【行動ファイナンス初心者講座】第9回：コミットメントで投資を制する

今回は、自分の将来の行動に制約をかける「コミットメント」の概念を解説します。特に、投資初心者が感情に左右されずに冷静な判断を保つために、この考え方をどのように活用できるのかを見ていきましょう！

コミットメントとは？

「コミットメント」とは、一般的には「関与」や「公約」を意味しますが、心理学や行動ファイナンスでは「自分の将来の行動に制約をかけること」を指します。

自然に任せると失敗しやすい

多くの人は目標を立てても、途中で挫折したり、予定を先延ばしにしてしまいがちです。これを防ぐために、自分でルールを作り、行動に制約をかけるのが「コミットメント」の目的です。

ギリシャ神話に学ぶコミットメントの重要性

コミットメントの例としてよく挙げられるのが、ギリシャ神話の英雄オデュッセウスです。
彼は、美しい歌声で船員を誘惑し破滅に導く怪物・セイレーンに遭遇する際、船のマストに自分を縛り付けるよう命じました。この行動によって、誘惑に屈せず無事に航海を続けられたのです。

投資に直接関係はありませんが、この話は「自分の弱点を認識し、誘惑に屈しない仕組みを作ること」の重要性を示しています。これは投資の世界でも同じです。

日常生活でのコミットメントの例

コミットメントは投資以外でも活用できます。たとえば、

これらは、自分を律するためのコミットメントデバイス（仕組み）と言えます。

投資におけるコミットメント：投資方針書と自動化

投資の世界で特に有効なコミットメントの仕組みとして、「投資方針書」と「自動化」が挙げられます。

1. 投資方針書

投資方針書とは、投資の目的や目標、資産配分、銘柄選択、リバランスの方法などを文書化したものです。これを使うことで、感情的な判断を防ぎ、計画に基づいた行動が可能になります。

具体例：

市場が急落した場合、多くの人はパニックになり、損失を避けるために株を「投げ売り」してしまいます。しかし、投資方針書に「資産配分が基準から10％以上乖離するまでは売却しない」と書かれていれば、それに従って冷静に対応できます。

2. 自動化

自動化とは、投資のプロセスを機械的に行う仕組みです。たとえば、積立投資では「毎月一定額を決まった商品に投資する」というルールを事前に決め、実行を自動化します。

自動化のメリット

• 毎回の購入判断に迷わず済む。
• 感情的な判断を排除できる。

確定拠出年金（DC）では、投資信託の積立が自動的に行われます。これは、労力を減らしつつ、資産形成を計画的に進める良い例です。

バイアス排除を狙う商品：ドルコスト平均法とターゲットデートファンド

ドルコスト平均法

ドルコスト平均法は「同じ金額を定期的に投資する」方法で、相場が下がった時に多くの口数を購入できる仕組みです。この手法は感情を排除し、自然に市場の波に乗る助けとなります。

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ターゲットデートファンド

ターゲットデートファンドは、目標となる年（例えば退職年）に合わせて、リスク資産の割合を自動的に調整する投資信託です。これにより、投資家がバイアスの影響を受けず、長期的な資産運用を続けやすくなります。

まとめ：コミットメントで感情を制御し、投資を成功させる

人間は感情に左右されやすく、冷静な判断を保つのは簡単ではありません。しかし、「コミットメント」の仕組みを活用することで、計画通りの投資を続けることができます。

コミットメントを活用するポイント

1. 投資方針書を作成する
   投資の目標やルールを明確にし、感情に流されずに行動できる基準を作りましょう。
2. 自動化を活用する
   積立投資やターゲットデートファンドなど、自動化された仕組みを取り入れることで迷いを減らします。
3. 感情の影響を理解する
   感情的な判断ミスを防ぐために、自分の行動にどのようなバイアスがかかりやすいかを把握しましょう。

投資は長期的な視野を持ち、冷静に続けることが成功への鍵です。