なぜ株式市場は存在するのか?投機は悪なのか?

株式市場はなぜ存在するのでしょうか?

この質問に答えられる人は少ないのではないでしょうか。

その理由は意外に難しく、株式市場に関わる多くの人々でも明確に説明できる人は少ないかもしれません。私たちにとって身近な存在であるがゆえに、その理由を深く考えることが少ないのです。実際、株式市場の存在理由には歴史的な背景や様々な理論があり、一つの正解があるわけではありません。

株式市場の存在理由の一つは、企業が資金を調達するための手段として機能することです。企業は成長するために資金が必要ですが、銀行からの借り入れだけでは不十分な場合があります。そこで、企業は株式を発行し、市場で売却することで資金を集めます。投資家は株式を購入することで、企業に資金を提供し、その成長を期待して投資します。

また、株式市場は投資家にとって資産運用の場でもあります。投資家は企業の成長に伴って株価が上昇することを期待し、株式を購入します。株価が上昇すれば、投資家はその差益を得ることができます。このように、株式市場は企業と投資家の双方に利益をもたらす仕組みとなっています。

そこで今回は、なぜ株式市場が存在するのかについて、投資初心者の方にわかりやすいように説明していきます!

目次

株式の売買と市場の流動性

株式市場が毎日売買できる必要があるのは、市場の流動性を確保するためです。流動性が高い市場では、投資家はいつでも株式を売買することができ、迅速に資金を動かすことができます。これにより、市場の安定性が保たれ、投資家の信頼を得ることができます。

短期の投機家が市場に存在することも重要です。投機家は頻繁に売買を行うことで、市場の取引量を増やし、流動性を高めています。これにより、投資家は必要なときに迅速に売買を行うことができ、市場の効率性が向上します。投機家の存在が、市場の健全な機能を支えているのです。

高度な役割分担で他の生物を凌駕した人類

人類は太古の昔から、高度な役割分担によって他の生物を凌駕してきました。

例えば、動物を捕まえるのが得意な人はそれに専念し、魚を捕るのが得意な人はその役割に集中しました。こうした専門性の分化により、人々は自身の得意分野に専念し、物々交換を通じて他の必要な物資を手に入れました。このような役割分担により、個々の能力を最大限に活かし、共同体全体の効率と生産性を高めてきたのです。

物々交換の利点と欠点

物々交換は、人々が自身の専門性に集中し、その成果を共有する手段として非常に有効でした。しかし、物々交換にはいくつかの欠点があります。

例えば、海が荒れて魚が取れない日が続くと、魚を捕ることに専念している人は交換に差し出すものがなくなってしまいます。そうなると、魚と交換に肉をもらうことができず、食糧不足に陥ることになります。逆に、海が静かになった後に大量の魚を捕っても、すでに肉を提供した人に正確に返すことが難しくなります。

時間を超えた交換の難しさ

このような時間を超えた交換を成功させるためには、両者が以前の交換量を正確に覚えておく必要があります。また、双方がその約束を確実に守ることも求められます。しかし、これを実現することは非常に困難です。時間が経つにつれて記憶が曖昧になったり、一方が約束を守らない可能性も出てくるためです。

カネが仲介することで時間を越えた価値の交換が可能になる

物々交換には限界があり、特に時間を超えた交換が難しい問題がありました。この問題を解決するために、人類は”カネ”というツールを導入しました。カネは、貸し借りを記録し、将来的な交換を約束するものとして機能します。

例えば、海が荒れて魚が取れないとき、イノシシを捕るのが得意な人が肉を提供し、魚を取るのが得意な人はカネを渡します。このカネは将来の交換を保証するものです。逆に、山火事でイノシシが捕れなくなったときには、魚を取るのが得意な人がカネを返し、魚を提供します。これにより、互いに困ったときに助け合うことが可能となります。

市場の役割と進化

カネを用いてモノやサービスを交換する場所が”市場”です。市場は、古代から存在しており、人類が役割分担を行い、カネを使うようになったと同時に自然に形成されました。市場は、社会の基本的な経済活動の場であり、形態は変わってもその本質は変わっていません。

古代アテネのアゴラから現代のオンラインショッピングまで、様々な形態を取る市場は、人々が効率的に資源を配分し、経済活動を行うための場として機能しています。市場は、単に物の交換を行うだけでなく、経済全体の調整機能を果たしています。

カネの信頼性と価値

カネは、それ自体に価値がなくても機能します。重要なのは、カネが貸し借りの証として信頼されていることです。社会全体がカネを信頼し、その価値を認めることで、カネは効果的に機能します。つまり、カネがあれば借りを返してもらえるという信頼があれば、それだけでカネは価値を持ちます。

カネが仲介することで価値創造が実現する

魚を取るのが得意な人でも、それに必要な道具であるモリを作るのが得意とは限りません。逆に、魚を取るのは苦手だけれどモリを作るのが得意な人もいるでしょう。ここで問題となるのは、モリを作れないけれど魚を取りたい人がどうやってモリを手に入れるかです。もしカネもモリも魚も持っていないとしたらどうするのでしょうか?

カネを使った取引の仕組み

しばらく使わないカネを持っている人がいるとします。

その人は魚を取るのが得意な人にカネを渡します。魚を取るのが得意な人は、そのカネを使ってモリを作るのが得意な人からモリを購入します。モリを使って魚を取り、その魚を売ってカネを得ます。そして、その得たカネを最初にカネを渡してくれた人に返します。ただし、単にカネを返すだけでなく、分け前を加えて返すのです。

融資と投資の違い

この分け前の量を、魚がどれくらい取れるかに関わらずあらかじめ決めておけば”融資”です。魚を売って得たカネの一部を返してもらうと決めれば”投資”になります。市場と同様に、投資という概念も古くから存在していたと考えるべきでしょう。

金融業の役割:すぐにお金が必要な人としばらく使わない人を結ぶ

現代において、しばらく使わないカネを持っている人と、カネを必要としている人、例えば起業家を結びつけるのが金融業者の役割です。

しばらく使わないカネを持っている人は投資家と呼ばれ、カネを使って道具を手に入れ、事業を展開する人は起業家と呼ばれます。金融業者はこの両者を引き合わせ、手数料を得ることで成り立っています。

投資家と起業家の関係

投資家は自分のカネを有効に使いたいと考えています。一方、起業家はカネがあれば道具を手に入れ、皆の役に立つ事業を展開できます。金融業者は、投資家のカネを起業家に提供することで、起業家が事業を成功させ、最終的に投資家に利益を還元する仕組みを作り出します。これにより、投資家も起業家も利益を得ることができるのです。

金融の歴史と役割

金融業者は古代から存在しており、時間を越えた役割分担を円滑にするために不可欠な存在でした。彼らは、しばらく使わないカネを持つ人々と、カネを必要とする人々を結びつけることで、経済活動を活性化させました。金融業者の存在により、資金の流れがスムーズになり、経済全体の発展が促進されました。

新しい事業を始めるための投資の重要性

現代のビジネス環境において、新しい企業を立ち上げ、新しい事業を始めるには、まず初期の出費が必要です。道具や設備、人材など、事業を成功させるために必要なリソースを揃えるにはお金がかかります。

しかし、利益を得るのはその後です。このような時間的なギャップを埋める役割を果たすのが投資家です。

融資と投資の違い

投資と融資にはそれぞれ長所と短所があります。

融資の場合、分け前(利息)をあらかじめ決めるため、返済計画が明確であり、適正な分け前を設定しやすいという利点があります。しかし、事業が予想通りにいかず、初期投資を回収できなかった場合でも、融資の利息は固定されているため、大きな見返りは期待できません。これは、不確実な事業に対する融資が割に合わない理由です。

一方、投資はその逆です。不確実な事業であっても、事業が成功し大きな利益を上げた場合には、それに応じて大きな分け前を得ることができます。確実性の高い事業であれば、分け前があらかじめ決められる融資の方が投資家と企業の双方にとって納得しやすいでしょう。

株式会社と投資の仕組み

この投資活動を円滑に進めるために生まれたのが株式会社の仕組みです。株式会社は、企業が投資家から事業資金を受け取った証として株式を発行します。企業が事業活動を通じて利益を得た場合、その利益の一部を配当として投資家に還元します。株式は、投資家にとって事業資金を提供した代わりに未来の利益の一部を受け取る権利を示すものです。

株式が存在することで、投資家は企業の事業が不確実であっても、大きな利益が期待できる場合には投資を行う動機付けとなります。これにより、リスクの高い革新的な事業にも資金を集めることが可能となり、イノベーションが促進されます。

金融業者の役割

この投資家と企業の仲介を担っているのが証券会社などの金融業者です。金融業者は、投資家が適切な投資先を見つけ、企業が必要な資金を調達できるよう支援する重要な役割を果たしています。金融業者の存在により、資金の流れがスムーズになり、新しい事業の立ち上げが円滑に進むのです。

投資の終了と転売の重要性

新品の株式を販売する市場を一次市場と呼びます。

しかし、投資家は永久に投資を続けるわけではありません。投資家の事情により、企業が存在し続ける限り投資を続けられるかどうかはわからないのです。むしろ、現代の企業は永遠に事業を営むことを前提としている場合が多く、実際に百年以上続いている企業も少なくありません。

投資の終了と株式の転売

株式は、事業資金を提供した証であり、利益の分け前を受け取る権利を示すものでした。投資家が投資を終了する際には、この証と権利を他の投資家に売ることができます。つまり、新品の株式ではなく中古の株式を買う人がいれば、途中で投資をやめることが可能です。

二次市場の役割

株式の中古市場、すなわち二次市場は、投資をやめたい投資家と、投資を始めたい投資家が集まる場所が取引所です。

取引所において、売り手と買い手が同時に現れれば取引が成立しますが、現実には時間差があります。投資をやめたい投資家が取引所に来た翌日に、投資を始めたい投資家が現れることもあります。

投機家の重要性

このような時間差を埋める役割を果たすのが投機家です。投機家は、投資家とは異なり、企業の事業には興味がありません。彼らは株式の価格変動のみに関心があり、安く買って高く売ることで利益を得ようとします。投機家がいることで、売り手と買い手のタイミングがずれていても取引が成立しやすくなり、市場の流動性が高まります。

流動性の意義

流動性とは、株式の売買が容易であることを指します。

投機家による流動性の供給があることで、投資家は投資を始めたりやめたりするのが容易になります。もし二次市場に流動性がなければ、投資家は一次市場での投資を躊躇してしまいます。一次市場で投資した株式が二次市場で容易に売却できるからこそ、投資資金の回収が容易となり、不確実性の高い事業にも投資できるのです。

投機の社会的役割とその重要性

「投機は社会の役に立たない」「投機はただのギャンブルだ」という批判を耳にすることがあります。さらに、「高頻度取引(HFT)は悪だ」とまで言う人もいます。

しかし、ここまで読んでくださった皆様なら、これらの批判が見当違いであることをご理解いただけるでしょう。投機はひとつの職業として確立しており、社会において重要な役割を果たしています。

古本屋の例

投機の役割を理解するために、古本屋を例に考えてみましょう。

Aさんは本屋で本を100円で購入し、読み終わった後、古本屋に90円で売ります。Bさんはこの本を95円で購入し、再び古本屋に90円で売ります。このように、古本屋が存在することで、本は円滑に回し読みされ、AさんもBさんも安心して本を購入することができます。

古本屋の存在意義

古本屋がない場合、BさんやCさんがその本を読みたいと思っても、適切な相手を見つけるのは困難です。

Aさんは本を売ることが難しくなるため、新品の本を購入するのを躊躇するかもしれません。その結果、新品の本が売れなくなる可能性があります。古本屋が存在することで、本の流動性が確保され、円滑な取引が可能となるのです。

古本屋と投機家の比較

AさんやBさんは、本を読むために本を購入する。これを株式市場に置き換えると、彼らは企業の事業を見て投資を行う投資家に相当します。

一方、古本屋は本を読むためではなく、売買のために本を取り扱います。これは投機家の振る舞いと同様です。古本屋は本の流動性を提供し、本を読んでいるわけではありませんが、その存在によって本の流通が円滑に行われます。

投機家の社会的役割

古本屋が「社会の役に立たない」とか「ただのギャンブルだ」と批判されることはありません。

古本屋が職業として認められるなら、投機家も職業として当然認められるべきです。投機家が存在することで、株式市場の流動性が確保され、投資家が安心して株式を売買できる環境が整います。これにより、市場全体の健全性が保たれ、経済活動が円滑に進むのです。

株式市場がイノベーションを後押しする仕組み

新しい事業を始めるには、先にお金が必要です。その事業が成功して利益を生むのは後になります。この時間差をスムーズに埋めるために、株式を使った投資が行われます。

例えば、Aさんが100円を出資して企業が生まれました。しかし、Aさんが投資家でいられる期間は限られているため、彼は株式をBさんに200円で売りました。後にこの株式が取引所で取引されるようになると、Bさんは300円で株式を売ることができました。

投資家のリレーと投機家の役割

取引所では、企業の事業内容には興味がなく、価格の変動だけに注目して取引を繰り返す投機家が存在します。

この投機家のおかげで、Cさん、Dさん、Eさんといった投資家がスムーズに交代できます。企業が続く期間は投資家の投資期間よりもずっと長いため、この投資家のリレーが重要です。

リレーがスムーズに行われないと、各投資家はバトンタッチができるかどうか心配になり、投資を躊躇してしまいます。結果として、Aさんが初めの投資をしなければ、この企業は生まれなかったでしょう。

株式市場の存在意義

株式市場は、この投資家のリレーを可能にし、不確実性の高い事業にも投資を促進します。

これにより、イノベーションが生まれるのです。よくある誤解として、「上場株式を購入して、しばらくして売却しても、企業に1円も払っていないから企業にとって意味がない」というものがあります。

しかし、Cさん、Dさん、Eさんは初めに投資をしたAさんの役割を引き継ぎ、順に投資家を交代しています。企業は新たに株式を発行し、それを投資家に売却することで新たな資金を得ることもできます。この資金の支払いはAさんが初めに行った出資と同じ役割を果たします。

株式市場の歴史と未来

株式市場が存在する目的は、時間を越えた役割分担をスムーズに行うことです。株式市場は、このような役割を持つ者たちの創意工夫によって、古代から少しずつ構築されてきました。McMillan*4が述べたように、株式市場は他の市場と同様に完璧ではありませんし、完璧になることもないでしょう。しかし、より良い株式市場を目指して仕組みは修正され続けます。

まとめ なぜ株式市場は存在するのか?投機は悪なのか?

株式市場は、人類の経済活動において重要な役割を果たしています。それは、投資家のリレーを可能にし、不確実性の高い事業にも資金を提供することでイノベーションを促進することです。株式市場が存在することで、時間を越えた役割分担がスムーズに行われ、人類の進化を後押ししています。市場の仕組みはこれからも改善され続け、より良い経済活動を支える基盤となるでしょう。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

シェアして知識を定着させよう!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

株式会社シュタインズ

目次