再編成する。
これは、ブレトン・ウッズ体制以来の大改革であり、かつての“自由貿易”を前提とした国際秩序とは真逆の方向に進もうとしています。
ただし、実現には大きな壁も
この計画が実現するには、各国がアメリカに再び「信頼」を置く必要があります。しかし、過去の貿易協定を反故にし、味方にも容赦なく圧力をかけるスタイルでは、「従うより離れる」選択をする国が増えるリスクもあります。
つまり、トランプ流の“力の外交”が成功するかどうかは、アメリカが「世界のリーダー」として再び選ばれるかどうかにかかっています。
関税をめぐるトランプの政策は、単なる「経済論争」ではありません。
それは、21世紀の新しい国際秩序をめぐる大きなゲームの一手なのです。
これからのニュースを見るとき、「混乱の裏側には意図があるかもしれない」という視点を持つことで、より深く世界経済を読み解くことができるはずです。
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