総合商社5社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)は、いずれも高い利益水準と世界中に広がる事業網を持ち、株主還元も手厚いことから、多くの個人投資家に注目されています。
しかし、こんな疑問を感じたことはありませんか?
「この株価って割安なの?それとももう高いの?」
「決算は良いけど、今から買って間に合うの?」
実はその答えを導くには、「将来の利益(予想)」と「現在の株価」を照らし合わせて、今の株価にどれだけの将来価値が織り込まれているかを見ることが重要です。
今回は、2026年度の純利益・EPS(1株あたり利益)の予想などを使いながら、現在の株価が割安なのか、割高なのかを投資家目線で診断していきます。

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前回のおさらい|商社の「中身」と「財務」から見えた特徴
前回の記事(【2025年最新版】5大商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)徹底比較!初心者向けの解説!)では、各商社の事業構成や財務指標から、
- どの会社が資源に強いのか?
- 誰にでも合う「投資スタイル別おすすめ商社」は?
- EPSやROEの推移から見た「稼ぐ力の違い」
などをわかりやすく比較・解説しました。まだ読んでない人は、まずはこちらを最初に読んで前提知識を入れてきてください。

たとえば、
- 伊藤忠商事は非資源×消費者志向で、EPSとROEが業界トップ級
- 三菱商事・三井物産は資源セクターの波に乗る“攻め型”
- 丸紅は効率型・中庸志向で安定感を重視
- 住友商事は復活途上でポートフォリオ転換中
など、各社の「性格」が明確になりました。
今回はこの続編として、その稼ぐ力が株価にどう評価されているか?
を具体的に探る分析をしていきます。
🏢 三菱商事|「資源王者」から「万能商社」への進化中
日本最大の総合商社・三菱商事は、エネルギーや資源で巨額の利益を上げてきた一方、近年は非資源分野の強化や再エネ投資などで次のステージを目指しています。
✅ 強み|資源とキャッシュ創出力がダントツ
- 資源ビジネスに圧倒的な強み:石炭、LNG、銅など世界中で資源開発と販売を展開
- キャッシュ創出力が業界随一:営業キャッシュフローは年9,000億円超の水準
- 株主還元姿勢が極めて強い:2025年度は東証最大規模、上限1兆円の自社株買いを実施中
❗ 弱み|資源依存と非資源分野の課題
- 市況に強く依存:資源価格が落ちると業績に大きな影響
- 非資源ポートフォリオの比率がまだ低め:収益安定化のために改革が進行中
🌐 特徴|「磨く2.0」で全事業の底上げへ
- 経営方針「磨く2.0」:全事業のROIC(投下資本利益率)をKPIに、事業ごとの効率と質を引き上げ
- 事業の幅が圧倒的に広い:エネルギー、コンビニ(ローソン)、水産、物流、デジタル、再エネなどを幅広く保有
🔮 将来展望|再エネ・非資源投資の成果に期待
- 米国での再エネ大規模投資:5,500億円を投じ、2028年までに太陽光発電能力を約2.6倍に拡大予定
- 非資源成長を模索中:物流・水産・再エネ・デジタルなど新たな柱の育成がカギ
- 資源価格の回復次第で再び利益拡大へ:2027年にかけてEPSも回復傾向と予想されている
🧭 投資家視点まとめ
投資スタンス | 視点 |
---|---|
短期投資 | 大型の自社株買い(1兆円)による需給改善で、株価下支えが期待される |
中長期投資 | 非資源強化とROIC重視経営への転換が進み、「資源依存からの脱却」への進化がポイントに |
🏢 三井物産|「資本効率×分散ポートフォリオ」の堅実成長モデル
三井物産は資源ビジネスの強さを保ちつつ、バランスシート経営とROIC管理で安定成長を志向する“堅実派”総合商社です。
✅ 強み|収益源の多軸分散とキャッシュ創出
- 広がる収益エンジン
金属資源(鉄鉱石・原料炭・銅)に加え、ガス・再エネ・食料・インフラなど7セグメントをフル活用し、リスクを時間軸・地域・産業で多軸分散。 - キャッシュフローが底堅い
2024・2025年度と連続で基礎営業CF1兆円規模を達成。強固なバランスシートを維持しつつ、累進配当と機動的な自社株取得を実行できる余力がある。 - ROIC経営の徹底
中計で案件ごとにROIC目標を設定し、案件厳選+資産入替を前倒しで進行。粗利が伸びなくてもROEを押し上げやすい仕組み。
❗ 弱み|資源価格のボラティリティと赤字事業の潜在
- 資源市況に依然左右される
鉄鉱石・原料炭価格下落時はセグメント利益が急減。「資源+非資源=50:50」を掲げるが、まだ資源寄り。 - 赤字/低採算事業の入替が道半ば
中南米自動車関連や一部化学・食品子会社など、ターンアラウンド待ち案件の稼働率が低く、短期EPSを押し下げる場合も。
🌐 特徴|“ダブルマテリアリティ”とキャッシュ・フロー配分
- ダブルマテリアリティの導入
財務的インパクトだけでなく、社会・環境インパクトを並行管理。ESG要請に対応しつつ、基礎収益力を底上げ。 - キャッシュ・フロー・アロケーションの明示
基礎CF+資産リサイクルで得たキャッシュを①事業維持、②成長投資、③累進配当+自己株買いにバランス配分するフレームを公開。
🔮 将来展望|非資源収益の拡大と株主還元強化
- 成長投資パイプライン
低炭素アンモニア、米国・豪州ガス田、インド再エネ、食品・ヘルスケアなど、ROICターゲットを超過する案件を前倒し実行。 - 累進配当+追加還元
配当は「減配せず増配」方針を継続。中計期間中に基礎CF対比40%以上の総還元を実施予定。 - EPS見通し
2026年EPS 267.9円 → 2027年 EPS 313.1円(+16.9%)。PERは11.3倍→9.6倍へ自然低下し、成長と割安のバランスが取れた銘柄に。
🧭 投資家視点まとめ
投資スタンス | 視点 |
---|---|
安定&堅実成長 | 多軸分散で下方耐性が強く、累進配当でインカムも確保 |
バリュー+成長 | 2027年PERが一桁台になる見込み。EPS成長とROIC改善が同時に効く“お得ゾーン” |
リスク | 鉄鉱石・原料炭の市況下落、海外赤字事業の追加減損、為替リスク |
💡三井物産は「資源で稼ぎつつ、非資源で下方耐性を高める分散型プレイヤー」。ROIC経営と累進配当で、堅実派投資家のコア保有銘柄として注目できる。
🏢 伊藤忠商事|“川下消費”を極める高効率プレミアム商社
伊藤忠商事は「利は川下にあり」を掲げ、コンビニ・食品・アパレルなど生活者に近いビジネスへ大胆にシフト。高ROEと高い株主還元を両立する、総合商社の“優等生”です。
✅ 強み|安定収益と資本効率の高さ
- 非資源比率 80%超:景気変動や資源価格に左右されにくいポートフォリオ。
- ROE 約16%・EPS 615円(24年度実績):商社トップ級の資本効率。
- 総還元性向 50%:配当200円+自己株買い1,500億円(24年度)、25年度も1,700億円枠を継続。
❗ 弱み|資源セクターの縮小と為替感応度
- 資源価格上昇の恩恵が限定的:資源セグメントは全体の2割弱、資源高局面で相対的に出遅れやすい。
- 円高・原料炭操業不調の影響:24年度は原料炭2案件の赤字や円安メリット剥落で資源利益が減少。
🌐 特徴|ハンズオン経営と“投資の4つの教訓”
- ハンズオン経営の進化:デサント・ファミリーマート・CTCなどで人材・資本を投入し、中規模事業会社を高速で黒字化。
- 投資の4つの教訓(高値掴み禁止など)を徹底し、非資源投資 2.3 兆円で ROI 8%超を達成。
- 「The Brand-new Deal」:中計を廃止し、毎年単年度計画を開示する“機動型経営”。
🔮 将来展望|2年連続最高益と持続的プレミアム評価
- 連続増益シナリオ:24年度純利益 8,803 億円 → 25年度 9,000 億円計画、26年度も 9,000 億円台を視野。
- EPS予想:2026年 636円 → 2027年 682円、PERは 11~12倍レンジで推移=高効率&成長の両取り。
- 成長投資 1 兆円上限:デジタル、ヘルスケア、カワサキモータースなど “川下”事業を拡充し利益年10%成長を目標。
- 人的資本とESGブランド強化:女性役員比率を2030年30%へ、統合報告書やIR表彰で外部評価トップクラス。
🧭 投資家視点まとめ
投資スタンス | 視点 |
---|---|
安定成長+高配当 | 200円固定配当 or 配当性向30%の明確ルール、自己株買いも毎期実施 |
グロース+効率重視 | 非資源×ハンズオンでEPS・ROEともに上昇トレンド、PER 12倍は許容範囲 |
リスク | 為替(円高)・北米原料炭案件の遅延、新規投資の大型化によるROI低下 |
💡伊藤忠商事は 「生活者に近い収益源」×「高効率経営」 で、安定配当と持続成長を両立するプレミアム商社。長期保有で“安心して複利が狙える”銘柄として要チェックです。
🏢 住友商事|“ポートフォリオ変革”で再評価を狙うターンアラウンド商社
住友商事は中期経営計画 2026の下、資産入替と成長投資を加速し「PBR1倍超の早期回復」を掲げる“再建型→成長型”フェーズ。2024年度に過去最高益級へ回帰し、24年以降は株主還元も強化中です。
✅ 強み|バランス型ストックビジネスと再エネ・DXの伸長
項目 | ポイント |
---|---|
安定収益の柱が多い | リース、都市総合開発、不動産、海外発電などストック型収益が拡大。24年度の非資源利益は 3,980億円(前年比+510億円) と堅調 |
中期で7,300億円投資を実行 | 洋上風力用モノパイル製造、北米建機レンタル、SCSK×ネットワン買収など、「No.1事業群」で競争優位を強化 |
株主還元の本気度 | 総還元性向40%超+累進配当。24年度は配当130円/株+自己株200億円、25年度も配当140円/株・自己株600億円を決定 |
❗ 弱み|事業再構築の途中段階
- 建機レンタル・ブラジル農業など一部事業で減損・損失計上が続き、バッファー▲400億円を25年度計画に織り込み済み。
- 資源価格下落局面では銅・石炭などの利益が縮小しやすい(資源ビジネス 25年度▲110億円見通し)。
🌐 特徴|「No.1事業群」+ROICドリブン経営
- 8領域(鉄鋼・建機・リース・都市総合開発・デジタル・ヘルスケア・アグリ・エネトラ)を重点投資先に位置付け、ROIC目標を設定。
- 資産入替(ティーガイア株式売却等)を進め、新陳代謝スピードを加速。
- SCSK×ネットワン買収で国内DXプラットフォームを強化し、AI/GPU as a Serviceにも参入。
🔮 将来展望|EPS・ROE改善とPBR是正
指標 | 2024実績 | 2025予想 | 目標・示唆 |
---|---|---|---|
当期利益 | 5,619億円 | 5,700億円(過去最高) | 2026年めど 6,500億円(中計) |
ROE | 12.4% | 12% | 中計目標:12%以上維持 |
EPS予想 | ― | 471円(26年)→ 536円(27年) | PER 8.0→7.0倍と割安感増 |
PBR は 0.98 倍(7/25時点)。ROE が 12%台で定着すれば PBR 1倍超回復=株価20%前後アップ余地 も視野。
🧭 投資家視点まとめ
投資スタンス | 着目点 |
---|---|
割安ターンアラウンド狙い | PER 8倍・PBR 1倍未満。事業再編と株主還元強化で再評価余地大 |
安定インカム+成長 | 配当140円・総還元性向40%超。リース・不動産・発電のストック収益が下支え |
リスク | 建機・農業など再構築事業の減損/円高・資源安による利益圧縮 |
💡 住友商事は「資産入替×選択集中」で収益体質を刷新中。ROE改善と積極還元を武器に、“割安+変化”を狙う投資家向けの中期バリュー株と評価できます。
🏢 丸紅|「非資源×高効率」で“おとなしい会社”から脱皮を図る挑戦者
丸紅は「戦略プラットフォーム型事業」を掲げ、非資源の高付加価値ビジネスを伸ばして時価総額10兆円を目指す“変化株”。2024年度は純利益5,030億円で過去2番目の高水準を達成しました。
✅ 強み|非資源で着実に稼ぐ高効率体質
- 非資源実態純利益 3,230億円(過去最高):農業資材のHelena、食品マーケティング、電力小売などが牽引
- 基礎営業CF 過去最高 6,066億円:2018–24年度CAGR 8%で毎年CFが伸長。
- ROE 14%台を安定維持:資本効率は商社トップクラス。
❗ 弱み|資源減速局面で利益が伸び悩むリスク
- 資源分野は原料炭・鉄鉱石の市況下落で▲160億円の減益要因。
- 非資源重視ゆえ、資源高局面では他商社より相対的に出遅れやすい。
🌐 特徴|「戦略プラットフォーム型事業」への集中投資
- 成長投資 3年累計 1.7兆円を非資源の高付加価値領域へ集中(農業資材、医薬品、電力小売、IT ソリューションなど)
- 部門再編で16→10事業部へ集約し、投資チームを横串化。
- ROIC目標を掲げ、非資源ROIC 10%を2030年度に目指す。
🔮 将来展望|10兆円時価総額構想と株主還元
指標 | 2024実績 | 2025予想 | 2027ターゲット |
---|---|---|---|
純利益 | 5,030億円 | 5,100億円 | 6,200億円以上 |
基礎営業CF | 6,066億円 | 5,500億円 | 3年累計 2兆円 |
ROE | 14.2% | 14%程度 | 15%維持 |
配当 | 95円 → 100円 | 累進配当(配当性向40%) |
- PER 2027年予想 8.9倍、ROE 15% ⇒ PEG 約0.8=割安+成長
- 株主還元:自己株取得は 24年度800億円→25年度400億円と継続、総還元性向40%をコミット
🧭 投資家視点まとめ
投資スタンス | 着目点 |
---|---|
中期バリュー+成長 | 非資源ROIC向上&収益安定でPER10倍割れ、見直し余地大 |
還元+キャッシュ重視 | 総還元性向40%+100円配当基点でインカムも確保 |
リスク | 資源価格急落時の追加減損、投資実行速度が目標に届かない場合は成長遅延 |
💡 丸紅は「安定×効率」を武器に、非資源成長で“おとなしい”から“攻めの高効率型”へ転換中。10兆円構想の実現度合いが株価ドライバーとなる。
🔍 なぜ将来利益で見るべきか?|PERの本質を理解しよう
多くの投資家が使う「PER(株価収益率)」という指標。
これは、株価 ÷ 1株利益(EPS) で求められ、ざっくり言えば「株価が利益の何倍まで買われているか」を示すものです。

通常のPERは「直近の実績EPS」で計算されることが多く、
過去の利益に対して株価を測っているため、未来の株価の動きとはずれることもあるんです。
✔ そこで注目したいのが「予想PER」
予想PER = 現在の株価 ÷ 来期の予想EPS
この「予想PER」を使うことで、
- 来年以降の業績がどれだけ成長する見通しか
- その成長に対して今の株価が高いのか安いのか
をより合理的に判断できます。
🔑 例えばこういう見方ができます
- ある企業が PER 9倍 だとすると…
→ 利益に対して株価が9年分しか織り込まれていない
→ 「今後も成長が続くなら、割安かも?」と評価できる - 逆に、PER 20倍超 で利益が横ばいだとすれば…
→ 株価は期待先行で買われすぎている可能性もある
このように「将来の利益に対して現在の株価はどうか?」という視点を持つと、本当に買っていいのかの判断がグッと明確になるのです。

次のセクションでは、いよいよ実際に2026年度の予想EPSと現在株価から「予想PER」を計算し、各商社が割安なのか割高なのかを可視化していきます。
📊 商社5社の予想PERから見る「割安/割高」診断(2026・2027年版)
将来の業績予想(EPS)と現在の株価から計算される「予想PER(株価収益率)」は、今の株価が割安か割高かを判断する基本的かつ重要な指標です。
では、ここから各社の割安感やどの商社が買いなのか?あるいは、どのタイミングなら買いなのかを解説していきます!(ここからは、有料メンバー or 有料noteで閲覧できます)