シリコンバレー史上最悪の詐欺――セラノスの亡霊か、未来の医療か?

かつて「一滴の血で、すべての病気がわかる」と謳い、世界中の注目を集めたベンチャー企業がありました。創業者は、スティーブ・ジョブズに憧れ、黒いタートルネックをトレードマークにしていた若き女性起業家。彼女の名前は、エリザベス・ホームズ

そしてその企業の名は──セラノス(Theranos)

シリコンバレーの中心で、「医療の未来」を掲げたこのスタートアップは、たった数年で評価額90億ドル超に達し、アメリカの政財界、医療業界、メディアまでも巻き込んだ成功物語のように見えました。ところがその夢は、あっけなくも崩れ去ります。2015年からの報道と内部告発をきっかけに、セラノスの中身は「ほぼ空っぽ」であったことが明らかになり、最終的にエリザベス・ホームズは詐欺罪で有罪に。2023年現在、彼女はテキサス州の刑務所で11年の実刑に服しています。

ところが最近、再び似たような話が聞こえてくるようになりました。ホームズのパートナーであり、2人の子どもの父でもあるビリー・エヴァンスが、新たなバイオテック企業「ヘマンサス(Hemanthus)」を立ち上げたのです。掲げているのは、「AIを使った新しい診断技術」、そして「身体の中を非侵襲的にスキャンするデバイス」。どこかで聞いたようなそのビジョンに、再び業界はざわつき始めています。

これはまた騙される物語なのでしょうか?
それとも、今度こそ本当に、技術が追いついた未来なのでしょうか?

この記事では、セラノス事件の始まりから終わりまでを丁寧にたどり、その裏に隠された動きや証言を検証します。そして新たに登場したヘマンサスの技術的背景、戦略、そして期待と疑念が交錯する現在の状況について、わかりやすく、しかししっかりとお伝えしていきます。

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目次

第1章:セラノスとは、革命か詐欺か、それともその両方か

2003年、スタンフォード大学を19歳で中退したエリザベス・ホームズは、セラノス(Theranos)という会社を設立しました。彼女の目標は明快で大胆でした。
「血液検査を、より簡単に、より安く、より多くの人へ届けたい」。そのために彼女が構想したのが、「ほんの一滴の血から、数百種類の病気を瞬時に検査できる」という夢のような診断装置です。

この装置は「エジソン」と呼ばれました。
指先から採取したわずか数ミリリットルの血液を使って、糖尿病からがん、感染症まで広範囲にわたる病気を検査できる──そんな未来像に、世界は強く惹かれました。医療の在り方を根本から変えると信じられ、多くの人々がホームズのビジョンに賭けました。

wikipedia

スター企業への階段

ホームズはそのカリスマ的な存在感とストーリーテリングの力で、シリコンバレーのトップに上り詰めていきます。セラノスには、かつての国務長官ヘンリー・キッシンジャーをはじめとする政界の重鎮や、元陸軍将軍、元国防長官らがアドバイザリーボードに加わり、一気に信頼感が高まりました。

また、ウォルグリーンズやセーフウェイといった大手企業との提携も進み、ロバート・マードックやラリー・エリソン、ベッツィ・デヴォスなど、名だたる投資家たちが資金を提供。セラノスは一時、90億ドルの企業評価額にまで到達しました。

しかし、肝心の技術がなかった

急成長の裏で、技術そのものには根本的な問題がありました。セラノスの診断機器「エジソン」は、当初から想定されていた精度や多様な検査機能を、まったく実現できていなかったのです。

  • 多くの検査は、外注された従来の検査機器(たとえばシーメンス社の製品)で行われていた
  • エジソンによる結果にはばらつきがあり、誤診や検査不能も頻出
  • 内部ではデータの改ざんや検査の再実行、偽装が常態化

この事実を隠すために、セラノスは従業員に厳格な秘密保持契約を課し、異論を唱える社員には圧力をかけて沈黙させていました。

内部告発と崩壊の始まり

2015年、ウォール・ストリート・ジャーナルの記者ジョン・キャリールーによる調査報道が、その沈黙を破りました。彼は、セラノスの元社員や医療関係者への取材を通じて、「エジソン」の技術がほとんど機能していないことを突き止めたのです。

この報道を皮切りに、連邦政府機関や証券取引委員会(SEC)、医療規制当局が次々に調査を開始。セラノスはたちまち信用を失い、2018年には事実上の解散に追い込まれました。

ホームズの裁判とその結果

2022年、ホームズは詐欺と共謀の罪で有罪となり、11年3か月の懲役刑を宣告されました。裁判では、彼女が投資家や提携企業に意図的に誤った情報を伝え、技術の不備を知りながら虚偽の主張を続けていたことが認定されました。

加えて、SECからは公開企業の役員・取締役への就任禁止措置も下されています。

セラノスの物語は、一見するとひとりの人物の野望と過信による破綻のようにも見えます。しかしその裏では、メディアの熱狂、投資家の焦り、規制当局の見逃し、そして“革新”を過剰に求める社会の構造が複雑に絡み合っていました。

さて、ここで終わっていれば、これは過去の出来事として教訓になったかもしれません。

しかし、この物語は、まだ終わっていないのです。

第2章:ヘマンサス──ホームズの影を背負って

セラノス事件が終息してから数年。多くの人が、この一連の詐欺劇を「異例の出来事」として記憶に留めていました。しかし2024年、再び似たような名前がシリコンバレーの空気を震わせ始めます。その企業の名前は、ヘマンサス(Hemanthus)

そして、その中心にいる人物が、エリザベス・ホームズのパートナーであり、2人の子どもを育てるビリー・エヴァンスです。

セラノスとの近すぎる距離

ビリー・エヴァンスは、カリフォルニアのホテル王一族の御曹司で、もともとは自動運転車向けのセンサー開発企業「ルミニーナ・テクノロジーズ」に勤めていました。医療分野の専門家ではありませんが、テック業界での経験と、ホームズとの関係性が、彼をバイオテクノロジー事業へと駆り立てたようです。

そんな彼が立ち上げたヘマンサスは、自社をこう紹介しています。
「診断の未来」
血液や唾液などの体液を、レーザーでスキャンし、AIが数秒で健康状態を解析する。
その説明を聞いて、デジャヴを覚えた人は少なくないはずです。

そう、かつてセラノスが掲げた「一滴の血であらゆる病気を検出する」という夢と、あまりに似ているのです。

セラノスとの違いはあるのか?

確かに、ヘマンサスの中核技術には目新しさもあります。使用されているのは、ラマン分光法という分子分析手法。これは約100年の歴史を持つ科学的手法で、レーザーを使って物質の分子構造を可視化するものです。
加えて、AI、特にディープラーニングモデルによって、この複雑な分子情報を瞬時に解釈し、病気の兆候を検出するというアプローチが採用されています。

ただし、「ヘマンサスの初期プロトタイプは、セラノスのエジソン機に酷似している」と指摘する声もあります。見た目だけでなく、訴求しているビジョンも「体液から病気を非侵襲的に判別」という点で重なっているため、当然ながら業界関係者やメディアは警戒を強めています。

ペットから始まる第二の挑戦

しかし、ヘマンサスにはセラノスと決定的に異なる戦略があります。それは、人間ではなくペット(特に犬や猫)向けの診断市場から参入していることです。

なぜペットなのか?

  • 動物医療は人間に比べて規制が緩く、迅速なプロトタイピングが可能
  • ペットのがん診断は需要が高く、感情的な価値も大きいため、高価格でも受け入れられやすい
  • 近年、米国ではペット関連医療市場が急成長しており、数十億ドル規模とされる

このような理由から、ヘマンサスはまずペットを対象としたスクリーニング装置を開発し、その後に人間向けウェアラブル診断機器の市場へと進出する計画です。

調達と周囲の反応

セラノスの傷跡を覚えている投資家たちは、今回すぐに飛びつくことはしませんでした。例えばマイケル・デルの投資会社や、Facebook初期の著名VCは、慎重な姿勢を崩していません。
ある投資家は「セラノスに投資を見送ったのと同じ理由で、今回も見送る」と述べ、科学的信頼性と臨床的有用性の欠如を懸念しています。

その一方で、エヴァンスはまず「友人や家族」から350万ドルの資金を調達し、さらにサンフランシスコやオースティンの富裕層から1500万ドルの追加資金を目指して動いています。現時点で確認されている投資家は、オースティンの小さなレストラン経営者1人だけという状態ですが、それでも開発は進んでいます。

ホームズの名前と過去の出来事がついて回る以上、ヘマンサスに対する疑いの目は避けられません。ただ、それでも彼らは「まず作り、話すのは後で」と語り、信念を持って前に進もうとしています。

第3章:AIとラマン分光法──診断医療の「次の一手」になるのか

ヘマンサスが掲げる技術の中核にあるのは、2つのキーワードです。

  1. AI(人工知能)
  2. ラマン分光法(Raman spectroscopy)

この2つの融合によって、彼らは「体液から分子レベルで病気を即座に特定できる」という診断手法を開発中だとしています。ここでは、その技術がどのようなもので、なぜ注目されているのか、そして本当に実現可能なのかを見ていきます。

ラマン分光法とは何か?

ラマン分光法は、1920年代に物理学者C.V.ラマンによって発見された分光分析技術です。仕組みはシンプルで、物質にレーザーを照射したときに生じる「散乱光」の波長変化を測定することで、物質中の分子構造や化学結合を特定することができます。

これは、特定の疾患に関係する代謝物やタンパク質、細胞の構造変化なども検出できる可能性があり、すでに化学・材料・製薬分野で長年活用されてきました。ただし、従来は高価で手間がかかり、診断機器としては使いづらかったのも事実です。

そこにAIが加わると?

ヘマンサスが新しいと主張するのは、ここにAI、特にディープラーニング技術を組み合わせることで、複雑な分子のパターンを瞬時に解析できるようにする、という部分です。

このアプローチは、たとえば膨大なラマン散乱のデータを学習したAIモデルが、「このスペクトルは肺がんに関連するパターンだ」と判断できるようになる──そんな仕組みです。これにより、スキャン時間を短縮し、精度も向上する可能性があると言われています。

実際に、近年ではラマン分光+AIを組み合わせた研究が世界中で進められています。

  • 中国の研究チーム:皮膚がん細胞を99.7%の精度で識別
  • 細菌感染症の診断:約97.9%の精度を報告
  • アメリカの研究:乳がんやALSの早期スクリーニングに有効な兆候あり

こうした成果により、ヘマンサスの技術は完全な空想とは言えない、という声も出ています。

現時点の成果と課題

とはいえ、実用化への道のりはまだ長いのが現実です。

ヘマンサスは現在、特許1件を取得しているものの、公開された製品や臨床データはほとんどありません。さらに、ラマン分光法は高度な技術者の手作業による調整や分析が必要とされるため、自動化・低コスト化が大きな課題です。

また、AIが病気の兆候をどのように「理解」しているのかがブラックボックスになりがちで、臨床現場での透明性と信頼性の確保が必要不可欠です。

「技術的には夢ではないが…」

ジョンズ・ホプキンス大学の腫瘍学教授、ヴィクター・ヴェルクレス博士はこう語っています。

「もしも血液を使った簡易なスキャンで、肺がんの兆候を見つけ、早期にCT検査に誘導できれば、それは診療の大きなブレークスルーだ。」

この言葉が示すように、「簡単なスキャンで深刻な病気を早期に発見する」というのは、医療界全体の大きな目標でもあります。

ヘマンサスの技術がそれを可能にするかどうかは、まだ未知数です。しかし、少なくともその方向に向かう努力は、科学的に非現実的ではないのです。

第4章:投資家の目──二度は騙されないという信念と、それでも資金は動く現実

セラノス事件の記憶は、いまだ投資家たちの間に色濃く残っています。
あの時、政府高官や有名ベンチャーキャピタルが一斉に騙され、約10億ドルもの資金が泡と消えました。
だからこそ、新たに登場したヘマンサスが似たような技術と物語を掲げて登場したとき、多くの投資家たちは直感的に「これは危険だ」と感じたのです。セラノスを見送った投資家たち、再び慎重姿勢を貫く

たとえば、Facebookの初期投資家であり、現在は複数のスタートアップに出資するベンチャーキャピタリストは、こう語っています。

「私はセラノスへの投資を2回見送った。そして今回も、同じ理由でパスする。科学的な裏付けと臨床的な証明がないビジョンに、もう付き合うつもりはない。」

また、マイケル・デルの投資会社など、著名な投資グループもヘマンサスへの出資を早々に却下したと報じられています。
このように、大型ファンドや経験豊富な投資家たちは、「革新」という名のもとに繰り返される“物語”には、もはや慎重なのです。

それでもお金は集まる──家族・友人ラウンドの現実

とはいえ、まったく資金が集まらないわけではありません。
創業者のビリー・エヴァンスは、まず「家族と友人」から約350万ドルの出資を受けたとされています。これはスタートアップによくある「信頼ベースの出資」で、事業計画よりも人間関係を重視した投資スタイルです。

さらに彼は、サンフランシスコやオースティンといった都市部の富裕層ネットワークを活用し、追加で1500万ドルの資金調達を目指しているとも報道されています。

ただし、現時点で確認されている投資家は、オースティンでタパスバーを経営する小規模ビジネスオーナー1名のみ。これが現実です。

なぜそれでも資金が動くのか?

投資家の中には、「今度こそ本当に技術が追いついているのでは?」と考える者もいます。AIの進化とラマン分光法の融合が、ついに実用段階に入ったかもしれない。そのタイミングの良さが、一部での期待につながっているのです。

また、ヘマンサスがまず参入しているペット医療市場も、資金の動きを後押ししています。

  • 感情価値の高い市場(飼い主の「愛」が価格を超える)
  • 規制が緩いため、試作品や実験が行いやすい
  • 高級ペット医療が成長産業であり、リスクを取る余地が大きい

このような背景もあって、「小さな規模で始め、もしうまくいけば大きなチャンスがある」と読む投資家も一部存在しています。

第5章:希望の科学──ラマン分光法×AI、その現実的な可能性

ヘマンサスが掲げる技術は、決して完全な空想ではありません。実際、ラマン分光法とAIの融合による診断技術は、近年になって急速に注目を集めている分野です。この章では、その科学的背景と、国内外の研究成果、そして“本当にそれは未来の診断を変えるのか”という核心に迫ります。

技術としての「確からしさ」

ラマン分光法自体は、すでに100年近い歴史を持ち、製薬・材料分析・犯罪捜査などに広く応用されています。これにAI、特に機械学習やディープラーニング技術を組み合わせることで、膨大なスペクトルデータから「病気の兆候」を高速・高精度に抽出できるという発想は、確かに理にかなっています。

特に医療分野では、病変によって変化する「分子構成」や「代謝パターン」を可視化できるラマン分光法は、非侵襲での早期診断に大きな可能性を秘めていると評価されています。

すでに成功例もある

例えば、以下のような研究報告が存在しています。

中国の医療大学での研究

  • メラノーマ(皮膚がん)細胞の識別精度:99.7%
  • 細菌感染症の分類:97.9%の正確性
  • 使用されたのは、まさにヘマンサスと同様の「ラマン分光法+AI」モデル

米国ジョンズ・ホプキンス大学の事例

  • 肺がんを「血液スキャン+AI解析」により早期検出
  • 腫瘍学教授ヴィクター・ヴェルクレス氏はこう語ります:

「もし医師の診察室で行える簡単な検査で、患者が肺がんの兆候を持つかどうかを把握できるなら、それは医学的に極めて価値がある。追跡的にCTスキャンを勧めることができ、命を救える可能性がある」

これはまさに、ヘマンサスが目指す未来像と重なります。

「まだ商用には遠い」現実も

ただし、多くの専門家はこうした技術に対して、「期待しすぎないこと」も求めています。なぜなら:

  • ラマン分光法の装置は高価で繊細。現場運用にはさらなるコストダウンが必要
  • AIモデルの精度はデータ量と質に依存するため、十分な臨床データが求められる
  • 「どこを見て判断しているか」が不明確なAIの判断は、医療現場では未だ懐疑的に受け止められる

また、臨床応用においては、FDA(米食品医薬品局)などの厳格な承認プロセスを経る必要があり、現在のヘマンサスがその基準を満たしているかどうかは明らかではありません。

「それでも、可能性はある」

つまり、こうした技術はまだ現実になっていないが、決して非現実ではないということです。

重要なのは、

  • 技術的なポテンシャルは確かに存在していること
  • すでに一部の大学や研究機関で成果が出始めていること
  • それでも商用・臨床段階に持っていくには、数年単位の実証と信頼構築が必要なこと

ヘマンサスのようなスタートアップがそこに挑むことは、大胆であると同時に、ある意味では正しい方向を向いているのかもしれません。

第6章:亡霊と重圧──「セラノス2.0」と呼ばれる宿命

どれだけ技術的に筋が通っていても、どれだけ戦略が丁寧でも──
ヘマンサスが避けて通れないのが、「セラノスの記憶」という影です。

ホームズの詐欺事件は、単なるビジネススキャンダルにとどまらず、科学を利用した幻想がどれほど社会に広がりうるかを突きつけた衝撃的な出来事でした。その象徴だった彼女と、家庭をともにし、いま再び似た技術と語り口でビジネスを進めるビリー・エヴァンス。人々が不安や疑念を抱くのは、ある意味で当然です。

科学か、幻想か──境界線はどこにある?

セラノスがかつて使っていたのも、「科学」という言葉でした。
血液診断技術、非侵襲的な検査、マシンラーニング──これらの単語は、まさに現代のバズワードでもあり、多くの人がわかったような気になりがちです。問題は、その裏にある技術的実体と、検証プロセスがあまりに不透明だったことです。

その点、ヘマンサスも現時点ではまだ、

  • 完成した製品を公に発表していない
  • 臨床試験のデータも未公表
  • 専門家の第三者評価も明らかになっていない

という段階にあります。つまり、技術的に「嘘」と断じられる状態ではないものの、「本当に機能するのか?」という問いには答えられていないということです。

https://twitter.com/haemanthusinc/status/1921644016904364381

科学と信頼は「積み重ね」でしか得られない

科学的信頼とは、実験の再現性、データの透明性、検証の積み重ねによって初めて得られるものです。
ラマン分光法×AIというアプローチには確かな将来性がありますが、それを商用にまで落とし込むには、技術そのものよりもむしろ、「信用を積み上げる時間」の方が重要になります。

また、セラノスが引き起こした「人命へのリスク」を忘れてはなりません。
誤診によって不必要な手術や治療を受けた人々が存在し、これは単なるビジネス上の“失敗”ではなく、医療倫理に対する深刻な背信行為でした。

同じようなビジョンを掲げる企業が再び現れたとき、社会がより厳しく目を光らせるのは当然のことです。

だからこそ、ヘマンサスが超えるべき壁は科学ではない

実際、彼らがこれから対峙しなければならない最大の壁は、技術的な難題よりも、「信頼の再構築」です。

  • セラノスの名前と強く結びついたイメージ
  • ホームズという“象徴的存在”の影
  • 投資家と医療業界が抱えるトラウマ的記憶

これらを払拭するには、何よりもまず「結果」を出すしかありません。

第7章:AIと診断医療の未来──幻想から信頼へと向かう道

セラノスの物語が象徴したのは、テクノロジーの夢が現実を追い越しすぎたときに起こる悲劇でした。
その痛みを知るからこそ、今私たちは「次こそは本物か?」という問いに、より慎重に、より厳しく向き合うようになっています。

一方で、時代は確実に変わりました。AIは進化を続け、今や医療の世界でも本物のブレークスルーを生み始めています。

かつての売り文句が、いまは実力に?

ほんの一滴の血液で病気を検出する。
そんな話は、かつては「うますぎる話」だったかもしれません。けれど、今日では実際に以下のようなプロジェクトが動いています。

  • スタンフォード大学の研究チームがAIを活用して、血液画像から白血病を正確に識別
  • ジョンズ・ホプキンス大学では、AI+血液バイオマーカーで肺がんの早期発見に成功
  • 中国の大学研究では、ラマン分光+AIによる皮膚がん診断で99%以上の正確性を実証

つまり、ホームズが夢見たビジョンそのものは、実は時代が追いつけば、十分に技術的に実現可能だったということなのです。

「誰が」ではなく、「何をどう」成し遂げるのか

ここで重要なのは、「それを誰が語っているか」ではなく、「それをどのような形で、検証とともに実現するのか」です。

ヘマンサスが使おうとしている技術には、根拠があります。
一方で、それを商品化し、現実の医療の中で安全に活用するまでには、データの透明性、臨床試験、規制当局の承認、倫理的な責任といった多くのステップがあります。
「まず作る、話すのはあと」というアプローチも、それらのステップを地道にクリアするための選択肢だとすれば、理にかなっています。

医療AIの未来と、セラノスから得た教訓

AIはすでに、病理診断、画像解析、治療提案、創薬支援などの分野で成果を挙げています。
とくに、検出精度の向上と早期発見においては、人間の能力を凌駕し始めており、将来的には医師の補助ではなく、共同判断のパートナーとして定着する可能性もあります。

しかし、その未来を築くためには、セラノスのような事例が繰り返されてはなりません。

  • 「見せかけの科学」ではなく、再現性ある研究と結果
  • セレブリティや肩書ではなく、第三者の厳密な検証
  • ストーリーの魅力よりも、データと患者の安全

ヘマンサスがこれらを理解し、真摯に取り組み続けるならば、
たとえ出発点に疑いの目が向けられていたとしても、やがて科学がその信頼を取り戻すことができるかもしれません。

エリザベス・ホームズのその後

ホームズは現在、テキサス州の連邦刑務所に収監されており、残る刑期は7年。最後の控訴も棄却され、もう彼女がセラノスの続きを直接語ることはできません。

けれど、彼女が蒔いた種は、ある意味でまだ終わってはいないのです。
それが希望の種になるか、再びの幻になるかは、今この瞬間も、私たちの社会と科学に問われ続けています。

終わりに:信頼を取り戻すのは、技術ではなく、姿勢である

ヘマンサスが目指す未来は、今度こそ現実に届くのか?
それを決めるのは、新しい発明やマーケティングの派手さではありません。
「何を語るか」より、「どう進めるか」。
それこそが、かつて失われた信頼を取り戻す唯一の方法なのです。

そしてその先に、もう一度──
“テクノロジーが人の命を救う”という本当の意味での革新が待っているのかもしれません。

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この記事を書いた人

株式会社シュタインズ

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