2024年7月4日から6日にかけて、古都京都で開催された「IVS2024 KYOTO / IVS Crypto 2024 KYOTO」。今年のイベントで最も熱気に包まれていたのが、社会課題解決に特化した「YELLOW stage」でした。3日間を通じて、スタートアップ、投資家、研究者、政治家など、多様なプレイヤーが集結し、熱い議論と交流が繰り広げられました。
YELLOW stage:Social Issue [DY]
YELLOW stageでは、「社会×ビジネスとそうじゃないもの」をテーマに、3日間で10以上のセッションが行われました。貧困・気候変動・障害・少子化など、重厚長大な社会課題に取り組むプレイヤーたちが、情熱と最先端の知見をもって「悲しい世界」を「ワクワクする世界」へ変えるためのヒントを提供しました。
注目セッション1:インパクト投資の限界と可能性
特に注目を集めたのが「インパクト投資の限界と可能性」セッションです。このセッションでは、以下のような論点が議論されました:
1. 財務リターンの最大化を目的とすべきか、インパクトを重視すべきか
2. 受託者責任の範囲内でのインパクト投資の在り方
3. インパクト投資の役割:マネタイズとグロースの実験場
4. SDGs、ESGの普及による寄付性資金の流れの変化
5. インパクト加重会計の可能性と課題
登壇者からは「投資の名を冠する限り財務リターンの最大化を目的とすべき」という意見や、「インパクト投資のリターンはインパクトであり、ファイナンシャルリターンのみを追求すると目的が濁る」といった意見が出され、白熱した議論が展開されました。
注目セッション2:今こそ消費者の行動変容についてガチで考える
7月6日に行われたこのセッションでは、以下の3つの主要トピックについて議論が交わされました:
1. 課題解決としての消費者行動
- 物理的な商品の消費行動は、多くのタッチポイントを持ち、購入後の体験を通じて消費者の心情を変化させる強みがある
- エシカル消費を広めるには、ロイヤルカスタマーにフォーカスすることが重要
エシカル消費とは、消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと!
2. 現在の消費者行動
- 安くて機能性の高い商品は依然として人気があり、直感的な魅力が購入の決定要因となることが多い
- 対抗するには、購入後のフォローや消費体験を通じて論理的・合理的な説明を提供することが重要
3. これからの消費者行動
- 消費者視点では、納得感がますます重要になる
- 顧客の口コミ(UGC)が最も効果的なメディアとなる
- エシカル消費も感情を最大化する手段の一つとして位置付けられる
- SDGsを経済活動の一部に組み込むことで、自然と社会課題の解決に繋がる消費行動を促進できる
YELLOW stageの進化
今年のYELLOW stageは、昨年と比較してより専門的で深い議論が展開され、社会課題解決ビジネスの成熟度が上がっていることが感じられました。
イベントを統括した担当者は、「昨年のIVSソーシャルは『こんなに面白いソーシャルの世界へようこそ』がコンセプトだったが、今年は『業界として解像度を上げ、フォーカスすべき問いを共有しそれぞれのやり方で進めていこう』という意識の高まりがあった」と総括しています。
総括:社会課題解決とイノベーションの融合
3日間を通じて、YELLOW stageは「社会課題解決の知の集積地」として機能し、多くの参加者の関心を集めました。ここで交わされた議論は、社会課題解決ビジネスが成熟した国内市場において最後のフロンティアであり、イノベーションの原泉となる可能性を示唆するものでした。
IVS2024 KYOTOは、そのポテンシャルを示す場となり、参加者たちに新たな視点と可能性を提供しました。来年のIVS2025 KYOTOでは、今回の成果をさらに発展させ、社会課題解決とビジネスイノベーションの融合がより一層進むことが期待されます。