株式市場では、単に株価の値動きだけを見るのではなく、出来高にも注目することが非常に重要です。特に、人気化している銘柄が天井(上昇の限界)に達しそうな場面では、出来高の変化が大きなサインとなることがあります。
株価が一時的に上がっているとき、出来高が減少している場合には注意が必要です。これが示すのは、買い手の数が減少しているということです。つまり、株価は上がっていても、実際には買いの勢いが弱くなっている状態であり、いずれ株価が反転し、下落する可能性が高まっていることを示します。
出来高が急増することも大きなサインです。一般的に、出来高が大幅に増加する時期には、大きなトレンドの変化が起こりやすくなります。たとえば、出来高が急増しているのに株価が上がらない、または下がり始めると、それは売り圧力が強まっている可能性が高く、天井を迎えつつあると考えることができます。
出来高とは?
「出来高」は、期間中に成立した売買数量の合計のことです。
出来高が多ければ多くの人から注目を浴びていることを意味し、いわば人気のバロメーターです。例えば、買い100株、売り100株で売買が成立した場合の出来高は100株となります。成立した買いと売りを一つの取引とするのです。
画像はSBI証券の日経平均の画面ですが、下に写っている黒い棒がそれぞれの日の出来高を表しています。
神戸物産(3038)の週足チャートに見る株価の動き
こちらは神戸物産(3038)の週足チャートです。リーズナブルさが人気の「業務スーパー」を展開する同社は、メディアでの取り上げもあって業績が絶好調です。しかし、2019年8月から9月にかけては大きな調整が入り、株価が下落しました。
出来高の増加と株価の動き
神戸物産の興味深い点は、株価が下落基調にあった時に出来高が増加していることです。これは、下落局面で多くの投資家が「押し目買い」を狙っていた可能性を示唆しています。実際、2019年10月以降には株価が再び上昇に転じ、2020年2月の全体的な株安の影響を受けて再び大きく値を下げた時にも、出来高が増加しました。その後、株価は再度上昇しています。
出来高増加が示す投資家心理
基本的に、株価が下落している銘柄に対して多くの投資家は慎重で、「まだ下がるかもしれない」と様子を見がちです。しかし、下げ局面で出来高が増えるということは、押し目を待っていた投資家が多く、買いに転じた可能性があります。このような銘柄は、底打ちが早く、株価が反転して上昇すると「あの時に買っておけば良かった」という投資家の追随買いが入りやすくなる特徴があります。
株価下落と出来高の減少は「警戒サイン」
こちらはワークマン(7564)の週足チャートです。同社はカジュアル衣料への進出が大ヒットし、2019年には大きな相場を演じました。しかし、2020年に入ると株価は失速。ここで注目すべきは、株価が下落しているにも関わらず、出来高が増加していないことです。
出来高減少が示す投資家心理
株価が下がった際に出来高が増加しないというのは、押し目買いを狙っている投資家が少ないことを示しています。つまり、多くの投資家が「まだ買うタイミングではない」と考えている可能性が高いのです。この状況は、さらに株価が下落するリスクがあるため、注意が必要です。
ワークマンの株価推移
実際、ワークマンの株価は2019年12月の高値10,570円から2020年3月の安値5,400円まで、**約50%**も下落しました。このように、株価が下落しているにもかかわらず出来高が増えない場合、下落トレンドが続く可能性が高くなります。
出来高の急増は「底打ち」のサインになることが多い
株価が下落しているときにも、出来高の動きを注視することが重要です。今回は、オリエンタルランド(4661)の株価を例に見ていきます。
コロナショックでの株価下落と出来高の関係
オリエンタルランドの株価は、2019年後半から上値が重くなり、2020年に入ると新型コロナウイルスの影響で休園を余儀なくされました。これに伴い、株価は大きく下落しましたが、2020年2月後半から3月中旬にかけて出来高が急増しました。
この時点ではまだ再開の見通しは立っていませんでしたが、株主優待の人気もあり、3月の権利取りを意識した買いが入ったことも影響していました。結果として、出来高のピークとほぼ同じタイミングで底打ちし、その後株価は反転しています。
出来高急増が示す「押し目買い」のチャンス
株価が下落しているときに出来高が急増する現象は、押し目を狙った買いが多く入っているサインです。このようなケースでは、出来高の急増が底打ちの兆候となり、その後株価が反転することが多く見られます。
まとめ:出来高が示す投資家心理を読み解こう
出来高が増加しているということは、株を買いたい投資家と売りたい投資家の両方が活発に取引していることを意味します。これを理解することで、今後の株価の動きをより正確に予測できるようになります。
もし上昇基調にある銘柄が一時的に失速した場合、そこで出来高が増加していれば、まだ買いを待っている投資家が多いと考えることができ、上昇トレンドが継続中である可能性が高いです。
一方で、株価が失速したときに出来高も同時に減少している場合、それは一相場が終わったサインかもしれません。ここで投資家が売りたいという気持ちが弱まっている場合は、次の上昇の勢いを失うことが多いです。
また、下落基調にある銘柄でも、出来高が急増しているときは注意が必要です。出来高の急増は相場の転換点を示すことがあり、下げ止まりから反発に転じる兆候かもしれません。
上昇局面で出来高が減少することは必ずしも悪いサインではありません。この場合、多くの投資家が売りに出る意欲が少なく、スルスルと株価が上昇することもよくあります。
一方、下落局面で出来高が減少する場合は、単に人気がなくなっているだけの可能性が高く、注意が必要です。
出来高は日ごとの材料で大きく動くことがありますが、トレンドを把握するためには週単位での推移を見る方が信頼性が高いです。日々の値動きに惑わされず、長期的な視点で出来高と株価の動きを分析することが、成功する投資への近道となるでしょう。